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【書籍化決定】悪役令嬢の無念はわたしが晴らします  作者: カナリア55
第二章

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意外とそういうもの

「……なんやかんやで、意外とすぐに終わったわね」

「そうね……案外、簡単に……」


 優雅にお茶を飲み、エリザベートとヴィクトリアが微笑み合う。

 そう、思ったよりも早く、生徒会の仕事は終わった。

 エドワードとテオールは資料を提出しに行き、残りの5人はさっさとスピネル公爵家に移動した。制服のまま歓迎会に出席しようとしているクリスティーナに、着替えをさせる為である。


「……締切り日に、作業が進んでいると思っていたものが全くの手つかずと知れば、それだけで慌ててしまうものよね」

「そうそう。それなのに、仕事をする人員が半分以下で絶望してしまったんでしょう」

「思ったよりも、提出された書類にミスが無かったのも嬉しい誤算だったわ」

「いつもはもっとミスがあるの?」

「ええ。未記入があったり計算が間違っていたり、そもそも提出し忘れているところもあったりで、そういうところにはこちらから出向いて修正させたり回収しなきゃいけないから、人手と時間がかかっていたの。今回は少なくて良かったわ。それに、リアムくんにも感謝ね。あまり多くなかったとはいえ、あちこちの委員会やクラブに書類を持って行って疲れたでしょう?」

「あのくらい平気です。授業で散々走らせられているので。ねっ、ルーク」

「はい」

「さすが、騎士課ね」


 褒められて恥ずかしそうに笑うリアムは、ヴィクトリアに頭を撫でられて嬉しそうに目を細めている。


(……子犬みたいね。うちの可愛いルークも褒めてあげなきゃ)


 ソファーでくつろぐエリザベートの後ろでピシッと立っているルークを手招きし、片膝を突いて頭を垂れたところを撫でる。


「ルークも頑張ったわね。偉いわ」

「ありがとうございます、エリザベート様」


 そこへやって来たアメリアが、そんな二組の様子を見て微妙な表情をした。


「……お嬢様方、なんだか……」

「あら、なあに?」

「……いえ……」

「ちょっと! 気まずそうに目を逸らさないでよ」

「あ、申し訳ございません。それよりも、お待たせ致しました、クリスティーナ様のご準備が整いました」

「……あのぉ……」


 アメリアがスッと身体をずらしてお辞儀をすると、後ろからおずおずと、青いドレス姿のクリスティーナが前に出た。


「まあ! よく似合っているわ。サイズもいいようね」

「あ、ありがとうございます。ですが、良かったのでしょうか……アメリアさんが、まだ一度も着ていないドレスをお借りするなんて……」

「いいんですよ、クリスティーナお嬢様。一度や二度着たくらいで、ドレスはどうこうなりませんから」

「ありがとうございます、アメリアさん。それに、お化粧も、髪のセットも皆さんがしてくれて……」

「とってもお綺麗ですよ!」


 クリスティーナの家は学園から遠いので、一番近いスピネル家でエリザベートのドレスを貸してあげる事にしたのだが、エリザベートの身長が高く、ドレスもかなり煌びやかな物ばかりだった。


「去年のドレスでもいいかしら」 

「あら、去年の物もまだ大きいみたいよ」

「2年も前だと、さすがにデザインが古いわよね。時間があれば直せるけど……」

「2年前の物でかまいません。そもそもわたしの持ってるドレスは、親戚からもらったおさがりを直した物ばかりで、もっともっと前のものばかりですから」

「あら、そうなの? じゃあ、わたくしのおさがりで良ければさしあげますわ」

「わたくしのドレスも似合うんじゃないかしら? 今度我がアメジスタ家にも遊びにいらして」

「お嬢様方、そういうお話は後でゆっくりと……メイクもしなければなりませんし……あの、先日わたしが買っていただいたドレスを着てもらうのはどうでしょうか? 見た感じ、同じくらいの身長なので合うと思うのですが」

「あら、それはいい考えだわ。アメリアには後で、代わりのドレスを買いましょう」

「いいえ、もう何着もいただいているので大丈夫です、エリザベート様。ではすぐに持って参りますね」


 と、いうことで、アメリアが買ってもらったドレスのうちからクリスティーナに一番似合うドレスを選び、それに合うアクセサリーやリボンを決め、今、歓迎会へ行く準備ができたのだ。


「控え目だけど可愛さが引き立つメイクだわ」

「髪型も、編み込みが素敵ね」

「いつもエリザベート様のお仕度をする侍女達総動員であたりました」

「完璧だわ! さあ、それじゃあクリスティーナ様、いってらっしゃい。うちの馬車で送らせるから」

「何から何まで、本当にありがとうございます」


 そうして、クリスティーナを見送ろうと皆で屋敷の外に出ると、そこには公爵家の物ではない馬車が停まっていて、エドワードとテオールが待っていた。


「ここからは、私達がしっかりエスコートするよ」

「そうですか。では、しっかり、お願いしますね」

「ハハッ、では行こうか、クリスティーナ」


 なにか含みのあるエリザベートの言葉に苦笑しながら、エドワードがクリスティーナに手を貸して馬車に乗り込む。そしてその後に続き、テオールが乗り込もうとしたが、不意にエリザベートを振り返って言った。

 

「エリザベート、君、本当に数学を克服したのだな、驚いたよ。……感謝する」

「え? ええ、まあ……別にいいですわよ」


 テオールに礼を言われ、なんだか居心地の悪さを感じてしまう。


(テオールもエリザベートも、どちらも完璧主義で張り合っていたから、感謝されるとなんだか変な気分になるわ。でもまあ、気分はいいわね。ああ、やり切ったわ! あの3人が完璧に仕事をこなして歓迎会に参加するとは、思ってないでしょうね。ふふっ、ふふふふっ、驚く連中の顔が見れないのが残念だわ)


「……リザ? あなた、なんだか悪者のような、悪い笑顔になってるわよ?」

「なっ……失礼なっ!」


 そう言いながらも、こみ上げてくる笑いを抑えきれないエリザベートだった。



 

完璧です!

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