60 祭りの最中
「わああ!凄いです、ね!」
王都の中央付近に位置する広場は大盛況だ。
綺麗な音が鳴り響き、それに合わせて踊り子が舞い、炎や水の玉が空を踊る。多くの花が都市を彩り、人々を笑顔に変えて行く。
「あ、お兄様、花冠が売っていますわ!花も選べるのですって!」
「へえ……どれにしようかな……」
「僕がプレゼントしましょうか?」
ノーマがニコニコしながら聞く。アーテルにもねえ?と尋ね、了承を得た。花屋の奥さんに「キクの花冠を二つ。」と注文し、さっさとその場を離れる。
「どうしたんですか、ノーマさん。」
「んーん?それより、ティとユアはついてきてる?」
「ここにおりますわー!」
「ん。僕も此処。」
人混みの中でお互いに確認し合い、歩き出す。
ちなみに“ティ”と“ユア”は王家の二人が居ることがバレないよう、子供達でつけた偽名である。
「アーテルさんにはお使いをお願いしたから、広場の方で待っていようか。」
◆◆
「……依頼人は?」
「ぐはっ………」
人が賑わう大通りから外れた裏路地で、争いと呼べぬ一方的な暴力が振るわれていた。殴られている男達の自業自得であるが。
「ほら、早く言わなくては。頭が吹き飛びますよ。」
「っ………伯爵家……」
「ふむ……マークトスですか。予想通りと言えばそうですね……」
みしみし、と男の頭から音がする。
片眼鏡をかけ、執事服を纏う者はパッと男の頭から手を離す。腕を大きく広げて、告げた。
「また、我が主を狙うようでしたら、貴方とその家族を永遠の闇に閉じ込めて差し上げましょう。貴族だろうが、他国の者だろうが、大きな組織の者だろうが、関係ない。主に邪な感情を抱く者は全て、闇に還しましょう。」
警告と言うよりか、自分に言い聞かせている様だった。黒く塗られた片眼鏡が、発された圧で割れる。
「おや……もう時間ですか……。では依頼主にお伝え下さい。“次は無い。闇に還してくれよう”とでも。」
くるりと向きを変え、大通りへと歩く執事。懐から手慣れた動きで予備の片眼鏡を出して掛ける。
広場で待っているであろう自分の主を思い浮かべながら歩くが、その足取りは焦っているように、段々と速くなる。
大通りに入り、彼が目にしたのは、人々が逃げ惑い、あちこちから火の手が上がっている、祭りとは思えない悲惨な場所だった。
◆◆
「げほっごほっ………う……ツムギ、っ……!」
「アル様、僕は、此処に居ますから、……は!?」
火の手が上がり、混乱が祭りを支配する。昼前だからか、広場には人が多く、他の場所よりも悲鳴が多かった。
「ふーむ……これは少し不味い事態だ。アヤノに叱られる。ギルド長としても面目が無くなるねぇ。……此れに乗じて祭りに来ている王家の者を拐かすのか……それとも殺すのが目的か……?」
ゆっくりと歩きながら思案する男。守るべき者とはぐれたのだが、それを心配する素振りすら見せない。
「ノーマさん…!助けて!」
「あいよー」
自分に救援を求める声が聞こえ、その方向に向かって歩き出す。焦りも無く、少し笑顔でいるその余裕は何処から来るのやら。
「ノーマさん、アル様が……!アル様が!」
「うんうん、分かっているよ。見えているから、そんなに叫ばないでおくれ。」
広場から見える城とは正反対の方向に指を向け、何かを唱える。
ツムギの方向を見て、
「落ち着いたかい?少年。アーテルさんが此方に来ているから。ティは無事で、誘拐犯は捕まえた。ユアは隣で煙吸っちゃって気絶しているのと、火はほとんど消化している。伝えておいて。」
そう言ってジャンプし、浮かばせた水の玉を跳んだ。座り込んでいるツムギは呆然としている。近くにやって来たアーテルにも気づかない。
水の玉を出し、その上を軽々と跳ぶその様は何処かで見た事がある気がして、目が離せなかった。
軽く自分を救い、沢山の物事を教え、軽く去っていったヒトを思い出して、
無意識にも、呟いた。
「……師匠を、探さないと………」
サブタイトル詐欺になってしまいました……
祭りの描写少なすぎますよね……
一週間位間を開けてしまいましたが、好きな時に書いたり、あまり思い付かなかったりするのでご了承下さい。
ちなみに私は「ストック?知らんがな!」と言った感じです、はい。
お読み頂きありがとうございます。




