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狸だってチートしたい  作者: 林田山菜
1/4

それ、マジっすか

 それは、母から突然告げられた。

コンビニ行ってきて、のノリで。

「ごめん、なんて?」

きっと聞き間違えただけだ。

そうに決まっている。

ファンタジー小説を、読みすぎたせいかな?


「異世界行ってきて、って言ったのよ。」

「……なんて?」

耳の調子が悪いのだろうか?

病院、行こうかな。


「だから、異世界行ってきて、って言ったのよ。」

大事な話があると呼ばれて、緊張していたのだが、

まさか冗談だったなんてな。


ネタバラシ、まだ?

え……嘘だろ。


「あなたには言っていなかったのだけれど、小学生の時

あなたが読んでいた本、全部実話よ。」


……はい?

じゃあ今でも読み返す大好きなあの本、

(勇者ぽんぽこ)は実話だった?


あははははは

……いや、笑えねえ。


じゃあ(賢者信楽(しがらき))も実話?

うーん……

訳分んねえ。


「明日の朝、家の地下室にある転移陣で

送るからね。」

そう言うと母さんは、奥の部屋へ行ってしまった。


これって、夢……

ふと思い出す。

そうだ、夢落ち!!

よくあるやつ!!

早速ほっぺをつねる。


それはもう思いっきり。


痛ってー

めっちゃ痛い!


「母さん!!」

「どうしたの?」

振り向いた母さんにダメもとで聞いてみる。

「ネタバラシ、まだ?」

俺は今、人生すべての運を使ってでも、

冗談だってばれてたんだー、の一言が聞きたい。


「怒らないから、本当のことを教えて!!」


「実はね……」

神妙な顔で戻ってきた母さん。


キター

冗談でしたーのネタバラシの予感。

さあ、早く。

冗談だったと言ってくれ。

母さんも、ふざけたかったんだろうな。

うんうん。


「あなたは、魔物になるのよ。

でもね、大丈夫。今ままで生きてきた記憶は残っているからね。」

神妙な顔から、一転笑顔になる母さん。


はい?

大丈夫じゃないんすけど。

逆にどこが大丈夫なの?

教えて!!


……ネタバラシ宣言、カモーン。

ああ、そうなのか。

俺は魔物になるのか。

ゴブリンか、それともオーガか……


「あなたを送り届けるために、色々と準備があるから

もう行くわね。」

そう言うと母さんは、俺が考えている間に

今度こそ奥の部屋へ行ってしまった。


「はあー」

大きなため息をつく。

落ち込んでいてもダメだ、それは分かっている。

これが現実だと分かった以上、沢山今のうちに

すべきこともあるだろう。

それでも今は、じっとしていたい。

もう一度大きなため息をつくと、俺は自分の部屋に戻った。




あれから一時間くらい経った。

まだ整理しきれていないものの、少し落ち着いてきた。

衝撃の連続で忘れていたが、家の地下室に

転移陣なんかがあったんだな。

いや、それも衝撃か。


今までずっと地下室への立ち入りが禁止されていて、

不思議に思っていたが、そういうことだったんだな。

そこに関しては、スッキリした。


今やるべきことを考えてみたが、思いつかなかった。

多分沢山あるんだろうな……


あいにく俺はボッチだから、別れを誰かに言う必要もない。

……自分で思って、少しむなしくなった。

このことを考えるのはやめよう!


もうあのゲームもこのゲームも、できなくなるんだな。

最後に少しと思い、テレビの電源をつけ、ゲームを開く。

この起動画面も、見るのはこれが最後になるのか……



「ご飯よー」

もうそんな時間か?

時計を確認する。

七時半、か。

少しだけ、と思っていたが、結局長く遊んでしまった。


階段を降り、リビングに行くと母さんが沢山の料理を

テーブルに並べていた。

その中には俺の大好きな、ハンバーグもあった。

更には、いつも帰りが遅い父さんも食卓の席にいる。


「明日はあなたの旅立ちの日よ。

母親として、盛大に祝わなくちゃね。」


「ありがとう、母さん。」


「明日が旅立ちの日か、お前も大きくなったな。

明日は重要な会議があるから見送りはできないが、

頑張れよ。」


「ありがとう、父さん。」


「さあ、早く食べましょう!!私お腹空いたわ。」


この日の夕食は、いつもの何倍も楽しくて、何倍も

美味しかった。

母さんの作る大好きなハンバーグがもう食べられないと思うと、

少し悲しい。

でも、明日からの日々をちょっとだけ頑張れる気がした。



ピーピーピー

目覚まし時計を止めて、伸びをする。

朝が来てしまった。

着替え、朝食を食べにリビングへ行く。

変な夢を見たな、という気分だが、これは多分現実だ。

「おはよう。」


「あら、おはよう。起きる時間、早いのね。

てっきりギリギリまで寝ていると思っていたわ。」

現実だと分かってなお、一応確認しておく。

「そりゃあ学校行かなきゃだし。」

「何言っているの、今日は旅立ちの日よ。

昨日言ったじゃない。」


やっぱり夢じゃなかった。

「二時間後に、地下室に来てね。

昨日も言ったと思うけど。」


「分かった。」

あと数時間しかないと思うと、少し怖い。

そう思うと一日前に知らされていただけ、

俺はましなのかもしれない。


賢者信楽なんて、突然異世界に召喚されたのだから。

でも、それでも怖い。

俺が不安になっていることを悟ったのか、母さんが

笑顔で言う。


「大丈夫、転移はしっかり成功させるからね。」

そこじゃない!!

