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【書籍化決定】悪役令嬢の無念はわたしが晴らします  作者: カナリア55
第一章

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攻略対象?

 応接室に戻り、新しく用意されたお茶を飲みながら手続きを待つ。


「先ほどの金額ですが、あれは魔法契約も含めた値段でございます。値段の交渉は致しておりません。支払いは一括のみです」

「ええ、結構です」


 下見くらいの気持ちだったが、一応お金も用意してきていた。提示された額は、この場で支払うのに問題ない額だった。


「服はいかが致しますか? 新品の下着はサービスしておりまして、その他、別途金額はかかりますが、一般的な物からフォーマルな物まで取り揃えております」

「そうね、何枚かいただこうかしら」


 そんな事を話していると扉がノックされ、少年が連れてこられた。


(ようやく来たわね。キレイになってるかしら)


 そう思いながら戸口に視線を向けたエリザベートは、カッと目を見開き、思わず席を立った。


「なっ、なっ、なにっ? なんなの彼はっ!」


 クルリとクセのある柔らかそうな金色の髪と、金色に輝く大きな瞳。袖なしのシャツとパンツという下着姿で、白い肌、痩せすぎで浮き上がって見える鎖骨と細い腕と脚が、痛々しいながらも庇護欲をかき立てるかなりの美少年だ。しかし、それよりも、


「この子、獣人だったの!?」


 頭の上に、髪と同じ金色の毛でおおわれた耳がある。


(えっ? なんで? あっ! そういえばさっきは帽子被っていた、だから気が付かなかったんだわ!)


 いろいろと言いたい事はあるが驚きで言葉が出ず、口をパクパクとさせてしまう。


「これは大変失礼致しました、説明不足で申し訳ございません」


 ゴーディが深く頭を下げる。


「仰る通り、その者は獣人で、分類としては狼族です。先ほど申し上げた『元々の身体能力が高い』というのは、獣人だからという事です。そして金額が安いのも獣人だからです」

「……なるほど……」

「もちろん契約前ですので、お買い上げいただかなくて結構です」

「……そう、ねぇ……」


 口元に手を持って行き、考える。


(獣人というのは驚いたけど、可愛いし、かなりいいわ。でも、もし彼が『例のあの人』だったら? ……いえ、そんな偶然、ある?)


「ねえあなた、お名前は?」

「ル、ルーク・ゴールド、です」


 震える声で言った少年の金色の瞳には、怯えと絶望が見える。


「ルーク・ゴールド……」


(……これは、当たりなんじゃない? 悪い方の意味で)


「やはり、獣人はお嫌ですか?」

「え、ええ、まあ、なんというか……」


(いえ、獣人なのはいいわよ、可愛いし、この子! でも、この子ってアレでしょう? 攻略対象者! )


 このゲームにはシークレットターゲット、というものがあって、条件を満たさないと出てこない攻略対象者がいるのだ。


(わたしは見た事ないけれど、たしか、獣人だって聞いたのよね。これだけ可愛くて金髪で金色の瞳でゴールドという名前なのは、そうなんじゃない? いかにもシークレットっぽいわ。もし彼が攻略対象だとしたら、ルチアと出会ったらわたしの事を裏切りそうだし、ここはやっぱり避けた方が無難……)


 そう思いながらルークの方を見ると、


「お、お嬢様! お願いです! どうか僕を買って下さい!」

「えっ?」


 目が合った途端、ルークは床に両膝をついて頭を下げた。


「お願いです! 何でもします! どうか!」

「えっ、えっ、ちょっと待って! 立って立って!」


 エリザベートが驚いて言うとルークはとりあえず顔を上げたが、金色の両目からは涙がポロポロ溢れていた。


「そ、そんなに泣かれても……」

「不快な思いをおかけして申し訳ございません、お嬢様。お前達、立たせなさい」


 ゴーディの指示で、控えていた使用人が乱暴に腕を引いて立たせる。


「ああ、あの、わたくしはいいから、丁寧に扱ってあげて、ねっ?」


 可哀そうになりゴーディを見たが、首を横に振られてしまう。


「買っていただけないのであればこの者は店の商品ですので、扱いについては私に決定権があります」

「それは勿論そうでしょうが……あんなに泣いていて可哀そうだと……」

「さようでございますね。あの者は獣人ですし、買われるのは危険な鉱山や下級娼館くらいしょうから。そういう過酷な場所ではなく、お嬢様に護衛として買ってもらえると、期待してしまっての事でしょう」

「えっ……」

「しかし獣人がお嫌であればしかたありません。説明を漏らした私の責任ですので、お嬢様はお気になさらず」


 そう言われても、気にせずにいられようか。


「獣人が嫌というわけではないの、ただちょっと驚いただけで…………魔法で奴隷契約をすれば、彼はわたくしを裏切らないのかしら?」

「ええ、それはもう。奴隷契約でも縛りますが、獣人の中でも狼族は、主人に従う性質をもっておりますので」

「誰かを愛したら、その人の為にわたくしを裏切る事はない?」

「嘘をつく事も、裏切る事もない、強力な契約を施せます」

「そう……」


 絶望の表情を浮かべ、ボロボロ泣いている少年。


(ええいっ! これも縁よ!)


 決心し、エリザベートはゴーディに言った。


「では、買います。ごめんなさい、ごねたりして」


 エリザベートの言葉に、ゴールディは『とんでもない事でございます』と頭を下げた。

 

「私の説明不足のせいです。本当に、契約してよろしいので?」

「ええ。彼が裏切らないと聞いて安心したので、お願いします」


 そう言いつつも『本当に裏切らないでしょうね? ヒロインの前では魔法契約も役に立たなかった! とか言わないわよね?』と不安に思ってしまうエリザベートだった。

 



選んで正解! でありますように。

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