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【書籍化決定】悪役令嬢の無念はわたしが晴らします  作者: カナリア55
第四章

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再び王城へ

 王立クリスタル学園は、三年生が卒業してからしばらくは休み期間となる。そして約一か月後、新入生が入り、新しい学年がスタートする。


(と、いう事で、学園が休みなのはいいのだけれど……あれからルークと全然、そういう話ができていないわ!)


 公爵家の騎士団と一緒に訓練をしているルークを見ながら、そんな事を考える。


(ルークはほぼ、騎士団と一緒に行動しているし、わたしはアメリアやマダム・ポッピン達と一緒だし、二人きりになるなんて事はあまり無くて……まあ、アメリアに話してしまえば、三人の時に話ができるけれど……ルーク、以前と変わらない態度なのよね。あの時の事、忘れて……いえ、忘れてはいないだろうけど、あの時は感情が昂ってあんな事言っちゃったけどよく考えたらそうでもないな、なんて思っていたり……って、なんだか、以前も同じような事を考えて不安になったわよね、わたし)


 ブンブンと頭を振る。


(もー、どうして毎回こうなのかしら。全然進歩がないわ。あの時口づけできていたら、少しは安心できたのかしら。でも皆が入って来たし、レオンハルトの怪我を治さなくちゃいけなかったし……)


「エリザベート様?」

「え? あ、なに?」


 アメリアに名前を呼ばれ、慌てて返事をする。


「訓練が終わったようです」

「え? あら! そうね。嫌だわ、ボーっとしちゃって」

「大丈夫ですか? まだ先日の騒動のお疲れが残っていて、本調子ではないのでは?」

「いえ、大丈夫よ。さ、お茶とお菓子の用意をしなくちゃね!」


 そろそろテントにやってくるであろう騎士達の為に、お茶、菓子、水を用意する。

 そしてこの日もルークとは、当たり障りのない会話をしただけで終わってしまい、がっかりしながら屋敷に戻るエリザベートだった。




 そんな日を繰り返していたある日、城からの使者が公爵家に訪れた。

 使者は、王妃からの手紙を持っていた。


「できれば、お返事を頂いて参りたいのですが」

「ではすぐに書きますので、お待ちください」


 急ぎ、失礼にならない程度の短い返事を書き、使者に渡す。


「エリザベート様、お手紙にはなんと?」


 使者が帰ってから、アメリアが心配気に尋ねてきた。


「王城へのご招待だったわ。できるだけ早く、との事だったから、明日伺う事にしたわ」

「あのぉ……大丈夫でしょうか……お城に行くといつも……」

「良くない事が起きているわね。でも流石に、今度は大丈夫でしょう」

「だといいのですが……あ! 明日お出かけなら、ドレスや装飾品を決めなければ! それと、何かお菓子をお持ちになるのですか?」

「そういえばそうね、期待されているかもしれないし……こうしてはいられない。ああ、明後日にすれば良かったわ!」


 こうしてエリザベートは、慌てて準備を始めた。




 翌日の午後。

 王城へ向かう馬車の中には、エリザベートとルークの二人。

 話をする絶好の機会なのだが、


(いざ、となると、何を話していいのか……)


「……今日は、天気が良くてよかったわ」

「はい、そうですね、エリザベート様」

「えーと……最近どうかしら? 訓練の方は」

「はい、学園が休みで騎士団の皆さんと長く訓練できるので、色々教えて頂いています」

「そう、良かったわ」


(って、毎日見に行っているのだからわかりきった事じゃない! ……こんな事では駄目だわ!)


 意を決して、ルークを見つめる。


「ねえルーク、ちょっと話があるのだけれど!」

「は、はい!」


 エリザベートの勢いに、少し気圧されながら返事をするルーク。


「なんだか、曖昧になってしまっているけれど! わたくし、ルークの事を愛しているわ!」

「は、はい! 私もです、私も、エリザベート様の事を、あ、愛しております!」


 緊張で声が大きくなってしまったエリザベートにつられて、ルークも大きな声で答え、


「はぁ……良かったわ、なんだか、無かった事になっているのかと不安だったから」

「実は……私もそう思っていました」

「そう……あの時は、バタバタしてしまったから……とにかく良かったわ、同じ気持ちで……」


 今度は互いにもじもじしてしばし沈黙したが、


「えーと……じゃあ、わたくし達、そういう仲に……いずれは結婚をする、という事で、いいのよね」


 再びエリザベートが口を開き、キラキラと目を輝かせて尋ねたのだが、


「いえっ! それは!」


 ルークが慌てて首を横に振る。


「それは無理です!」

「そんなっ! どうしてよっ! 愛してるっていうのは嘘なの!?」

「いえっ! エリザベート様の事は愛しております、本当です。でもエリザベート様は公爵令嬢で、僕は奴隷です。結婚は無理です」

「確かに、今のままでは難しいと思うわ。どうしても無理なら結婚せずに、このままでもいい。けれど、できる事なら結婚したいの」


 ルークの気持ちを再確認できず、悶々としていたここ数日。

『ルークと結婚するにはどうしたらいいのかしら……って、そもそも本当に愛されているの? こうやってワクワク考えていて、やっぱり違いました、なんて言われたら、ショックが大きいわ。冷静に冷静に……やっぱり公爵家から独立して、新居を構えたい……って! だから! その前にちゃんと気持ちを確認しないと!』などと、複雑な感情でいたが、


(ルークの気持ちを確認できた今、心置きなく考えたいわ!)


「今、ルークはわたくしの奴隷で、わたくしの物だわ。でもそうではなく、対等の立場になりたいの。そうでなければ……ルークが奴隷だから、主人のわたくしの事を愛していると言っているのでは、と思ってしまうかもしれない」

「そんなっ」

「ルークの気持ちを疑っているわけではないけれど、何かあった時、多分不安になると思うの。そしてそれは嫌なのよ。だから、結婚したいの。その為にはどうしたらいいか考えて、努力したの!」

「……エリザベート様と結婚なんて……そんな事……私なんかが、望んでもいいのでしょうか……」

「望んで欲しいわ! お願いよ、ルーク」

「う~~~」

「唸っていないで、わたくしと一緒に頑張ると言ってちょうだい!」

「んんん……」

「わたくしの事が好きならば!」

「好きです!」

「ではお願いよ!」

「う―――はい! 頑張ります! エリザベート様と一緒にいられるのなら、なんでもします!」

「っっ! ありがとうルーク!」

 

 感極まって、揺れる馬車の中、エリザベートは向かいに座るルークに抱きついた。


「危ないです! エリザベート様!」

「でも、ルークが守ってくれるでしょう?」


 慌てて抱きとめたルークに、エリザベートはそっと、軽く触れるだけの口づけをした。



王妃へのお土産は新作です。

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