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愛と悲しみのカルーラ  作者: ねこまんまときみどりのことり


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ルフランはの逆恨み

「どうしたことですの? 私の選りすぐりの逞しい美形5人組、Mファイブ(筋肉5人衆)が!

 なんで戻って来ないのよ!」


 パキリッとまた、扇子が彼女に折られ放り投げられた。


(ヒィ! 最高級の本朱子(サテンの上級品)なのに。勿体ない!)

 今日もまた、主の行動に悲鳴をあげている侍女とメイド達。


 怒りまくるルフランと、怯える使用人達。

 特に今回は自分から(シエンタ)に提案したので、後には退けなかった。


「このままでは、お父様の私への評価が下がってしまうわ。

 どうにかしなけえば。

 それにしたって、くぅー、ムカつく!!! 

 忌々しいドンマイン一家め!」



 ちなみに、あの5人組とは。


①アクア:侯爵家次男。

 真面目イケメンだが、幼い時からの女子の強アタックによりトラウマがある。

 そっち方面の、迫ってくる女子が苦手。


 (ルラミー)のような、自分に興味のない者に惹かれてしまいがちだ。

 丁度ルフランもそんな感じで楽だった。

 ルフランの近くにいれば、女子が来ないから行動を共にしていた。


②デュマリ:子爵家三男。

 可愛いもの大好きの流され男子。


③トゥアイス:男爵次男。

 僕口調の甘えっ子口調。

 でも本当は野心家。


④レッドラ:大商家の長男だが、平民。

 アルカイックスマイル修得済みの腹黒。


⑤ビネガーズ:医師の長男だが、平民。

 筋肉多めのやや強面で天才。



 ルフランの取り巻きでも、期待の持てる将来の有望株達。

 実際に純粋にルフランが好きではなく、打算ありきだった。

 特に平民2人は、商品を買わせる為と医学部の学費を援助して貰う為に侍っていた。

 平民嫌いの彼女だが、取り巻きなら良いらしい。


 レッドラは玉の輿狙いで、ルフラン若しくは周辺にいる子爵令嬢と知り合えれば良いかくらいのノリだった。

 アクアは女避けで、友人のデュマリはその付き合いで一緒にいた。


 たぶん他の取り巻き達も、それほど熱心な者はいないのかもしれない。

 まあ、ルフランは可愛くて裕福な伯爵令嬢だ。

 ただあの性格と一生付き合えるかは、正直考えるところだろう。


 と、言うことで。

 Mファイブは、華の元へ。

 ドンマイン家は平民であるも、商売は順調で侯爵家の隠居(前侯爵)夫人リンダの後ろ盾もある。

 おまけにかずさ(カルーラ)は聖女だ。


 イケメン達にも、打算がままあったのだった。




◇◇◇

 そんなこんなで、研修に参加する5人中の3人。

 まだ学園に通学中だから、研修は放課後に予定。

 全員揃って、執事とメイド喫茶が開業される屋敷に集合予定。


 中世ヨーロッパの城に入れば女子は姫、男子は王子のように傅かれる空間である。

 勿論キャピキャピではない。

 重厚な雰囲気で、30人ほどのオーケストラが曲も奏でる場所である。

 非日常感がまた、再来に繋がってもいた。


 執事とメイド達が、合同の空間で高位貴族に対するような技術を学ぶ。

 立ち姿、所作、お茶の入れ方、料理の仕方、接客、掃除など。

 本当に邸に仕える使用人にように、バシバシと鍛え上げられる若者達。 


 わりと裕福なMファイブが、それらを熟せるかは未知数だったが彼らは真面目だった。

 まるで昔からこの城にいた執事達のように、粛々と働いていた。


 同じようにメイド役の女子達も、生活の為やメイド技術を学ぶ為にここに就職していた。

 どんなに苦しくても、家族の生活の為、自分の将来の為に貯金したいと懸命だった。

 Mファイブ達よりも、さらに真剣に気高く。

 彼女達は薄っぺらなイケメンには用がないと言う感じで、ちやほや等しないのだ。



 逆にそれが新鮮で、彼ら(Mファイブメンバー)も真剣に学べたようだ。

 イケメンだが、それ以上に剣技や体術の腕もある彼ら。


