反省すべきは 1
「……オリバー様、人目もありますし、場所を改めた方がよろしいのでは?」
「お前は関係ないだろう!」
「関係ないって……絡んできたのはそちらですよね。わたくしを侮辱して名誉を傷つけておいて、関係無いわけありません。謝罪も受けていないですわ」
「まだお前が無実と決まったわけではない」
「はぁ……関係無いと言ったり無実と決まったわけじゃないと言ったり……わたくしのいない所で罪を被せられては困りますので、立ち会わさせていただきますわ」
その場に残る事を選択したエリザベートは、オリバーとヴィクトリアが向かい合う前で腕を組んで、二人の会話を聞く事にした。
「ヴィクトリア、説明してもらおうか」
「そ、その……」
「俺に言ったよな!? エリザベートに命令されて、仕方なくルチア嬢をいじめたと」
「わ、わたくしは……」
真っ白な、血の気の引いた顔。唇はワナワナと震えていて、
「うっ……」
小さく呻き、ヴィクトリアはその場にへたりこんでしまった。
「ヴィクトリア様!?」
「ヴィヴィちゃん! 大丈夫っ?」
慌てて駆け寄るエリザベートの他にもう一人、オレンジ色の頭の男子生徒が駆け寄ってヴィクトリアの肩を抱いた。
(あら? この髪色……オリバーの関係者? )
エリザベートの考えがわかったのか、男子生徒はペコリと頭を下げて早口で言った。
「騎士課1年のリアム・カーネリアン、オリバー・カーネリアンの弟です」
(弟は、まともそうね)
そんな感想を持ちながら、軽く会釈する。
「ヴィクトリア! 話は済んでいないぞ!」
(ああ残念、兄は異常だわ)
地面に座り込んでしまっている婚約者に詰め寄るオリバーを『DV男』と認定し、エリザベートはヴィクトリアをリアムに任せて立ち上がった。
「オリバー様、少し落ち着いたらどうです? そのような大きな声で怒鳴るなんて、怯えているヴィクトリア様をさらに追い詰めてらっしゃいますわ」
「お前には関係ないと言っているだろう!」
「ああもう! 関係あるって言ってるでしょう!?」
堪忍袋の緒が切れ、エリザベートは怒鳴り返した。
「いくら嘘をつかれたからといって、そうやって頭ごなしに怒鳴って怯えさせて、なんになるというの? 第一貴方、自分のせいでこうなったと思っていないでしょう!」
エリザベートからこんな事を言われるとは思っていなかったオリバーが、たじろぐ。
「お、俺のせいだと?」
「ええ、ええ、貴方のせいよ! 貴方、ヴィクトリアという婚約者がいるのに、ルチアルチアって、他の女の事ばかりじゃない! わたくしに怒ってきたのだって、ルチア嬢が嫌がらせを受けたという事で、でしょう? そこから間違えているのよ! 『俺の婚約者に酷い事を命じたな!』と怒るところでしょう? 今だって、こんな状態のヴィクトリア様を心配しないって、どういう事? 確かに彼女のした事は良くないけれど、それにしても可哀そうだわ!」
自分の行いを顧みる事無く、自分に尽くしてきた女性を責める男に腹が立つ。
「わたくし、彼女の気持ちがわかるわ! だってわたくしもそうされたんですもの。婚約者の事は放っておいて、他の女の事ばかり。好きになってしまうのは仕方がない事だわ。どうしてもどうしても、自分の心を抑える事ができない、という事もあるでしょう。けれど! それならそれで、ちゃんとその事を告げ、謝罪し、きちんと関係を清算するべきでしょう! なんなのあの馬鹿! 王太子だからって自分は何でも許されるって思っているんじゃないでしょうね!」
オリバーの話のはずだったが、いつの間にかレオンハルトの事を思い浮かべてしまっていたエリザベートは、全部言ってから、失言してしまった事に気づいたが、
(……まあ、本心だし)
と開き直った。
つい言っちゃった!