その言葉が出かかったが、何とか収める。

「ありがとう、母さん。」


でもよく考えてみたら、少しワクワクする話じゃないか。

勇者になって、魔物を狩って、それで魔王も倒して……

あ、そういえば俺、魔物になるんじゃなかったっけ。


ダメだ、これも考えちゃいけない。

むなしくなる。

何か楽しいことを……

そうだ!

なる魔物は選べるって昨日母さんが言っていたし、

何になるか考えよう!


でもそれには、母さんに聞いておかないといけない

事がある。

「母さん!」

「どうしたの?」


「俺が行く世界って、どの本の世界?」

もしかしたら、読んだことのない本の世界かもしれない。

勇者ぽんぽこか、賢者信楽の世界であってくれ。


「勇者ぽんぽこの世界よ。」

やったー!

異世界に行くのは嫌だし、魔物になるのも嫌だ。

でも勇者ぽんぽこの世界なら、まだましだ。


勇者ぽんぽこの世界に行くのが、昔の俺の夢だった。

今は違うとはいえ、昔の夢がかなうんだ!

あわよくば、勇者ぽんぽこに会ってみたい……


ある程度強くないと、勇者ぽんぽこになすすべもなく

やられてしまうから、強い個体からスタートしたいな。

今まで読んできた本では、出てくる魔物の種類が違ったりする。


ゴブリンがいない世界もたくさんあったし、

一般に弱いと言われているゴブリンが、

魔物の頂点に君臨していた話もあった。


読んできた全ての本の中で、一番強かった魔物は

ドラゴンだ。


しかし話によって、ドラゴンを魔物とするかどうかは

変わっている。

読んできた話のほとんどが、ドラゴンは魔物ではなく

ドラゴン族として扱われている。


勇者ぽんぽこの世界のドラゴンは、ドラゴン族扱いだ。

ドラゴンになれるかは怪しいな……


「早く食べないと、ご飯冷めちゃうわよ。」

おっと、何になるか考えていたら、時間が経っていたようだ。

もっと、考える、時間を、くれ!


まあ冷めたご飯は美味しさが半減してしまうので、

いただくとしよう。

時計を確認すると、もう十五分も経っていた。

これが後七回しかないと思うと、悲しい。

母さんの作るご飯を食べるのも、これが最後になるだろう。


地球に別れを告げるのも、もう少しだな……



ご飯を食べ終わると俺は、再び何になるかを考えだした。

時間が迫っていると思うと、落ち着かない。

熟考一時間の末、俺はオーガになると決めた。

単純にぽんぽこの世界で二番目に強い魔物はオーガだからだ。


なぜ二番目かって?

それは戦闘に一番向いているのがオーガだからだ!

というのも、一番強い魔物は倒すと、倒した者は呪われる。

その呪いとは、三十分後にその者は死ぬ、

という極めて強力なものだ。

倒すことはできる、でも倒すと死ぬ。

共倒れになるから、どんな生物も手を出さない。

故に一番強いのだ!


しかしステータスは低く、ろくな攻撃方法もないため、

俺はオーガになることにした。

勇者ぽんぽこも、オーガには苦戦していたしな。


なる魔物も決まったし、後の時間は自由だ。

せっかくなので、部屋に戻り勇者ぽんぽこを読み返す。

何回も読んでいるせいで、本のページが破れている。


初めて読んだ小説が、勇者ぽんぽこだ。

そして小説にはまりにはまり、賢者信楽を筆頭とした

沢山のファンタジー小説を読んできた。


宿題そっちのけで本を読んでいたら、母さんに怒鳴られたっけ。

色々と思い出していると、母さんが俺を呼びに来た。

「もうそろそろ時間よ、心の準備をしておいてね。」

「分かった。」

内心、心の準備とか言うなら、もっと早いうちに

言ってほしかったが、そこは置いておく。


緊張はするが、やるしかない!

後十五分で魔物になるんだ。

深呼吸をしてから、俺は地下室へ行った。




……ナニコレ?

奥の部屋に入ると、そこには母さんがいた。

「よく勇気を出して来たわね。」

「う、うん」


勇気とかの前に、この部屋についての説明してほしいんだけど。

そりゃあさ、転移陣なんて物がある時点で説明求むだけどさ、

何でこんなに石が転がっているの?


床びっしりに敷き詰められた光っている石。

石が光るってヤバいよね、うん。


「母さん、この石、何で光っているの?」

「ああ、その石は神石(しんせき)って言ってね、

神様から転移のためにもらったのよ。」


新事実!母さんは神様に会っていた。


「あら、もう時間ね。その陣の上に立って。」

「え、もう?」

「早くして!」

「分かった。」

陣に向かい歩き進める。


「転移したら十三番目の神様の所に行ってちょうだい。」

十三番目の神様?

十三番目、十三番目……

記憶しながら進み、陣の上に立つ。


「じゃあ行くわよ!転移、開始!!」


母さんがそう言った直後、俺は光に包まれた。

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