2話 西都イスカンダル
もうさ、外に出たくないよね、殺人的猛暑だからさ
世界は厳しいよ
「.....はぁ。」
こんにちは、マグです。
今日は森の奥からお届けしております。
昨日勢いでワックワクで飛び出したんですが...そこから記憶がありません。
あれ?俺あのまま西都に行く流れだったよね?なのに目を開ければ辺り一面真緑!
あれれ?おかしいね? つーかここ何処だよ、西も東もわからん。
すると前方から金髪の美少女が恐る恐る歩いて来た。
「.....目が覚めましたか?」
あら?私この娘といつ話したのかしら?
えーと...確か.....。
あー。そうだった。
口角が緩み切ってゆるキャラだった俺は前も見ずに”何か”とぶつかったんだった。
どーしよっかなぁ.....女子と話した事なんかねぇよ。
「あの、聞こえてます?聞こえてたら返事してくださーい」
「き、聞こえてるけど、俺はお前のどの部位にぶつかったんだ?頭?ケツ?」
俺は一体何を言っているのだろう。
「違いますよ、貴方は翼竜にぶつかりました。」
「今なんて言った?ラッキースケベじゃないのか?」
「はい、ラッキーなんとかではありません、貴方は翼竜にぶつかって気を失っていました」
「そうかぁ.....胸が良かったなあ」
「それどういう意味ですか?!」
「おっぱいにぶつかって気を失ってみたかったって言ったんだ、大丈夫か?」
「頭をぶつけてどうかしてしまったんですね、良かった。」
「いや良くねえよ!失礼だろ!」
「貴方こそ助けてもらってそんな事を言うなんて失礼ですよね!」
「誰が!誰に!助けて貰ったんだ?!」
「貴方が!私に!助けられたんですよ!?」
「お騒がせしてすみません」
あーそういう事ね完全に理解した!!、やっちまったなぁ?!?!?!
「うむ、分かれば宜しい。私の名前はセレナ、貴方は?」
「マグだ。」
「質素で粗末な名前ね。」
「」
何も言えない、言える訳ない、数時間前の俺ならきっと怒り狂っていた。
「ッスー....大変恐縮ですが....西都イスカンダルまで案内して貰っても良いですか?...」
「ええ、私も用事が済んだので良いですよ」
「用事?」
「翼竜の討伐です、貴方がぶつかってくれたお陰で討伐が済みました」
「ああ、なるほど笑」
「報酬の半分を分けてあげます、どうせ無一文ですよね?笑」
「はい。」
「じゃあ翼竜を担いでくれる?輸送費を掛けたくないの。」
「...はい。」
とは言ったものの、重すぎて男の俺でも担げない。
ただし、能力を使わなければ。
「オーバーライト」
呪文を唱えて魔力を練る。
その魔力を翼竜の死体に刷り込む...!
一瞬翼竜が眩しく光ると、空気のように軽くなった
「どっこいせ。」
軽々と翼竜を持ち上げた
「じゃあさっさと行こうぜ、案内してくれよ。」
「すごい!!!どうやってやったの?!?!?!」
正直これほどまでに驚くとは思わなかったが、とりあえず都合の言い様に説明した
「俺の腕を魔力で補強すればこのくらい造作もないぞ。」
違う、翼竜を軽くしただけだ。
だがこう説明した方がかっこいい。
「なにそれ!魔法を使ったの?!?!?!」
都合の良い様に信じてくれた。
「アア、ソウダゾーマホウヲツカッタンダヨー」
「すごいすごい!今度教えて!」
「ウンーイイヨー」
まぁ多分俺しか使えないけど、内緒。
「じゃあ行こうかキリッ」
こうして俺"達"は西都イスカンダルへと足を運ぶ.....
やっと門が見えて来た、あれからどのくらいたったのだろうか。
めちゃくちゃ歩いたのにセレナはピンピンしている、嘘だろ?やっぱりお前も頭をぶつけたんじゃないのか?
