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愛と悲しみのカルーラ  作者: ねこまんまときみどりのことり


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3/44

カルーラの祖父、ヴォクシアの父(転生前)のこと

1/31 23時 誤字報告ありがとうございました。

大変助かります(*^^*)

 カルーラの父ヴォクシア(転生前)は、代々家庭用品の販売を行う商人だった。


 ある日、ヴォクシアの祖父が道に迷い困っていたドワーフを案内して、友情が芽生えたことがあったらしい。


 この国の人間は他種族に偏見があり、冷たかった。


 人間至上主義の年寄りと、それに育てられた子もまた傲慢だった。

 ドワーフは腕を見込まれ依頼された、王宮で使用する大包丁を納品に来ただけなのに、辿り着けず途方にくれていた。

 目の前に城は見えても、その道に出られないのだ。


 勿論人間に尋ねるも、背丈の低いドワーフを奇異の目で見て離れていく。

 彼は憤りと共に悲しみで、酷く辛くなったそうだ。

 王国の王宮調理長にに乞われ、丹誠込めて作った包丁を届けに来たのに、この扱いはないだろうと。


 ドワーフの包丁は、どんな物でも切れる名品。

 王宮からの依頼は特注サイズで、1年余りの錬成を得た物。

 材料・労力共に破格なので、必ず届ける為に持参したらしいが、この国のドワーフへの扱いがこれ程とは思わなかったらしい。


「こんなことなら、依頼を断れば良かった」

 


 そこで祖父の登場だった。

 人の良い祖父は、依頼された物を可能な限り自力で求めて旅をする商人だ。

 他国にいろんな種族がいることを知っており、各々の文化を認めている賢人だったから、見返りなど求めず援助をしただけだった。



 けれどドワーフは、心から祖父に感謝した。

 打算のない祖父の気持ちがありがたく、少しでも礼を尽くしたいと思ったドワーフは、自作の鍋や包丁などを祖父に売ってもらうことを提案した。 


 祖父は喜んでその提案を受けた。

 それはドワーフの手腕を知っていたからである。

 1つ持てば、一生使い続けられる逸品だったから。


 売るとなればドワーフの益になるように、王宮でも御用達と銘を打って必死に売った。 

 付加価値でなるべく高値で売り、利益をドワーフに届ける。

 売値を伝え、適正な手数料を取る祖父。

 それでも十分に利益が出ていたので、疚しいところはない取引なのだが。 


 ドワーフからすると、思う以上の高値を提供して貰ったらしい。 


 元々物作りは上手いが、口下手なドワーフは、いつも騙されたり値切られて損をしていた。

 なので、喜びもひとしおだった。


 王宮へ自ら包丁を持参したのも、届けてくれる業者が悪徳な者か正しい者かの判断が出来ず、疑心暗鬼でやむを得なかったらしい。

 およそ1年を費やした大作だ。

 それなくば、今後の生活も儘ならなくなるのだから。

 


