ジムニーの涙
2/5 8時 誤字報告をありがとうございました。
まさかこんなにとは。大変助かりました(*´∀`)
ルフランはジムニーの職場に赴く。
ジムニーからシエンタに、除籍しても良いと手紙が来たが、そんなことは勿論されていない。
名実共にルフランとジムニーは兄妹だ。
「お兄様。こんなところにいたのですね。
…………心配しましたよ」
連絡なしに訪れた妹に、ジムニーは困惑した。
「ルフラン…………。どうしたんだ、ここに来るなんて。
何かあったのか? まさか、また父上に何か言われたのか?」
離れて暮らしても、共に育った妹が気になるジムニー。
ルフランの計画が失敗して自らドンマイン家に乗り込み、ミイラ取りがミイラになった彼だが、妹のことは今でも大切に思っている。
彼は妹を伯爵家に残してきたことだけが、心残りだった。
ジムニーと顔を合わせた途端、急にホロホロと泣き出したルフラン。
「お、お兄様はもう、私が嫌いになったのね。
だから私だけ置いて行ったのでしょ?」
「違う。違うぞ、ルフラン。
確かに僕は家を出たが、それは本当にやりたいことが出来たからなんだ。
僕はもう伯爵家に行けないが、お前からならいつでも遊びに来て良いんだぞ!」
ややいつも強気の妹の涙に混乱し、わたわたするジムニーは、妹のことが大事なのだろう。
応接室にいる2人に、たまたまドラゴン姉妹の件で相談に来たかずさ(カルーラ)がお茶を出しに現れた。
コンコンッ。
「失礼します。お茶をお持ちしました。
あらっ、ジムニーさんの妹さんですか?
いらっしゃい」
ジムニーは身分を平民と偽ってレストランに潜入したので、水樹もかずさ(カルーラ)も彼を平民だと思っている。
彼の妹だから、ルフランも平民だと思われているのだ。
以前に水樹に声をかけてきたルフランだが、ジムニーの妹で本当に仕事を探していたんだと思い直した水樹は、偏見をなくしていた(面倒くさいのでなくすことにした)。
「きっと何かあれば、あいつが何とかするだろう」と、開き直ったのだ。
それに本当のレノアも、ルフランに(もジムニーにも)会ったことがないから、身元に繋がる手がかりはなかった。
「えっ、貴女はカルーラ…さん。どうして此処にいるんですか?」
「えっ! 私のこと知ってるの? 照れるなあ」
「それはそうですよ。クレヨンや絵の具を開発し、漫画やイラストを広めた第一人者ですからね」
何となく身分を隠そうとするジムニーと、今は正体を隠した方が賢明だと思い直すルフラン。
本当のカルーラも、直接サフランと顔合わせはしていないのでバレることはなかった。
(この女のせいで私がお父様に見捨てられたら、年上の成金爺に嫁がされるかもしれないのに。
何のん気に笑っているのよ。
一人だけ幸せそうな顔をして。
サムお兄様に婚約破棄された癖に…………。
何で少しもへこんでないのよ…………。
ふぇーん)
感情が高まり再び泣き出すルフランに、かずさ(カルーラ)は驚いて声をかけた。
「大丈夫? きっとお兄さんが家からここの寮に入って、寂しかったのね。
仲が良かったらそうなるわよね。
でもいつでも来れば良いのだもの。
泣くことないわ」
ハンカチをルフランに渡し、親身に声をかけるかずさ(カルーラ)に、余計に嗚咽が強くなるルフラン。
「ど、どうして、ヒック、そんなに優しいの?
わ、私、私は(貴女が嫌いなのに)…………」
「ヨシヨシ、辛かったね。泣いても良いんだよ。
これからも遊びにおいで。
それに私で良ければ、いつでも頼ってくれて良いからね」
朗らかに微笑むかずさ(カルーラ)は、咄嗟に彼女を抱きしめて「大丈夫だよ。もう寂しくないからね。お兄さんに会えて安心したね」と慰めた。
「なん、なんで、そんなこと言うの?
えぐっ、ひぐっ、うぅ、わ、私は貴女を(貶めるつもりだったのに)…………」
理由など見つけられないかずさ(カルーラ)だが、いつも見慣れた水樹のフィギュアに似ていたからだろうか?
(なんて可愛いのかしら? こんな子が現実にいるなんて、至福過ぎる~♡)
心のままに手を差し伸べたかずさ(カルーラ)の手を、ルフランは振り払うことなく受け止めた。
(なんて良い人なのかしら。サムお兄様が好きな理由が、少し分かった気がするわ)
(良かったな、ルフラン。
そうか、ずっと寂しかったんだな。
気づいてやれなくて済まなかった。
僕も忙しくてあまり構えなかったし。
侍っていた男達は、お前の心を支えられなかったようだな。
それにしてもさすが聖女のカルーラさんだ。
一瞬で妹の心を掴んだみたいだし、それに美しいな)
「カルーラお姉様と呼んで良いですか?」
「ええ、勿論よ。サフランさん」
「…………ありがとうございます。
嬉しいです。うえ~ん」
2人を見て、不覚にも涙が溢れたジムニー。
(ああ、ルフラン。これからは僕もお前を守るよ)
こうしてロンベサール伯爵家の兄妹2人が、ドンマインファミリーへ仲間入りしたのだった。