「さあ!着いたわよ!西都イスカンダル!」
「ばぁぁぁぁやっどづいだ!じぬがどおもっだ!」
「男のくせにこのくらいで音を上げてんじゃないわよ!さっさと入るわよ!」
最近の若者は元気が良すぎる。
「やずまぜで!じょっどやずまぜでぇ!」
セレナはスキップしながら、俺は干からびながら門をくぐる。
「ここが、西都イスカンダル.....」
綺麗過ぎる街並みに俺は心を打たれた。
足元には石のタイルが敷き詰められており、植木の手入れはしっかりと施されている、沢山の家が建ち並び、家ごとに違う色、違う花が植えられた花壇が並び、大人たちは優雅に紅茶をのみ子供達は楽しそうに駆け回る。
「丁度皆が昼休憩をしてる時に着いちゃった、ほらほら!早くギルドに行こうよ!」
「お、おう」
「ぼーっとしてないで早く行くよ!」
腕を掴まれ、引っ張られながら歩く。
「はぁぁぁぁぁ?!」
「もう一度言いますが、翼竜は中型ではなく大型の場合に100000Gの報酬が譲渡されます。」
「じゃあ中型はいくらなのよ!中型は!」
「1頭につき5000Gです。」
ここで一度話を整理しよう、冒険者セレナは翼竜1頭につき報酬10万Gの貼り紙を見て、翼竜を倒して銭ころを稼ごうと出発した、すると俺が翼竜に勢い良く、そして運良くぶつかり並んで倒れていた所を発見、自分の手柄にして働かずに金を稼ごうとした。
しかし、10万Gは"大型"の翼竜1頭の場合のみである
今回運良く手に入ったのは"中型"の翼竜、貰える報酬は当然減るだろう。
そしてもう一度言っておこう、翼竜は"運良く俺がぶつかったおかげで"手に入ったのだ。
「私が汗水流して翼竜を討伐してきたのよ?!その報酬が5000Gなんて!」
「おい馬鹿、お前は何もしていないだろ、翼竜が手に入ったのは俺がぶつかったおかげでだろ?
お前がした事と言えば、俺の世話と罵倒だ」
「では5000Gの報酬を譲渡します。」
「嫌よ!私は10万を手に入れるの!」
「もうやめとけ、そもそもお前が貼り紙をよく読んでおけばよかったんだ」
「うわあああん!私の10万〜!」
「やめろ!受付のお姉さんが困っているじゃあないか! じゃあ5000G頂戴しますね」
「は、はい。」
「ま、まあ良かったじゃねえか、5000G手に入ったんだし。」
「駄目よ!これじゃ割に合わない!泊めてあげるから貴方も冒険者になりなさい!」
「いや、なんでだよ」
「つべこべ言わずに働け〜!!!!!」
「はぁ、もういいよ、そういう事にしよう、わかったから喚くな」
「ふふふっ また儲けられるわ〜!!!」
「あ、報酬は半分こする約束だろ?2500Gきっちり貰うからな」
「あ、、、、、」
俺は2500Gを奪い取った。
「俺は冒険者を死ぬまでやるつもりは無い、ある程度金を貯めて東都へ行くつもりだ」
「わかったわ!」
セレナは首を上下に振りまくる。
「それじゃあ泊めてもらうことにするよ」
「良いわよ、着いてきなさい」
「ここ、魔法学校じゃないか、お前学生なのか?」
「ええそうよ、同じ部屋で寝る事になるわ♪」
「マジか、わかった。」
もうなんでもいいや笑。
それからまあまあ豪華な食事を食べて、勿論別々に風呂に入り、俺だけ床で寝る事になった、夏場は床が気持ちいいから別にいい。
明日はいよいよ俺が冒険者になる日だ。
次回へ続く。
今日登場した能力・魔法は、
オーバーライト。
魔力を一点に集中させ、物の重さを"上書き"する、
マグ専用の重力を操る能力を使った技。