侯爵令嬢アクアリーネ・アクセランテの闇
2/5 8時 誤字報告ありがとうございました。
大変助かります(*^^*)
「お前は母親の代わりに、我が家門に富をもたらす義務がある。
聖女であるお前の母親リコッタは、お前を産んで数年後で亡くなってしまった。
リコッタの生家には、聖女を得る代わりに多額の資金援助を行ってきたが、これでは元も取れないままだ。
アクアリーネよ、お前が聖女であったならまだ利用も出来たが、ただの女には大した利用価値もない。
せいぜい今のうちに、金を齎す夫を見つけろ。
若さが衰えるほど、お前の価値は落ちるのだから」
アクアリーネの父侯爵ビルネールは、彼女の母親であるリコッタを利用できる聖女としか見ていなかった。
リコッタの治癒の能力で金儲けをしていたビルネールは、十分に利益を得ていた。
彼女の生家へ渡した金銭よりも、さらに多くの利益を。
リコッタは子爵家の両親に懇願され、女性の扱いで評判の悪いビルネールに嫁いだ。
ビルネールは結婚よりも美しい女性(貴族、平民関係なく)と、自由に付き合うことを望んでいた。
だから結婚などする気などなかったのだが、彼の両親が「このままでは庶子しか生まれないだろう」と懸念し、その嫁探しで彼女が該当したのだった。
生家の投資失敗で抱えた借金返済と引きかえに、逆らえないリコッタはビルネールの嫁になった。
その代わりとして聖女の力で得た収入を全て搾取し、仕方なく結婚することになったビルネールの遊興資金として使わせたのだ。
その後彼女はアクアリーネを産み、ビルネールは愛人の子をリコッタの生んだ子として次々と侯爵家に招き入れた。
なのでアクアリーネの下には、異母妹2人と異母弟1人がいる。アクアリーネとは違いビルネールに愛されている女性の子供達だ。
その後もリコッタは、生命力を変換する治癒の力を使い続け命を燃やしていく。
彼女の生家は酷い噂も聞いていたのに、ビルネールや侯爵夫妻を恐れ、リコッタを助けることはなかった。
そして…………。
幼い娘を懸命に育てるリコッタは、アクアリーネが8才の時に衰弱して命を落とした。
「ごめんなさいね、リーネ。
まだまだ一緒にいたかったけれど、お別れすることになってしまって。
貴女はどうか、幸せになれるように、祈って、から、ね………………」
「お母様!!! いやあぁぁぁぁ!!!!!」
侯爵家でも、蔑ろにされてきた母子。
母が去り、娘アクアリーネは1人残された。
1人で母を看取り、抱きしめながら発せられる慟哭は邸に響き渡ったが、ビルネールが訪れることはなかった。
リコッタの死後、ビルネールはアクアリーネの教育に力を注ぎ出す。
孤独なアクアリーネは、そのことで父親への愛を感じていたが、それは間違いであった。
アクアリーネの能力値を上げ、高位貴族の妻として望まれるようにする為の付加価値付けだったのだから。
そうして狙いをつけたのが、サム・ロンベサール伯爵令息だ。
アクアリーネは長女ではあるが、長男がいる為家は継げない。
正しい血筋ならば、アクアリーネ以上に相応しい者はいないのに。
アクアリーネも自分以外の弟妹が、リコッタの子でないことは知っていた。
けれど今までの生活でビルネールに文句を言えば、どんなことになるのか想像がつくくらい賢明に成長した彼女だから、余計なことを発することはない。
自らを守る為に、サムに嫁ごうと画策するのだ。
そして同時に「平民の癖に、カルーラめ!」等と不満を漏らし、母親が平民の長男を婉曲に貶める。
長男ゼスチャントは、公には侯爵家嫡男とされている。
書類上では平民ではなく、リコッタの息子なのだ。
アクアリーネもゼスチャントも、他の妹達も己の出自を知っている。
知っているから、アクアリーネの言葉が癪に触るのだ。
だからアクアリーネがサムと結ばれなかった時、どんな報復が待っているのか予想がついた。
それでも言わずにいられない。
それがアクアリーネの矜持であり、唯一の誇れるものだ。
正当なる血筋だと言うことだけが。
アクアリーネはサムの母親の機嫌を取り、自分の有能さを見せつける。
彼女の仕事を手伝ったり、贈り物をしたりと尽くす姿を見せながら。
彼女は愛など、最初から信じていない。
自分の立場を守る為に、サムを愛する振りをするのだ。
「私はサム様を愛していますわ。
私を救い出せるのは、サム様だけですもの。
立派な伯爵にして差し上げますわ(私が幸せに生きていく為に!)」
今日もロンベサール邸に通うアクアリーネは、母リコッタの願いを叶える為に幸せを目指すのだ。




