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愛と悲しみのカルーラ  作者: ねこまんまときみどりのことり


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43/44

演劇の評価

R7、9/12 誤字報告ありがとうございます。

大変助かりました(*^^*)

 華の趣味から開始した『昼ドラを舞台で見たい計画』は、彼女達の予想に反して大ヒットした。


 普通の演劇はちょっと高尚な感じで、人生を考えさせられる深さがあるも、かずさの方はそのまんま昼ドラであるからだ。


 お気楽な感じが評判を呼び、普通の演劇とは別枠の客層が入場することになった。

 まったく毛色が違うので、既存の演劇の営業妨害にもならないようだ。



 1日3回の講演で、月火・水木・土日の講演だ。

 10時から11時は、第1話。

 14時から15時は、第2話。

 18時から19時は、第3話だ。


 2日ずつ講演し、次の回は4、5、6話と続いていき、金曜日は休日である。

 見逃しが少ないように考えられた設定日だ。

 料金は10回見て1000円(銅貨1枚)で、初回にスタンプを帳を貰って使うことになる。



 何より安価で、公演時間も別れている為、仕事帰りに見ていく人もいて、どの時間もだいたい満遍なく集客(10時の時間が一番少ない)があった。


 満席ではなく、4~6割が埋まる丁度良さ。

 席も選べる自由さと、魔石による空調も利いている。



 そして題名は『争いの向こう側~悲しき運命』にした。


 初日の舞台後の挨拶には、帝国劇場のベテラン演技指導員のマジマもいたことで、彼の応援の為に有名な俳優達が来ており、サプライズの盛り上がりも見せていた。




◇◇◇

 舞台稽古時。


 戦闘シーンを演じる為に、例の筋肉5人衆の肉体改造も行われ、何故か魔獣狩りにも連れて行かれるハプニングも。

 5人の特徴は、女嫌い、僕っ子、腹黒、医者の筋肉息子、マイペースだ。


「な、なんで僕ら、ダンジョンに来てるんですか? 演劇でもハードル高いのに!」


「魔獣に咬まれて、血が出てます。もう嫌だ、僕帰る~」


「こんなの労働契約書違反でしょ? 訴えますよ!」


「この動き、筋肉に良い。動きにスピードが加わりそうだ」


「もう臭いし辛いし、酷い場所だし。何で狩りなんですか?」



 ここに連れ出したのは、本来の仕事が冒険者のミランダ、ガッドレー、アパッチだ。

 思いの他、主役のマフィアのドンの息子を演じる若者達が煩くて閉口していたが、先に口を開いたのはミランダだった。


 まだまだ美しい60代の美魔女(40代前後にしか見えない)は、カウボーイしか使わないような長めの鞭で、ホコリを撒き散らしながらそれを振るった。

「バシーン!!!!!」


「ずいぶん元気があるじゃないか? これなら扱きがいがあるわ。そもそもここにいるのは、あんた達の戦闘シーンが、棒立ちで使えないからだよ。

 命がけのシーンで、あんな間抜けじゃ困るんだよ。

 こっちはリンダ夫人に、無様をさらせないんだからね! バシーン!!!!!」



 強烈な美しさと重厚な口調には、決死して逆らうことは許されない迫力がある。

「あんた達は継母に毒を飲まされたり、蹴られたこともないんだろ。

 なら経験から、防御方法を思い出すこともできないし、驚異に向かった経験もないはずだ。


 だからわざわざ、恐怖の経験と体の動きを覚えさせる為に、冒険者の狩り場にいるんだよ。言っとくけど、身に付くまで帰らないからね。

 今日は夜営だよ。返事は!!!」


 

「「「「「はい」」」」」

「声が小さい。バチーンッ」


「「「「「はい!!!!!」」」」」

「よし! じゃあ、並べ。私語した奴は、ぶん殴るから真剣にな!」


「「「「「はい!!!!!」」」」」


「まったく、冒険者のライセンスがないと入れないんだから、感謝してよね」と、ブツブツ言っているミランダと、苦笑いのアパッチと、楽しげなガッドレー。


 これで強面ガッドレーに恫喝されれば(仕方なく)納得もできるが、優雅な貴婦人の細身のミランダに圧をかけられると、困惑が先に走る。

 けれど内容が圧倒的に物騒。平民はともかく、貴族家だってそんなに酷い話を聞かないのだから。



(((((こ、怖い、何毒殺って? 家庭内暴力ってこと? 昔の貴族って、こんななの? それにベテラン冒険者って言ってたけど、何で演劇に出てんの?)))))


