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【書籍化決定】悪役令嬢の無念はわたしが晴らします  作者: カナリア55
第二章

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幸せとは 1

「なん、で……婚約破棄?」

「本気ですか? エリザベート様」

 

 ヴィクトリアとリアムはものすごく驚いているが、エリザベート的には当然の事なので、二人がこれほど驚く方が意外だ。


「レオンハルト様はルチア嬢にベタ惚れで、わたくしの事は嫌っているのだから、その方がいいでしょう? 婚約破棄の意思はもう伝えているの。レオンハルト様は本気にしていなかったようだけれど、この間会った時に本気だと伝えたから、もうすぐ破棄されると思うわ。あ、ヴィヴィ、わたくしの手作りクッキーはいかが?」

「あら嬉しい、いただきますわ! っじゃなくて!! リザ、本当にいいんですの? これまでの厳しい王妃教育が、無駄になってしまうというのに」

「そうですよ。それに、王妃となる名誉が……」


 ヴィクトリアとリアムは心配そうに言うが、エリザベートは首を横に振った。


「もう、努力が無駄になるとか、名誉がとか、そういうのはいいの、本当に」


 クッキーを一つ摘み、心配そうにしながらも黙って隣に控えているルークに渡しながら、エリザベートは言った。


「わたくしを大切にしてくれない人の為に頑張るのは、もう嫌になったの。これからは自分の為に生きるわ」


 この間の、レオンハルトとのいざこざがあった後、エリザベートはこの世界の事について改めて勉強した。日記を読み、本を読み、周りの人達と話をして、わかった事。 


(ここは、あまり良い世界ではない)


 残念な事にこの世界は、身分差別や男女差別が酷く、それがあたり前の世界だ。

 キラキラした世界で、衣装も華やか。容姿端麗な男性が多く出てきて、甘い言葉をかけてくれたり、ちょっと強引に愛を囁いたり……。そんなところがウリのゲームだが、実際にその中で暮らしてみれば、華やかな事だけではない。


(ゲームではヒロインだからチヤホヤされて、なんでもうまくいっていただけなのよね)


 実際は、身分による差別や性別による差別が酷い。

 貴族の男児は家督を継ぐ者として教育され、大切にされる。戦や疫病の流行で亡くなる事もあるので、長子でなくともある程度大切にされる一方、女児は、家門を繁栄させるための道具とみなされる事が多い。有力家との繋がりや、援助を受ける為に、たとえ親子ほどに齢が離れていようと、第二、第三夫人であろうと、妾としてでも、嫁がされることがある。

 望まれて、正妻として迎えられたとしても安心はできない。

 結婚後は跡継ぎを産まなければならず、男児を産めなければ第二夫人を迎えられたり、離縁されても文句は言えないのだ。それが、当たり前の事だから。


(大貴族ほど守るべきものが多くて、継承していかなければならないから、しょうがない事かもしれない。家門を継続するには優秀な跡継ぎが必要だし、使える駒は家族でも使うでしょう。有力者が、孫ほど年が離れた女性を妾にと希望すれば、喜んで娘を差し出す親も多い。元の世界では男女差別が問題視されていたけれど、この世界は問題視されない。男性の浮気は当たり前の事。浮気された女性の方が、魅力が無いからだと笑われてしまう。だから男性を責める事ができなくて、女性同士でいがみ合う事も多い……)


 婚約者がいる男性も攻略対象になってるゲームだから、それが反映されているといえば、納得できる。


(女性がメインターゲットのゲームだけど、ヒロイン以外の女性には厳しい世界よ。とはいえ、それじゃあ仕方がない、と諦めるわけにはいかないのよ、わたしも、この子も)


 お気に入りのクッキーを食べながらも、ヴィクトリアの表情は暗く見える。


(わたしが婚約破棄する事を、考えているのでしょうね)


「どう? 美味しいかしら?」


 そう尋ねると、ヴィクトリアはエリザベートを見てコクコク頷いた。


「とてもとても美味ですわ。カリッとしてサクッとして甘さも丁度良くて、もう、止まらなくなりますわ! でも、リザの手作り……公爵家の令嬢が料理をするだなんて……」

「文句があるなら、食べなくていいのよ?」

「べ、別に文句があるわけではないですわ! わたくしが言いたいのは、あなたがわざわざ作るよりも、作り方を料理人に学ばせたらいかが? という事です!」

「作るのが好きなのよ。気分転換になるし、色々と試作して新しいお菓子を作るのが楽しいの」

「まあ、それでしたら、これからも食べてさしあげますわ。珍しい物には興味がありますもの」


 そうすまして言うヴィクトリアを見て『可愛いなぁ』と思うエリザベートである。


(向こうの世界では二十代半ばまで経験してるから、妹みたいに感じるわ。まだ十代だし、恋愛や結婚に対して、夢や希望をもっているわよね。そんな子に、夢も希望もない現実を教えるのは心苦しいけど、ちゃんと考えて対策を立てないと泣く事になるからね、わたしみたいに……)




姉の気持ちになっています。

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