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【書籍化決定】悪役令嬢の無念はわたしが晴らします  作者: カナリア55
第二章

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自分が招いた事

 手洗い場で、思いっきり癒しの効果を込めた水を出し、顔を洗わせ、うがいをさせ、飲ませる。


「大丈夫? 痛い所はない?」

「はい、さっきの白い方に治してもらったし……あの、ハンカチが汚れますから」

「いいのっ! ちゃんと見せて!」


 レースのついたハンカチで顔を拭きながら、至近距離でジッと見つめてくるエリザベートに、ルークはドキドキしてしまう。


「なんだか、苦しそうじゃない? やっぱり痛いのね?」

「違います! その……エリザベート様に顔を拭いてもらうなんて、畏れ多くてどうしていいかわからなくて」

「何言っているの、そんなこと気にしなくていいのよ。……ごめんなさい、ルーク……。ルークが殴られたのは、わたくしのせいだわ」


 項垂れるエリザベートに、ルークは『そんな事ありません!』と言った。


「エリザベート様は何も悪くありません! 悪いのはあちらの方で……」

「いえ、今回の事は、わたくしが自分で招いた事よ」


(……そう。あれは、言ってはいけない事だった)




 馬車に乗り、公爵邸に帰ると、アメリアがソワソワした様子で出迎えた。


「おかえりなさいませ! お嬢様、学園は……あの……何かあったのですか?」

「ええ、まあ、ちょっとね……」

「あの……エリザベート様、師匠から、戻ったら報告するようにと言われていたので、行ってきていいでしょうか」

「ええ。今日はもう、休んでいいわよ。明日ゆっくりと話しましょう」

「はい。失礼致します」


 ルークと別れ、着替えを済ませたエリザベートは、アメリアの入れたお茶を飲んだ。


「はぁ……美味しい……ほっとするわ」

「良かったです。帰ってきた時は、まるであの時のような表情をされていたので……」

「あの時って……わたくしが死にかけた、あの時?」

「はい。前の時の方が深刻なようでしたが、今日もなんだか……」

「……わたくしのせいで、ルークが殴られてしまったの」

「えっ?」


 エリザベートの言葉に、アメリアが驚く。


「わたくしが、王太子殿下を怒らせたのよ。それで殴られそうになったところを、ルークが間に入って庇ってくれたの」

「傷がなかったので、気が付きませんでした」

「癒しの力を持っている上級生が治してくれたのよ。わたくし特製の水も飲ませたし」

「そうでしたか……ルークは大怪我を負ったのですか? たくさん殴られて?」

「いえ、一回だけよ。でも、グーで殴られたのよ。ガツッて音がしたわ。すぐに治したとしても、どれほど痛かったか……拳で思いきり殴られたのだもの……」


 思い出しただけでゾッとしてしまったが、アメリアはそれほど動揺しなかった。


「大丈夫でございますよ、ルークは元気でしたし。それにしても……エリザベート様が殴られていたら、大変な事になっておりました!」


 なにより、レオンハルトに対して腹を立てているようで、


「女性に対して手を、しかも拳を上げるなんて……王太子殿下が下町によくいる酔っ払いと同じだなんて、がっかりです。あっ! 申し訳ございません! わたしったらなんて不敬な事を……」

「まあ、そうだけれど……いいわよ、ここにはわたくし達二人しかいないのだから」

「申し訳ございません! 気を付けます」


 深く頭を下げて謝罪してから、アメリアは『ルークは……頑張ったのですね』と、呟くよう言った。


「驚くほど、成長して……。最初は小さくてやせっぽっちで、オドオドしておりましたが、お嬢様をお守りできたなんて……弟がいるせいか、なんだか姉のような気持ちになってしまい、成長に感動します」

「ええ、確かにそうね、わたくしもよ。……可愛い弟が殴られたような感じでショックだったの。心配して、謝るばかりだったわ。守ってもらったお礼を言わなくてはね」

「きっと、喜びます」


 二人は顔を見合わせて少し笑った。




(……アメリアは下町育ちだったわね。暴力は、見慣れているのかもしれない。あまり動揺しない彼女と話したおかげで、少し気持ちが落ち着いたけれど……今日の事は本当に反省しないといけないわ)


 夜、静かな自室でノートを広げ、今日出会った攻略対象やその他の人達の情報を書きながら考える。


(腹が立ってつい言ってしまったけれど……あれは、言ってはいけない事だったんだわ。小さな頃から長年の付き合いがあったエリザベートが、知っていたし、そう思ってはいたけれど、口にしなかった事)


 レオンハルトの母親は、他国から嫁いできた王女だった。彼女は身体が弱く、何年も子宝に恵まれなかったので、王は自国の貴族の令嬢を第二王妃として迎えた。

 その後王妃は、第二王妃よりも先に妊娠したが、出産後体調を崩して亡くなってしまった。


(レオンハルトは、王が第二王妃を迎えた事で、母親が無理をして妊娠を望み、無理に出産をし、亡くなったと思っている。だから、第二王妃だった現王妃様と、その息子である弟のエドワードをあまり好きではない。そして、同じように母を亡くしたエリザベートを仲間のように思っていて、『自分は側妃を迎えない。父上とは違う』とよく言っていた。それなのにルチアの事を好きになってエリザベートに辛く当たるなんて……父親よりずっと酷い事をしているのよね。だから、頭にきて言っちゃったけれど……あまりにも、痛い所を突いてしまったようね)


 エリザベートは、その事で辛く寂しい思いをしているレオンハルトを見ていたから、その事には触れず、我慢していたのだろう。


(エリザベートの記憶がだいぶ馴染んでいるけれど、元々の記憶もあるから『自分の方こそ言っている事とやっている事が違うじゃない!』と思って言ってやったけれど……結果的には激怒されて、ルークに怪我をさせてしまった。

物怖じせず発言する事と、後先考えず発言する事は全然違う。あのいけ好かない王太子に媚びるつもりはないけれど、こちらが被害を被らないようにしなければ。自分が殴られる覚悟があっての行動でも、実際殴られるのはルークだなんて……考えが、甘かったわ。しっかりしなくちゃ……わたしは、ルークの主人なのだから)


 これまでより慎重に行動しなくては、と思うエリザベートだった。



守られる存在だけれども、守りたい存在もできたので。

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