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愛と悲しみのカルーラ  作者: ねこまんまときみどりのことり


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20/44

サムの困惑

「何故だ! どうしてサフランまで、ドンマイン家の寮にいるんだ。

 おかしいだろ?」


 少し前までサフランと一緒に、カルーラ(かずさ)とレノア(水樹)の行動を嗅ぎ回っていたサム。


 共に遠巻きに観察を続け、ある意味同士のようだった妹が、いつの間にか相手の懐に入ってしまったと嘆くサム。


「何だよ、サフラン。あんなにカルーラのことを嫌っていたのに、だ、抱きつくなんて!

 …………羨ましすぎる!」


 サムは他の弟妹を差し置いて、1人だけ母親(マリン)に可愛がられてきた子供だった。

 愛を受けるのは嬉しいことだが、溺愛は彼の精神的な成長を妨げた。


「貴方は我がロンベサール伯爵家の嫡男なのだから、他人に侮られてはいけないわ。

 いつも自信を持って生きるのよ。

 伯爵家以下の家などに従う必要などないの。

 …………そのうち私が、貴方にぴったりのお嫁さんを連れて来るから、心配しないで!」


 そう言われて頷くしかないサム。

 もし逆らえば、納得するまで言いくるめられる。

 ある意味洗脳のように。


 母親(マリン)のことは好きだが、圧の強さで怖いこともある彼は、正反対の女性であるカルーラを愛した。

 その反面、彼の態度は完全なるツンデレ、いやヤンデレ状態だった。

 マリンの洗脳のせいで、素直になれないのだ。


 サムは彼女が、自分(サム)へ依存するように、周囲に彼女の味方が出来ないように蹴散らし、自分の味方の友人ばかりで固めた。

 それを見ていた母親(マリン)は、平民のカルーラが気に入らず、サムに内緒で彼女を追い詰めた。

 サムの友人にも金銭で協力を要請し、彼女の悪い(嘘の)噂を彼の耳に入れたのだ。



 そして1話目冒頭の、

「もう我慢ならん。お前との婚約は解消する!」と、

『婚約者カルーラ・ドンマインを自宅に呼びつけて婚約解消を告げた』に繋がるのである。


 (サム)はカルーラに、泣いて縋りついて否定して欲しかった。

 そして自分のことを、愛していると言ってくれるのを期待していたのだ。


 いくら他人から悪い噂を聞かされても、カルーラが浮気や妹を苛める訳がないと知っていたのに…………。

 信じていたのに、つまらない矜持のせいで傷つけてしまった。


 でも…………。


 その一言で、婚約解消するとは思わなかった。

 そして母親(マリン)が、既に新たな婚約者を見繕っているとも思っていなかったのだ。


 思えばカルーラとの婚約は、珍しく父親(シエンタ)が味方をしてくれたことで叶ったもの。

 けれど婚約解消後、父親(シエンタ)は「もう諦めろ」としか言わなかった。

 きっと今後も、その方向なのだろう。


 選りにも選って、最近はジムニーを彼女(カルーラ)に勧めているのを偶然耳にした。

 母親(マリン)は俺には執着するが、(ジムニー)には無関心なので、カルーラが頷けばすぐに婚約となるだろう。


 それだけは許せない!

 最悪でも他人ならともかく、(ジムニー)の隣で幸せに微笑む彼女(カルーラ)を見たら、きっと正気ではいられない自信がある。


 そんな思いで(ルフラン)と観察していたのに、その(ルフラン)は今、彼女の隣にいるのだ。


 もう信じられない。

 けれどそれ以上に息苦しいのが、アクセランテ侯爵令嬢のアクアリーネが、頻繁に我が家に来ることだ。


「まだ婚約はしていないけれど、アクアリーネ様は貴方(サム)と未来を誓っても良いと言われているわ。

 とっても綺麗で頭も良くて、気品も身分も最高よ。

 貴方にピッタリね。

 もう平民女など忘れて、早く婚約なさいね」


(アクアリーネ)も父も、婚約出来ることになれば嬉しいですわ。

 麗しいサム様のことは、以前からお慕いしておりましたから」


 満面の笑みで話す母親(マリン)と、はにかむアクアリーネにサムは何とか言い返す。


「婚約解消したばかりで、新たに婚約するのは外聞が悪いですよ。

 もう少し時期を整えましょう。

 アクアリーネ嬢の為にも」


 嫌なのを悟られないよう、丁重に話すサムに一応納得してくれた。


「そうね、そうしましょう。

 あの女ったら、別れた途端に金回りが良くなって注目されているから、落ち着いてからの方が好ましいわね。 

 さすがの気配りね」

「そんな風に考えてくださっているなんて……。

 嬉しいですわ♡」


「ありがとうございます、お母様。

 では俺は仕事があるので、アクアリーネ嬢も失礼しますね」

「ええ、そうね。頑張って頂戴。

 将来の後継者になるのだから」


「ええ。そのつもりです。では失礼します」

「はい。頑張ってくださいね、サム様」


 母親のことは嫌いではない。

 けれどすごく期待が重い。


 そしてどんなに微笑んでも、目が笑っていないアクアリーネを見ると、寒気がするんだ。

(もう何もかも捨てて、カルーラと逃げられたら良いのに。

 俺といた時にいつも微笑んでくれた彼女だから、よりは戻せると思うし)


「きっと彼女は俺のことを愛している。

 周囲には無理に笑顔を作りながらも、きっと胸を焦がして辛い日々を過ごしているだろう」


(直接彼女と会えれば、問題は解決する筈なのに。

 今日も思考するだけで、彼女へ会いに行けなかった。

 時間が許す限り見つめていたいのに)


 チキンハートのサムは、今日も何も出来ずに眠りに就く。

 問題を先送りにしたままで…………。




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