63 医務室
結構短いです。
「あーてる……アーテルは…?何でいないの……約束…したじゃん……」
城の医務室に運ばれ、意識を失っていたティアルは手を伸ばした。何処かに伸ばされた手は虚しく空を切り、諦めたように下ろされる。
その手を握ったのは側に控える少年だった。
少年は暗い顔をしながらもティアルが目を覚ました事による喜びを瞳に表していた。
「アーテル………ねえ…どこにいるの………何で僕の前から消えたの……?」
「……アーテルさんは、“一度実家に戻る”と言っていました。ちゃんと、帰って来ます。きっと、多分……」
「一応病人なんだから。変に不安にさせないの。」
王子が目を覚ました事を感知したのか、戸を開けて部屋に入り、ツムギを小突く。
「目を覚ましたようで、なによりです。申し訳ありませんが、王よりこちらの書類を預かっております。勉強、と言う名目ですが、わかりますでしょう?今回の火事の後始末をお願いします。」
「………ノーマさんこそ、病人をもう少し、気づかって下さい。」
「………………………………。こういうのは勢いなんだよ。」
「今の間は何ですか。間は。」
くっ、と笑い声がし、二人揃ってその方向を見る。
「分かった。仕事はする、アーテルは待つ。そして、第一王子として相応しい言動を心掛ける。これで良いだろう?………普段のお忍びは止めないからな。」
「ふふ。それで良いですよ。けどまぁ、仕事の中には今後の国にも関わって来るので。暫くは仕事に追われるでしょうね。」
うむ……とティアルは思案する。
「クローウン、だったか?仮面共の組織は。」
「仮面?それは!どんな、仮面でしたか!」
「? こう……目尻が上がっていて……眉が困っている様に曲がっているんだ。笑っているようで…奇妙だったな。」
「そうですね。ツムギ、それがどうかしたかい?」
「っ………テュファン……鬼面の少年に、そのような名前を、連中が出していなかったか、聞いて下さい。」
怒りに染まった表情でツムギは言った。
「…………分かった。では、殿下はお留守番で。ツムギ、名付けした精霊様を喚んで稽古を付けて貰いなさい。体術は……夜の精霊様が良いかな。武器はそろそろ届くよ。僕の権限で色々お願いしているし、分からない事があったら空に向かってラナウ、と名前を呼んでごらん。質問は?」
「「…………無い(です)」」
「宜しい。じゃあ、色々聞いて来る。」
そう言い医務室から出ていった彼は、城からその姿を消し、迷いの森のすぐ傍までやって来ていた。
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