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【書籍化決定】悪役令嬢の無念はわたしが晴らします  作者: カナリア55
第二章

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33/123

昼休み

 午前中の3教科。必死に問題を解き、指定時間よりも早くテストを終えて部屋を出ると、そこにはルークが立っていた。


「ルーク!」


 いつもと変わりない表情にホッとして駆け寄る。


「これから騎士課に行かなきゃと思っていたの。授業、途中だったんじゃない?」

「見学ですし、私はエリザベート様の護衛なのでいつ抜けてもいいと言われ、こちらで待っていました」

「そうなの。じゃあ、少し早いけど昼食にしましょう」


 人目につかないところで食事をしようと考えてお弁当をもってきていたので、園庭に移動し芝生の上に布を広げ、向かい合って座った。

 

(こういう時、お湯を出せるってすごく便利よね)


 自分で作り出した熱湯で紅茶を入れ、料理長特製の燻製肉と野菜を挟んだパンを食べながら、どんな事をしていたのか聞く。

 見知らぬ場所で一人、心細い思いをしていたのでは、と心配したのだが、1年生の実技練習の見学だったので、朝の騒ぎで顔見知りとなったリアム・カーネリアンが色々気遣ってくれたらしい。


「型の練習を一緒にさせてもらいました」

「へえ、どうだった?」

「騎士団のとは少し違っていて最初は戸惑いましたが、最後の方にはどうにか形になっていたと思います」

「そう、頑張ったのね、偉いわ」

「あ、ありがとうございます」


 顔を赤らめながら、嬉しそうにはにかむルークが可愛くて『偉い偉い』と頭を撫でてあげていると、


「待ってよ!」

「放っておいて!」


 と、言い争うような声が聞こえた。


(何か揉めてる?)


 そう思いなにげなく声の方を見ると、そこにはあまり会いたくない顔が。ヴィクトリアとリアムが、こちらに向かって歩いて来るところだった。


「ねえヴィヴィちゃん、どこに行くつもりなの?」

「どこでもいいじゃない、ついてこないで! 放っておいてちょうだい!」

「だってヴィヴィちゃん、お昼食べてないでしょう? 一緒にカフェに……」

「わたくし、食欲が無いから」

「でも……あ……」


 先にリアムが二人に気づき、リアムの視線を追ったヴィクトリアも気づいたが、


「…………」


 気まずそうに、足元に視線を落とした。


(そりゃあそうよね、自分の悪事をわたしのせいにしようとしたんだものね。まあ、彼女と無理に話す必要は無いけれど、今後の為にもリアムにはお礼を言っておきましょう)


 そう思い『ごきげんよう』と声をかける。


「リアム様、わたくしの護衛がお世話になったそうで。ありがとうございます」

「あ、いえ、とんでもない……今朝のお礼のようなものですし……」


 笑顔で答えるリアムに、エリザベートも微笑んだ。


(弟は兄と違って、優しくて天使のようね。今だって、兄の婚約者の事を心配して……ん? もしかしてリアムって……)


「エリザベート様、今朝は……本当に、申し訳ございませんでした」

「えっ? ああ……」


 突然謝罪され、驚いてヴィクトリアを見ると、顔を赤くし、涙ぐんでいる。


(ああ……今朝の事で、教室では辛かったでしょうね……)


 実際は、二十代半ばまで人生経験のあるエリザベートだ。10歳近く年下のヴィクトリアを見ていると、可哀そうになってくる。


「……色々と思うところはありますが、謝罪を受け入れます。わたくし達、同じような立場ですものね。ヴィクトリア様の気持ち、わかりますわ」

「……ありがとうございます。……では、失礼致します……」


 深く頭を下げ、ヴィクトリアは足早に人気のない方へ歩き出し、


「ああっ! 待ってよヴィヴィちゃん! では、失礼します」

「あ、お待ちになって、リアム様」


 慌てて後を追おうとするリアムを引き止め、パンを2つ布に包み、もう一つの小さな包みと一緒に渡した。


「もし良かったら、ヴィクトリア様と一緒にどうぞ。こちらの小さな方はお菓子ですから、食欲がないというヴィクトリア様でも摘めると思いますわ」

「わっ! ありがとうございます。遠慮なくいただきます!」


 包みを受け取りペコリと頭を下げると、リアムはヴィクトリアの後を追って走っていった。


(お腹、ペコペコだったんでしょうね、実技訓練したんですもの。それでも、ヴィクトリアの事を心配して……いい子ね。あ、そうだ……)


「ルーク、ごめんなさいね、食べる物が減ったわ」

「いいえ、充分です。でも……」


 ルークの表情は、少し曇っている。


「いいのですか? 簡単に許してしまって。だってあの方は、自分が悪い事をしたのをエリザベート様のせいにしたのに……」

「いいのよ。わたくしはちゃんと否定したし、彼女も罪を認めたし。それに、さっきも言ったけれど……同じような立場だから。彼女の悔しい気持ち、痛い程わかるわ。まあ、仲良くしようとは思わないけれどね。さあ、食事を続けましょう。クッキーも、もう一袋持ってきているのよ。午後に向けて、しっかり食べておかないとね」

「はい! ありがとうございます!」


 そうして二人は、にこやかに食事を再開した。

 

  

食べると元気が出ます。

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