64 鬼面の少年再び
「………この辺だったかな〜っと、いた。」
ノーマの視線の先には先日会った半鬼面の少年が居た。
「ン。もう来たのカ。あの面白い王子はいないのカ?」
「ああ、彼は少々体調不良でして。………早速で申し訳ないのですが、質問を一つ。やって来た者、もしくは殺した者が言った名で、テュファンと言う者は居なかったでしょうか?」
「テュファン……?アア、居た。今朝方来たなァ………全員同じ仮面で薄気味悪かっタ。隊長の様に扱われていタヨ。」
「隊長の様に、ですか。………もう少し情報が欲しいのですが……殿下が居なくては…引き出せそうに無い…………出直しましょう。また来ることにします。」
「フム……まぁ待テ、城に行ってやろう。情報を渡す。得物は持って行かない、だが鬼面は付ける。人を自分から傷付ける様なことはせんよ。それでいいなら行くぞ。」
ノーマは狐につままれた様な表情をして、笑った。
「ありがとうございます。では———「それはぁ、やめて欲しいですねぇ〜」
「…………今日は、やけに客人ガ多い」
少し間伸びした声の方向を見ればそこには、仮面を付けた人が立っていた。
「どうも、こんにちは。初めまして。訳あって名を明かす事は今は致しませんが、クローウンの…えぇと……何だったっけ?」
「「………………」」
少し憐れむ様な目を前から二番目に居るフードの仮面に向ける。
「ああ、そうだ。クローウンの泣き笑う仮面です。名を名乗った方がカッコいいんですけどね。組織内で呼ばれている方でお許しくださいな。」
いや別に聞いてないし、と考えているであろう二人に、仮面の女は続ける。
「私達はですね、勧誘しに来たんですよ?貴方方の様な手練れを。我が組織の目的はこの世界の改正。我らが主が統治し、戦争無き、平和な場所を創造する。非論理的だと思うでしょう?でもね、私は操られているワケでもなく、脅されているワケでもない。私の意志で、此処にいるんです。…………とまぁ、少々関係の無い事も話してしまいましたが、理解して頂けましたでしょうか?つまり、我が組織への勧誘、そして危険の排除。それが今回私に課せられた指示なのですが……貴方方はどうなさいますか?」
笑っている仮面で笑えない事を言う彼女の言葉は本気だと殺気を叩きつけられた。
「言っておくガ、俺はお前らが不快だったから潰しているだけの事。それをどうこう言われようト、俺にハ関係無い。」
「ええ、今までのテュファンさんの行動は私も知りませんでしたし、だからといってそれについて無関係と割り切る事もしません。ただ一つ。敵か、味方か、どちらに付くかを問います。それだけの確認をしにきただけですよ。今ここで私を殺すと言うのでしたら…………」
「言ったとしたラ?」
「…………………どうしましょう?」
「「……………………」」
「何ですか、その憐れむ様な目は!?」
慌てるように腕を振り回す泣き笑う仮面。微笑ましいのはその動きだけで、周りには被害が出ている。主に部下の方面に。
泣き笑う仮面の手からは魔法が連発され、周りの木々への被害が拡大している。後ろに控えていた部下達はさも当たり前かの様に魔法の範囲内から下がり、念のためか水の盾を構えている。
手がつけられないとはこの事か。暴れる仮面女を見て部下達は少しずーつ下がっていく。
「…………おやおや、私ったらまたやらかしてしまいましたか。いつもお手数おかけします、補佐官さん。」
仮面の下ではニコニコしているであろうその顔を遠く離れているフードの仮面に向ける。
「……………アヤノ。この名に心当たりは?」
ぴたり、とニコニコ振っていた手が止まり、ゆっくりと発言したノーマの方を見る。
「さて、知りませんねぇ。我が主に聞けば一発で分かると思いますけどぉ、一幹部の私に分かる事なんて………」
うーん、と顎に添えていた指が動き出し、自分の仮面の中央に触れる。
「自分は記憶喪失の様なモノでしてね?先程貴方が言った名前の方が自分かもしれないと言うことはあるかもしれないし無いかもしれませんけどぉ……」
左手が腰に差してある刀に触る。
「我が主に頂いたこの仮面、クローウンの一員として自ら全てを外す事はございません。王都のギルド長でしたら対面する相手の命、奪ってみては?」
仮面を少しずらし、口元を覗かせた女。その青く塗られた口はニヤリと歪み、彼女を中心に膨大な魔力の渦が出来ている。
「さて、どうしますか?ロッサ王国王都冒険者ギルドのギルド長、ノーマ・テルトハル殿?」
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