 彼ら彼女らにマナーを教えるのは、リンダ夫人の元で働く、侯爵家にいたベテラン執事や侍女達。

 そして護衛達も、彼女の家の選りすぐりだ。


 今回も一枚噛んでいるリンダは、報告を受けて口角を上げる。


「無粋な護衛が出ていくより、トラブル時は彼ら(従業員の執事達)が率先して前に出てくれたら良いわね。

 勿論、お預かりした子供達に危害など加えさせないけれどね。フフフッ」


 とにかく楽しいことが好きなリンダは、最近の活動が楽しくてイキイキしている。

 まだまだ若々しく、20才は若く見えるほどに。


「そろそろ仕上げね、あの子達。

 私がおもてなしを受けて合格なら、喫茶の開始となるわ。

 けれど独占して、個人的に楽しみたい気持ちもあるわね。

 麗しい美人や美男ばかりなのだもの」


 そう微笑むリンダは、その後ドンマイン一家と来客第1号として、接客を受けるのだった。


 学び始めとは、態度も心変わりも変化した若者達が、彼らを正式な客として給仕をする。


 オーケストラの曲が流れ、城の様式のような装飾と洗練された家具。

 テーブルと椅子も猫足で、怪我をしないように、また優美な曲線と彫り模様に目を奪われる。

 木材も高級な本チークだ。

 壁紙も城に似た重厚な素材と色合いで、薔薇の模様が描かれて目にも美しい。


 勿論茶器もお皿も、ポットなど一流。

 1つ1つ別の花の描かれた一点物で、スプーンもフォークも銀で作られ細かな花が彫られていた。


「わぁ、可愛い。ここにいるとお嬢様になったみたい」

「ホホホッ。カルーラ(かずさ)はお嬢様でしょ?」


「いえいえ、私は商家の娘です。

 ただシルバーとアーミンには良くして貰っています」

「そうなのね。彼らと比べて、ここの子はどうかしら?」


 少し沈黙がしてから、おずおずと答えるカルーラ(かずさ)。


「それは…………。アーミン達の方がテキパキして、安心します。

 あ、でも。彼らも短時間で、作法を身に付けたと聞きました。

 素晴らしいことですわ。

 私なんて、今でも全然だめで」


 あたふたするカルーラ(かずさ)を見て、リンダは微笑む。

(この子は本当に優しいわ。もう、本当に良い子。好き!)


「わかっているわ。

 平民の子もいるのに、素晴らしい上達ぶりなのね」

「はい。そうなのですよ!」


 嬉しそうに他者を褒めて微笑むカルーラ(かずさ)に、リンダの評価はうなぎ登りである。

 それをドンマイン一家も、微笑んで眺めていた。


(ごめんな、かずさ。リンダ夫人を任せて。

 でも俺、夫人の圧強くて苦手なんだ)

(さすが、かずさね。夫人に緊張しないのは、貴女だけよ。グッジョブ! 

 彼女の気分を損ねたら、この貴族社会では一瞬で命も危ないから。

 でももう貴女、リンダ夫人の孫みたいじゃない)

(姉ちゃんすげえ。

 あの人、影の女帝と呼ばれてるのに。

 いつも普通だもんな。さすがに尊敬するよ)



 普通にするのが普通じゃないこの世界。

 かずさは珍獣枠だった。



 それは執事やメイドのスタッフにも、同様の驚きだったよう。


「あの人、すごいね。平民なのに、夫人と対等に話してるよ」

「憧れる」


「さすが聖女様。でも彼女、ぜんぜん威張らないのよ」

「私も知ってるわ。それに幻の絵師でもあるのよ!」


「家族も全員実業家らしいわ」

「昔は小さな商家だったらしいのに、努力されたのね」


「そうか。じゃあ、平民だからと諦めていられないな」

「俺達(私達)も頑張ろう」

「「「「「そうね。頑張ろう!!!」」」」」



 なんて彼女の評価が知らず上がる裏で、ルフランは憎しみを滾らせていた。

 彼女はMファイブのアクア推しだったのに、あっさり逃げられたからだ。

 今日もたくさん男の子が侍っているが、イマイチ物足りないルフラン。

 やっぱりあの5人は、何だかんだ言って優秀だったから。


「許さないわ、ドンマイン一家。

 絶対、土下座させてやるんだから!」


 逆恨みは、止まらないのだった。

 侍女やメイド達の動悸も、また…………。




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