 信用を得た祖父は、他のドワーフとも商売を始め良い商品を売ることが出来た。

 信用重視の、独占販売みたいなものである。


 ドワーフに目をつけた、他商人には品物を卸さなかった所を見れば信用度が分かるだろう。 

 元々ドワーフは、他種族、特に人間をあまり信用していなかった。

 王宮に届けた包丁も、ドワーフの国に珍しい調味料を買い出しに来た若き日の料理長(以前はただの料理人だった)と知り合いだったから受けた仕事なのだ。

 珍しく酒を酌み交わし、気が合ったらしい。


 それでも祖父は人が良いので、それほど大きくは儲からない(ドワーフのおかげで、小金持ち程度にはなった)。

 いろんな物を探しに旅に出ることも、楽しくて苦ではなかった祖父。

 ヴォクシアに店を任せれば、祖母と共に行商と行って旅に出る。


 そこで祖父が仕入れた珍しい物を父が売るから、何だかいろいろな物が並ぶ店になっていた。 

 正直商売、薄利多売(勿論ドワーフ商品は高く利益も出たが、手作りなので数は少ない)。 


 いろんな人を助け、助けられ成り立っていた商売。

 そして知らずと、老舗と呼ばれるようになった。

 ヴォクシアも、生活できれば幸せな性格だったようで、家族も共にのほほんと暮らしていた。


 それがだ。

 何とはなしの怪我の心配から生じた、カルーラの治癒の光。

 そして偶然の連鎖で隠居夫人を助けて聖女と呼ばれ、それを見た伯爵令息サムに婚約を結ばされた。


 のほほん一家に訪れた、最大のストレスだった。



 映画を見た後に読んだ、元ネタである小説の『愛と悲しみのカルーラ』は、

 平民上がりの聖女になったカルーラが、伯爵令息サムとの愛を貫く為に、サムの母や恋敵侯爵令嬢アクアリーネからの障害を乗り越えて、真実の愛に辿り着く物語だ。 


 カルーラの両親は、事故に巻き込まる罠に嵌まり大怪我、弟は友人のはずの男爵令嬢に強姦容疑で訴えられ捕らえられる悲惨さだ(どちらも侯爵令嬢がらみ)。


 カルーラに至っては誹謗中傷、特に淫乱と嘘の噂を流され、暴力暴言、暗殺未遂やら強姦未遂やらてんこ盛りである。 

 聖女の力で自分を治癒できなければ、5回は軽く死んでる酷さ。

 聖女の力があるから酷くされたのかと疑うくらいだ。 

  死んだら何も始まらないしね。


 そして物語ではカルーラとサムは相思相愛だが、かずさに残るカルーラの記憶を辿れば、サムの一方通行愛のように思えるのだ。 


 普通に考えて、伯爵令息に言われれば平民が断れないよね。

 そして呑気なカルーラが、胃の痛くなる貴族を選ぶかなぁと疑問。 

 家族大好きカルーラなら、途中で伯爵に土下座してでも婚約解消を願いそうだ。

 だって、婚約が理由の理不尽でしょ? 

 サムもカルーラが大事なら、何故放置するの? 

 意味が分からん、本当に。


 暖炉の一酸化炭素中傷も、うっかりなんだか暗殺なんだかハッキリしないしね。


 そして可能性として、カルーラ一家が現代の二宮一家に転生している可能性。

 あれからいろいろ考えると、何らかの力で入れ替わった気もする。

 

 だって高速道路の事故も、誰かが怪我をした記憶もないし、死んだような記憶もないからだ。

 これはお互いに、元に戻れる可能性あるよ。


 既にカルーラの婚約解消もできたし、小説や映画とも状況は違ってきた。


 本当に、もしかしてなんだけど…………。



 あの映画や小説の『愛と悲しみのカルーラ』は、こっちで暮らしていた人が地球に飛ばされて、事実を元にちょっと脚色して書いた、ノンフィクションなんじゃないの? かと。


 じゃないと、本気でこの世界が怖くなりそうだし。




 取りあえず彼ら生存を信じて、この世界を少し楽しもうかな?


 でもカルーラ一家は、いきなり未来に飛ばされたみたいで大変かもね。

 それでも、呑気な楽天家らしいし、何とか頑張って欲しいわ。

 


 理不尽に死ぬのなんて、お互いに嫌だものね。



◇◇◇

 そしてかずさ達は、母手作りのこの世界初のカレーを食べる。


「「「「いただきまーす♪」」」」

「うーん…………」

「これは…………」

「なんだか…………」


「……ごめん、まずいよね。まあまあ、チャレンジ、チャレンジよ。 

 次回の作品に期待してよね」

 誤魔化し笑いのお母さん。


 どうやらカレールー派のお母さんは、1からの香辛料を使ったカレーを失敗した。

 材料も知っていて作り方も見たはずが、分量まではうろ覚えだったみたいで、辛いカレーができたようだ。


 みんな泣きそうな顔で、口を押さえる。 

 そして絶叫!


「これ罰ゲームのやつだよ。後から(辛いの)来るやつだ! 牛乳注いで」

「私も」

「お、美味しいよ。お母さん」

「じゃあ、おかわりする?」

「そ、それは…………」


 青い顔のお父さん。


「まあ、無理しないで。予防でおにぎりも作ってあるから食べて」


 皆がおにぎりを食べる中、お母さんはカレーを食べ続ける。

「まあ、私は辛いの平気だし、何が駄目なのか分析しないとね」

 そう言うお母さんに、ピコンと音が鳴る。


『おめでとうございます。毒耐性の獲得です!』

 どこからか、明るい機械声が聞こえてきた。


 そして怒るお母さん。

「キーッ! 毒って何よ! 人様のカレーに失礼よ!」

 お母さんの怒りを無視し次々とピコン、ピコンと音が聞こえて、かなりのスキルが与えられた。


『毒耐性 レベル3が獲得しました』

「何でよ、もう。どっから音がするのよ!」



 お母さん以外が肩を震わし、笑いを堪えていた。

 特にお父さんは、バレると滅茶苦茶詰られそう。


 料理が危険物か。

 ある意味暗殺者(アサシン)

 もう無理、笑っちゃいたい。


 まだお母さんの怒りは収まっておらず、私は腹筋が痛くなってきた。

 お父さんも弟も何とか堪えているみたいで、苦しげな表情だ。

 手の甲を指でチネっている弟。

 口の中から頬を噛んでる様子のお父さん。

 そして私は、出目金(金魚)のマリアが死んだ時を思い出していた。

 ちなみに15才で、大きく育った大往生だ。

 妹みたいにいつも傍にいたから、すごく悲しかったんだ。


 お母さんは怒りでこっちを見ていないから、今のところセーフ。


 今暫く、私達の我慢は続くのだった。




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