56 ギルド
お城の中、アル様の部屋の片付けが終わって、ではまた明後日。と帰ろうとしている僕を、此処に泊まってけば?と引き留めたアル様をアーテルさんが引き留める、というカオスな状態からこっそり逃げ切った僕、ツムギです。
宿は無いので今日はギルドに泊まろうと思います。
はい。僕の目の前にギルドがあります。
えっ?説明が適当?気にしてられません。
ギルドは無一文の冒険者のために夜中も鍵が開けられています。
普段の受注スペースにある諸々は夜、ノーマさんのギルド長室にあり、鍵が掛けられています。
ギルドで盗みを働くバカはいないだろう、とのことで、国の優しさにより泊まれるようになっています。
僕には城に泊まるような厚かましさは無い筈ですので………アーテルさんはどこで寝泊まりしているんだろう。
一応毛皮が敷かれてます。まぁギルドがそこまで優しいとは、僕も思いませんからね。
おそらく、さっさと金稼いで宿に泊まれるようにしろ、とのことでしょう。
僕は一番隅っこの毛皮に座ることにします。
ところで、僕は精霊使いです。
今の所三人の精霊が僕の側にいます。
黒と紫と水色のふわふわです。
紫のふわふわこと、夜の精霊さんはルナさんです。
黒いふわふわこと闇の精霊さんと、水色のふわふわこと氷の精霊さんは、若者だそうで。ルナさんのように名前があるわけでもなく、一度も契約したことがないそうです。
精霊さんには性別が無い、とルナさんが言っていました。自分は人間の女のような名を付けられたから、性別をそう見せているだけだとか。それで他の闇と氷の精霊さんは大精霊?のルナさんに色々引きずられているそうです。
名前は何でも良いとか。気分や天気で決めていいのはどうかと思いますけど。
僕の悩みはその名前決めなんですよね。
本人に聞いてから決める方が僕的には良いと思うのですけど……
一定の魔力を流さないと話せないようですし……僕はまだお二人が話せる程の魔力は持っていませんし……
取り敢えず魔力を流しましょう。一週間位前から続けているんですよね、この作業……
それに魔力を使い過ぎたら寝るんですよ。燃費が悪い……
ルナさんは僕が無意識に纏っているという、僕の魔力をちょっと食べているそうなので、いつも、闇と氷の精霊さんへ渡しています。
もう少しかなぁ………
最近は自分の魔力の限界も分かってきました。ギリギリまで使うとふらふらしてきます。
というわけで寝ます。前に全部使ったら一日寝てたので。ちょうど良く、起きたら全回復です。
おやすみなさい。
◆◆
『……きて……起きて!』
え…と?ルナさんじゃない高い声。それは「起きて」と願っていて…?
取り敢えず目を開けてみる。
黒い服がある。見慣れた、黒いメイド服。ルナさんのもので、その足の隙間からは別の人の足が見えます。ひょこりとルナさんが対面している人を見てみます。
………なんか胡散臭い人ですね。世間的にみれば顔が良いかっこいい人なのでしょうが、ルナさんが僕を守るように位置してますので。僕の敵なのでしょうか?
「おお、起きたか主。こやつがな、主に手を出そうとしたのじゃ。顔が整っておっても主は男じゃろうに。何度その事を言うても聞き入れぬのよ。」
「いや、こんな女顔の男が居てたまるかよぉ。ぜってえ女だろ。いーや、お前からヤる。」
「おお?子童が。妾の主に手を出そうとして止められたら止めた方に手を出すとは。よほど女に飢えているようじゃ。」
「………ルナさん、説明、ありがとうございます。寝込みを襲うなんて、卑怯な動物ですね。どうせ貴方も魔族差別者なんでしょう?貴方の冒険者ランクを教えていただきたいですがね。」
ほんっと嫌だ、魔族を差別する人。
彼が戦ったのは差別者じゃなかったのだろうけど。その後にアヤノさんが帝国兵にぶちギレていたから、あの人達は根っこから差別者なんだろうね。
あ、キルしたくなってきた。アヤノさん、よく耐えたね。僕は今すぐにでも帝国を滅ぼしたいですよ。
「ぬしー?おーいぬしー?」
「あ、はい、ルナさん、大丈夫です、か?」
「おお。妾は大丈夫じゃ。それよりもあの子童、Bランクと言っておったぞ。そっからずっと、しょうもない冒険の数々とやらをわめいておる。どうにかしてくれ。妾は寝たい。」
「ええ、分かりました。コホン……そろそろ良いですかー?」
「あん?なんだ。今俺の素晴らしい冒険を丁寧に教えてやってるんだけどよぉ。俺にぶちこまれたいのか?いいぜ、ヤってや」
ドッ───
単なる背負い投げです。不埒者にやってやれと教えられ、実践してみましたが、どうも……投げ飛ばしてしまいました。
「思ってたより威力がありましたね……コホンコホン。えっと………僕はAランク冒険者、ツムギ。『指導者』アヤノの弟子。ギルドの和を乱す者は、こうだ。」
そう言って僕は首を掻ききるような動きをしてみせます。………恥ずかしい。
物凄く恥ずかしい。
こんなちびっ子にこういう格好いいのは合わないよぉ……
『かっこ……いい……』
ありがとう。誰かは分かりませんが、落ち着かせて下さって……ありがとうございます。
「よし、寝よう。次は邪魔しないで下さいね。魔力回復中なんで。」
ルナさんにお願いもしたし、今度は大丈夫だろう。
とぷん、と音がした気がして、僕の意識は白い世界に放り込まれた。
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