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【書籍化決定】悪役令嬢の無念はわたしが晴らします  作者: カナリア55
第四章

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打診

「レオンハルトの育児、教育に関わらない事に対しても、もちろん文句を言われたけれど、そこはもう、陛下が『これ以上の批判は王家に対する冒涜とみなす』と釘を刺してくれたわ。それで、どうにか精神状態が安定してきて……世継ぎを産んで役目を果たしたらお暇する予定だったけれど、王位継承権第二位という微妙な立場になったエドワードを残して城を去るのは嫌だったし、わたくしが去ったら別の王妃が迎えられ、新たに王子が誕生したらレオンハルトに対抗して次期王位を狙うかもしれない。それよりはわたくしが残って王妃になり、エドワードは第二王子として、レオンハルトの手助けをできるようにしっかり教育し、レオンハルトの王位継承を支持するのがいいと判断して残る事にしたわ」

「だから、エドワード様は優秀でお優しいのですね」

「ええ。でもちょっと、控え目になりすぎたかもしれないわ。最近ではレオンハルトの尻ぬぐいばかりさせられて、文句も言えず……というより、レオンハルトはもう少しちゃんとしていると思っていたわ。幼い頃から帝王学を学んできたはずなのに、どういう事かしら。尊大に振る舞うきらいはあるけれども、帝王然として王には向いているかと思っていたけれど、あの男爵令嬢と交流するようになってからの態度は酷いものだわ」

「ええ……」

「伯爵家のわたくしの事を、身分が低いと散々蔑んで、陛下の事も薄情だと非難していたくせに、自分はどうだって話よね」

「……実はわたくしも同じ事を思い、指摘して、激怒されました」

「あら! そうだったの?」

「はい……」


 二人は顔を見合わせて苦笑した。


「……ねえ、エリザベート嬢、実は陛下から、いま一度、貴女の気持ちを尋ねるようにと言われているの」

「気持ち、でございますか?」

「ええ。レオンハルトを許し、もう一度やり直す事はできないか、という事なのだけれど……」


 王妃の言葉に、絶句する。

 レオンハルトとの婚約破棄が認められたのは、成年パーティーのすぐ後。

 レオンハルトが学園にいるうちに発表しては色々と面倒だからという事で正式発表はまだだが、書類上の手続きも済み、『良かった、これで一安心』とホッとしていたところなのに。


「それは……申し訳ございません、わたくしにはとても……」


『陛下はまだそんな寝ぼけた事を仰っているのですか! 絶対無理です!』と言いたいところだが、国王に対する言動なので、気を遣いながら返答する。


「第一、レオンハルト様にその気が無いでしょうし」

「……そうなのよね。元々レオンハルトの行動が原因で婚約破棄になったのだから、まずはあの子が行動を改めて、エリザベート嬢に謝罪をする事の方が先なのだけれども……あら、いつの間にかあと1列になっているわ」


 話をしながらつまんでいたシュークリームがだいぶ減っている事に改めて気づき、王妃はパチパチ瞬きをした。


「ごめんなさいね、わたくしだけでこんなに沢山」

「いえ、わたくしは自分で作って食べられますので」

「そう? では、いただくわ。……はーぁ、本当に美味しい。……それでね、陛下は貴女が了承してくれるなら、責任もってレオンハルトに言い聞かせ、態度を改めさせると仰っているの」

「それは……確かに、陛下のお決めになった事には、殿下も従うでしょう。ですが、それはあくまでも表面上だけかと」

「そうなのよね……陛下にも、困ったものだわ。自分が言う事は全て受け入れられ、喜ばれ、叶うと思っているのよ。王として育った者の困ったところね」


(……なるほど……そういえば『本気で婚約破棄したいと思っている』と言った時も、驚いていたようだったわね。ところで……)


「あの……最近、ローズ男爵令嬢が王太子妃教育を受けているという噂を耳にしたのですが……彼女を王太子妃とする為にしている事ですよね。それなのに、わたくしにこのような打診があるのはおかしいのでは?」

「ええ、確かにそうなのだけれど……ぜーんぜん、うまくいっていないのよ」


 王妃が大きなため息をつく。


「教育係達は『令嬢には学ぶ姿勢が見られない、楽をする事しか考えていない』と言うし、ローズ男爵令嬢は『わたしは努力しているのに、先生方は身分が低いと馬鹿にしてわざと難しい事ばかり言う。エリザベート様はできた、エリザベート様は文句を言わなかった、と比べられてばかりで辛い』とレオンハルトに泣きついて、彼が教育係達を解任してしまったの。今は新しい教育係を探しているところよ。それに……ねえ、エリザベート嬢? 貴女がなぜ、王太子の婚約者に選ばれたか、知っている?」

「家格のつり合いと、年頃が丁度良かったからでしょうか」

「そうね。そして一番重要なのは、血筋の良さよ。レオンハルトの母親は小国の姫で、既に亡くなっているわ。だから、エドワードを王太子にした方が良いという声も多かったの。でも、陛下は最愛の女性が命を懸けて産んだレオンハルトを、どうしても次期王にしたかったの。それが彼女への、愛の証になると。それで、血筋が良く、レオンハルトの強力な後ろ盾となる婚約者を選んだのよ。最初、公爵は断ったのだけれど」

「えっ? あ、申し訳ございません」


 驚きのあまりエリザベートは王妃の言葉を遮ってしまい、慌てて謝罪をしたが、王妃は『いいのよ』と笑って話を続けた。


「自分の娘にそんな重責を負わせたくないと言ってね。でも、何度も打診され、最終的に頭を下げられたら、了承するしかないわよね。条件として、しっかりとした契約書を要求していたけれどね」

「契約書……」

「ええ。見た事は?」

「ございます、最近……」

「色々と条件が書いてあったでしょう? あれは、貴女のお父様が、貴女の事を心配して作ったものなのよ。勿論、王太子との婚約という国の大事ですもの、契約書は当然作成されるわ。でも大抵、相手貴族が内容について煩く言及する事はあまり無いの。わたくしの父なんて、国王の言う事は全て受け入れる姿勢だったから、ロクに内容確認もせず、渡された契約書にサインをしたらしいわ」

「そう、でしたか……意外です。父がわたくしの心配をしていただなんて、そういう感じはこれまで少しもございませんでしたから……」

「……父親というのは、不器用なのかもしれないわね。陛下だって、亡くなった王妃を心の底から愛していて、レオンハルトの事がとても大切なのに。きちんと話をしないから、母親をないがしろにされたと思われているのよ。わたくしが言ってもレオンハルトは信用しないから、陛下がきちんと話すしかないのだけれども……困ったものだわ」

「おっしゃる、通りでございます……」


 正直、この話を聞いたからといって、『お父様の事誤解していたわ! わたしの為に心を砕いてくれていたのね』とは思えない。


(でも少しは……話をしてみたい気には、なるわね。ほんのちょっとだけれども……)


 しんみりとした気分になりながら、エリザベートはカップに残っていた冷めた紅茶をクイッと飲んだ。





それぞれに、色々と思うところはあるようです。

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