 そんな心の声は、恐怖で口に出せなかった。

 ガッドレーやアパッチの出る幕は勿論なく、若者達に剣を持たせて小型の魔獣をやっつけさせたり、うろうろしてるやつが熊ぐらいの大きな魔獣にエンカウントし、あわやのところでミランダの鞭が飛んだり、走ったり、泣いたり、腰が抜けたりバタバタだった。



 それを見たミランダは、「まあ、このくらいで良いかしら? 真剣にやってるし」と、夜営はせずにテレポートの道具で王都に戻ることにした。


「「「「「た、助かった。死ぬかと思ったぁ」」」」」と、5人は生還を抱き合って喜んだ。



 そんな彼らだったが、平民の医者の息子であるビネガーズだけは、冒険者に興味を持っていた。


「命のやり取りは、とても尊い。そして生きている実感が湧く気がする」等などと。



 ダンジョンに行く前は足をひっぱりまくりで、マジーに灰皿を投げられていた5人。


「お前らそんな態度で、舞台に上がるんじゃねえぇぇ!」


「なんでここまで? そこまで要求するんなら、素人の意味ないじゃん」や「もう辞めーます」とか、さんざん文句を言っていたのだが…………。


 ダンジョン後の5人の演技は臨場感があり、マジーにも褒められたほどだった。


「「「「「今まで、迷惑かけてすみませんでした!!!!!」」」」」と全員で頭を下げて、謝罪もした彼ら。

 その態度に、面白くない思いをした者達も許しを与えた。


 その後もダンジョンを思い出し、鬼気迫る演技をする彼らに引きずられ、全体の真剣度が上昇。

 マジーの罵声も飛ぶことで、他の者達も台詞暗記はほぼ完璧に近くなり、さくさくとリハーサルは進んでいった。




◇◇◇

 そして初日の10時公演には、有名俳優、ドンマイン家族に加え、お忍びでリンダ夫人の姿もあった。


 特にアクションシーンのマフィアの息子の戦闘シーンが素晴らしく、父子対決は固唾を飲んだ。

 また脇を固める役者も違和感がなく、見る者を引き込んでいく。


 観客は1話から3話までを、一気に見る熱心さで、会場を出なければ無効とならないこともあり、会場内のポップコーンやジュースで凌いで、夕方までいる猛者も見られた。


 その日だけでファンが付き、口コミで評判も上がっていき、演じる者達の満足感にも繋がっていったのだ。


 全員が素人集団な為、幕が上がる前は緊張していたが、演じることで役に没入し、体が動いていたようだ。


 有名役者達は「とても初めての演技じゃない。素晴らしい」と絶賛していた。粗削りなのがまた初々しくて良いとも。


 将来的に、帝国劇場へスカウトされる者も出ることになるのだ。


 話し合いの結果、ダンジョンでの訓練のことはみんなには内緒にした。

 ちょっとやり過ぎたと、あの3人も思ったからだ。

 あの場で逃げ回っていたことや、泣いていたことを秘密にすることを条件に、若者5人も口をつぐんでいくことに。


 そもそも冒険者登録をせずに連れていってるので、普通に違法だ。魔道具での行き来で、足が着かないは幸いだった。




◇◇◇

 かずさは華から依頼され、初舞台後にグッズの作製に勤しみ爆売れした。

 以外だったのは、若者よりもベテラン役者に人気が集まったことである。


 特にミランダ、ガッドレー、アパッチの3人の気合いがすごいと評判で、即売れだった。


 肖像権はない時代だが、こんなに儲かると思ってなかったかずさと華は、1つ売れるにあたり1%の還元分を本人に渡した。


 それはかなり喜ばれることになり、あの3人は「冒険者装備(鞭)を新しくするわ」とか、「旨いもの食うぜ」とか「趣味の釣竿代に」などと、喜んでいたそうだ。



 その後調子に乗った華は、マフィアのドンの息子役の5人にテーマソングを歌わせ、『パーミテーション(意味は順列)』と名付けた。

 魔石を使った録音機能付きの魔道具に、歌を吹き込んで売ると、それもスマッシュヒットだった。


「まあ。新しいものは珍しいから、今だけよね」と、華が言ったブームは長く続くことになる。歌う人が代わりながら。


 それが周囲も真似しアイドル達が生まれることで、ドンマイン一家も熱狂した推しができるのも、もうすぐ。


「パーミテーション(順列)、やってみて良かったね」と母子は微笑み合い、特に特許らしいものも取らないことで、爆発的に流行っていくのだった。



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