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【書籍化決定】悪役令嬢の無念はわたしが晴らします  作者: カナリア55
第四章

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久しぶりの見学 2

 テントに行ってみると、お菓子と薬茶をもらう為にできた列を、アメリアが一生懸命捌いていた。


「焼き菓子1個、お茶も1杯ですからね! 取ったらどんどん移動お願いします!」

「侍女さん、お茶1杯じゃ足りないよー」

「そっちにお水あるじゃないですか! はいはい、どんどん進んでくださ~い」

「だってあの水はさぁ……なあ」

「いつもなら飲むけどさぁ……」

「先輩! 侍女さんが困っているじゃないですか!」

「じゃあお前はあの水飲めよ」

「ウッ……」


 騎士達はそんな事を言って、粘っている。


(普通の水は用意されているけれど、わたしがいる時は誰も飲まずに待っているのよね。早く出してあげなくちゃ)


「アメリア、お待たせ。一人で大変だったでしょう?」


 その声に、騎士達は慌ててエリザベートにお辞儀をする。


「皆さん、ご苦労様。今水を用意するから、薬茶を飲み終えた人はどうぞ」

「す、すみません、お嬢様!」

「ありがとうございます、エリザベート様」

「いただきます、エリザベート様」


 好きなだけ飲めるようにと、水差しを次々と満たしていく。


「はーっ! やっぱりエリザベート様の水は違うな!」

「冷たいし甘いんだよ」

「体中、末端まで染み込んでく感じだよな!」

「このお菓子も美味いなぁ」


 ワイワイ騒ぎながらお菓子を食べたり薬茶や水を飲んでいる騎士達を微笑ましく見ていると、片付けを終えたルークがやっとテントの中に入って来た。


「ルーク、お疲れ様。お菓子と薬茶よ」

「ありがとうございます」


 嬉しそうに受け取り、グッと一気に薬茶を飲み干す。


「美味しいです!」


(ルークにはもう一杯薬茶を……と、いうわけにはいかないわね。一番の新人なのだし)


 グッと堪え、空になった器に、水魔法で直接水を注いでやる。


「さっき、腹部を蹴られていたけれど、大丈夫なの?」

「はい、あれは蹴るというより、押すという感じで……吹き飛ばされましたが、あまり痛くなかったです」

「そう、良かったわ。……最近、体術の訓練に力を入れているようね」

「はい。エリザベート様をお守りするとき、剣を持っていない可能性もありますから。剣を持たない方が、相手を傷つける可能性も低くなりますし」

「そうね」

「早く一人前になれるよう、頑張ります!」

「ええ、楽しみにしているわ。でも、あまり無理をしては駄目よ。日々の護衛に、万全の体調で臨んでもらいたいから」

「はい!」


 元気に返事をするルークに『いつも通りね』と安心していると、


「姉上!」


 アルフォンスがテントに入って来た。


「あら、アルフォンス、貴方も来ていたの?」

「はい!」


 元気良く返事をするアルフォンス。


「たまにこっちで練習しています。帰りかけたところで、姉上がいらしてると聞いて寄りました」

「そう。今日はお菓子を持ってきているの、貴方も食べる?」

「是非!」


 毒見を終えたお菓子と薬茶を嬉しそうに受け取ったアルフォンスに、エリザベートは『そういえば』と尋ねた。


「そういえば、最近お母様をお見かけしないけれど、お元気かしら?」

「あ……それが、ちょっと体調が悪いみたいで、お部屋からあまり出てこないんです」

「まあ……それは心配ね」


(前々からの習慣で、わたしは一人で食事をしているのよね。だから全然知らなかったわ)


「お見舞いに、行こうかしら」

「でも……僕もあまり会ってもらえなくて……疲れてしまうからそっとしておいて欲しいとかで……よく、わからないんですが」

「そう……それなら、少し様子を見た方がいいかもしれないわね。お見舞いに伺って良さそうになったら教えてちょうだい」

「はい! 姉上!」


 お菓子を食べ終えたアルフォンスは、名残惜しそうにしながらも先に屋敷に帰っていった。


「さあ、そろそろわたくし達も戻りましょうか」

「お送りします!」

「あら、ルークは今日休みなのだから……」


 断ろうとしたエリザベートだったが、ルークの耳が横にペタンと倒れるのを見て言葉を続けた。


「でもルークがそう言ってくれるのなら、お願いするわ」

「はい!」


 嬉々として空になった瓶を入れた籠を持ったルークとエリザベートが並んで歩き、アメリアはその後ろを、やはり籠を持ってくれた若い騎士と歩いている。

 

(……自分も送ると手を上げたあの騎士、きっとアメリアの事が好きなのね。アメリアの方はどうなのかしら……後で聞いてみなくちゃ)


「あの……エリザベート様」

「なぁに? ルーク」

「実は今日、公爵様にお声を掛けていただきまして……」

「ええっ? お父様に?」


 驚き、ルークを見る。


「何か嫌な事言われたの? それならわたくしが」

「いいえ! 『エリザベートの飼い犬も、少しは使えるようだな』と」

「なんですって!? お父様ったらなんて酷い言い方を」

「あ、いえ! 全然酷い事じゃなくて」

「酷いじゃない! ルークの事を飼い犬だなんて! しかも、少しは使えるようだ、ですって?」


 エリザベートは立腹したが、ルークの方は何とも思っていないようだ。


「私は全然嫌じゃなく……むしろ、少しでも使えると言ってもらえたのが嬉しくて。これまで声を掛けて頂いた事もなかったですし、公爵様は『獣人は人よりも感覚が鋭いのだろうな』とも仰って下さいました」

「……そう……」


(確かに、あの父が獣人に声を掛ける事自体、すごい事だわ。それに、ルークが喜んでいるのだから、あまり水を差すような事は言わない方が良さそうね。それよりも今、大変な事に気づいたわ!)


「……ルーク、ごめんなさい。わたくしったら、貴方が身体を張ってわたくしを守ってくれた事に対して、お礼を言っていなかったわ。本当にありがとう。文句ばかり言って、ごめんなさい」

「そんな! 謝らないで下さい! 私の対処の仕方が悪かったせいで、エリザベート様のドレスを駄目にしてしまったし、助けていただいたし……エリザベート様が私の事を本気で心配して下さって、嬉しかったです。これまでは、自分がどうなってもエリザベート様を守れさえすればいいって思っていたけど……エリザベート様をずっとずっとお守りする為には、自分の命を投げ出しちゃいけないって、ちゃんと理解しました。強くなって、約束を守ります」

「ルーク……そうね、お願いね。頼りにしているから」


 そう言われたルークは、嬉しそうに笑った。


 


ルークは奴隷商でも犬と呼ばれる事があったので気になりません。が、もう少し違う言い方があるでしょうに。


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