悪役令嬢三人のお茶会
『クリスティーナ、君、やる気があるのはいいが、実力が伴ってないだろう。兄のオニキス先生にいい所を見せたかったという事らしいが、そのせいで皆が迷惑したんだ。自分が認められたいからルチアに仕事をするなと言うなんて、呆れた話だ。今回は大目に見るが、いいか? 本当は辞めさせようと思ったのだからな? ルチアが、君の言う事に従ってしまった自分にも責任があるから、今回だけは大目に見てくれと言うから、特別に許すという事を忘れるなよ』
「……と、会長に言われました」
クリスティーナの話に、エリザベートは口元に運んでいたティーカップをお茶を飲まずにソーサーへ戻し、ヴィクトリアはクッキーを取ろうとしていた手をキュッと握りしめた。
ここは、アメジスタ侯爵家の美しい庭園。
ヴィクトリアに招かれ、エリザベートとクリスティーナは優雅にお茶会を楽しんでいた。
一緒に訪問しているルークとリアムは、アメジスタ侯爵家の騎士達と交流中である。
「……そんな事言っていないと言おうとしたのですが、なんだか、言ってはいけないような雰囲気で……」
「それじゃあ、何も反論しなかったの?」
「……すみません……」
驚いたように尋ねるヴィクトリアに、頭を下げるクリスティーナ。
「謝る必要はないけれども……ねえ」
「そうねぇ」
同意を求められ、エリザベートは頷く。
「クリスティーナ様が誤解されるのは、面白くない事だわ」
「ええ、本当に。でも確かに、クリスティーナ様がレオンハルト様に反論するのは難しいわよね……」
「そういえば! 2年生の二人はどうしていたの? 黙って聞いていただけ?」
エリザベートの質問に、クリスティーナは首を横に振った。
「エドワード様とテオール様がいないときに言われたんです。オリバー様は険しい表情をしておいででしたし、ダニエル様はわたしの事をずっと無視してますし……ディラン様だけは、ルチア様の勘違いではないかと庇って下さいましたが」
「そこにルチア嬢はいたの?」
「はい。『ディラン様の言う通り、わたしの言い方が悪かったんです、クリスティーナは悪くないです』と皆さんを宥めて下さいましたが……」
その報告に、二人は顔を顰めた。
「……目に浮かぶわね」
「ええ、ええ、もう、ありありと!」
言っていない事、やっていない事も、ルチアにかかれば本当の事になってしまう事を体験している二人は、ギリッと歯ぎしりをした。
「婚約者のいる男性と人目のない所で二人きりになるのを諌めただけなのに、いじめて泣かせて嫌がらせをしている事になっていたわ」
「わたくしもそう!」
「ヴィヴィは実際にやったでしょう?」
「ちょっとだけよ! 実際にやった事の倍くらいの事をした事になっていたわ!」
「はいはい。……でもそうね、本当に腹立たしい。そう考えると、クリスティーナ様が反論しなかったのは正解だったかもしれないわ。もう関わり合いを持たないよう、生徒会も辞めてしまえばいいのよ」
「そうよそうよ、それが良いわ」
憤慨しながらエリザベートとヴィクトリアは言ったが、
「……生徒会は、続けようと思っています」
「あら、そうなの?」
「はい。実は、ルチア様から辞めないようにと言われまして……」
「「?」」
「二人きりの時に『何を言っても無駄』と言われたのです」
「ええっ?」
「何ですのそれ?」
ルチアから直接文句を言われた事はなかった二人は、驚いて顔を見合わせた。
「誰も、わたしの言葉など信じないと……ルチア様の言葉こそが真実となるのだから、無駄な事はしないで黙って生徒会の仕事をするようにと言われました。もし辞めたら、お兄様にとって良くない事になるとも」
「酷い! それって脅しじゃない!」
「それで、クリスティーナ様は我慢をする事に?」
その問いに、クリスティーナは首を横に振った。
「いえ、我慢ではありません。わたし、とっても腹が立ったのです」
クリスティーナはギュッと両手を握りしめた。
「あんな脅しに屈したくはありません。今回は一人で悩まず、お兄様にもちゃんと相談をして、生徒会で頑張る事にしました。それにあの時のエリザベート様とヴィクトリア様のお姿がとても素敵で、ああなりたいと思ったのです。大変だとは思いますが、2年生の先輩方のお手伝いをしっかりとしたいと思います! ルチア様には負けませんわ!」
「まあ! 立派だわ、クリスティーナ様! わたくし達も応援します! ねえ、リザ」
「ええ、まあ……でも、やっぱりルチア嬢にはあまり関わり合わない方がいい気も……クリスティーナ様、本当に気を付けてね?」
「はい、ありがとうございます、ヴィクトリア様、エリザベート様。あの……もしよろしければ、わたくしの事は気軽にクリスかティーナと呼んでいただけたら……」
「あら、それじゃあわたくしの事はヴィヴィと呼んで下さいな」
「わたくしの事はリザと」
こうして、ゲーム内における、ヒロインの邪魔をする悪役令嬢三人は絆を深めていくのだった。
新たな仲間が加わった!




