62 鬼面の少年
(………!気配を感じなかった……!!)
「ンー………?今までト違うナ……誰ダ?」
「……自分はロッサ王国王都でギルド長を勤めている、ノーマ・テルトハル、です。」
「ギルド長……アあ、理解。仮面共とは無関係か?」
「そういうことに、なりますね……そもそも自分達もこの仮面達の正体が分かりません。」
「そいつらハ“クローウン”と名乗っていタ。どっかの国の言語で“道化師”ヲ意味する。四種類位、仮面があって楽しかったゾ。まぁ、殺したガ。」
いつの間にか水の玉の上から降りていたティアルは、恐る恐る言葉を放った。
「失礼ながら、貴方はこの森で何をなさっているのでしょうか。そして、そのクローウンとやらの情報が欲しいのです。」
鬼面の少年はティアルの方をじっと見て、笑みを溢した。
「殺している事にハ動じないノだな。肝の据わった王子ダ。気に入った。クローウンがどんな地位についていルのかハ知らないガ、神が手掛けるべき事、教会ノ言う、禁忌に手を出している。今日はこれだけ教えてやろウ。」
鬼面の少年は自分の心臓に指を向ける。二人が理解した事を感じると、呪文を唱えた。
「また来るガ良い。次は俺について教えてやル。森は焼き払うなヨ。」
紫色に光る線がノーマ達を縛る。
「じゃ。」
短い見送りと同時に二人の体が放り出された。それはそれは高く、……まぁ一瞬だったのだが。
ティアルが瞬きした後には、見慣れた城の前だった。
「は………はぁぁぁ!!??」
「うーん………どうやっても解けなかった縄がこんなにも簡単にほどける………条件付きで限定的に具現化させたのか?」
「いや、ノーマさん!そんな落ち着かないで!?いや落ち着いてるのは良いことなんだけどさ!?転移魔法!!転移魔法だよ?!」
「や、僕もアヤノも使えるし。」
「はあああああぁぁぁぁぁぁ!!??」
「何事だ!!──??王子殿下!?」
「転移魔法…?……二人も……途絶えたはず………とうの昔に……僕の代で………」
「………すまない、混乱しているようだ。アーテルさんには知らせておくから──」
「主!!ご無事で!!」
「大丈夫、ですか!」
「…………知らせる必要は無いみたいだね。えっと、街に火を放った愚か者は、迷いの森で死亡を確認。森で暮らしていたと思われる少年と遭遇。その後、火を放った者と殿下を拐かした者の所属する組織の説明を受け、此処に飛ばされました。」
「え、組織ぐるみの犯行、だった、と?」
飛ばされた事には動揺しないんだね、と遠い目をするノーマ。アーテルは自分の主をお姫様抱っこで連れていこうとしている。
「ちょっとちょっと、アーテルさん。何事も無いように連れていかないで下さい。鬼面の少年に説明された話ではその組織は禁忌に触れているとか。誘拐未遂犯もどうせ自殺したんでしょう?Sランク冒険者が失踪した理由もそれに関係あると思うんですよ。」
アーテルは止まり、話に耳を傾ける。
「殿下を心配なのは分かります。ですが、組織を知り、倒さなくてはこれからも何かあるかもしれない。大切に安全な場所に居るだけでは殿下も何も変わりません。」
「…………分かっています。ですが……自分も…主に何かあると、耐えきれないのです……だからツムギ君に……お願いした……いいえ、押し付けた……自分は、そろそろ……表舞台から消えますので……安心したかったのです……」
そう言いながら彼は自分の腕の中にいる存在を抱きしめる。その目は、何かを求め彷徨う迷い子の様で、悲しみを宿していた。
「………元々ツムギは学園に入れる予定でした。失踪したSランク冒険者もそれを望んでいましたから。」
「…………それでも…────!!!ぅ………ぁが……!」
突如苦しみだしたアーテルは、ごめんなさいごめんなさい、と呟きながら腕の中の主をノーマに預ける。
「一度、実家に……戻ります───どうか、主を────」
アーテルの足下から黒い影が立ち上ぼり、彼を包むように動く。
一瞬、闇が国を覆った。
国内で一人だけが反応したソレはアーテルを飲み込んで満足したのか、地面へと沈み消えていった。
一部始終を目撃した者達は唖然とし、城の門から兵がやってくるまで動くことが出来なかった。
◆◆
「………………。なんでしょうか、今の。悪魔でも顕現しましたかね?まぁどうでもいいですけど。」
仮面を被る女は一人、呟いた。誰にも聞かれないその異様な発言は闇へと消えた。
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