53 教会にて
「こんにちは……えと……教会?合ってますか?」
教会におそるおそる入ってきた少年。カウンターの様な所に座っている女性に尋ねた。
「はい。こちら、ロッサ王国教会です。何の御用でしょうか?」
「え、名前?の届け出、とか?」
「承りました。読み書きは出来ますでしょうか?」
「えあ、……出来ます。」
「それではこちらの紙に名前、これからの職業、適性の属性、という順でお書き下さい。羽ペンは持てますか?」
何か淡々したヒトだ……良い意味で…少年はそう考えながらも、紙に名前と職業を書いた。女性の顔色を見ながら。
名前をツムギ、そして職業を書いた所で女性の表情が少し動いた。
「失礼ですが、この返答に間違いはないでしょうか。嘘であるならば今すぐにでも書き直しを推奨致しますが。」
「あ、本当、です。」
さらさらと自分の属性を書く。女性の目が見開かれた。
その欄には、夜、闇、氷の三つが書かれていた。
「本当の、ようですね。」
女性は手元にある水晶玉をみて言った。
「精霊を今、顕現させる事は出来ますでしょうか?」
「出来ます、よ?」
『おいで』とツムギが呟き、それに答える様にふわふわと舞い降りて来た紫、黒、水色の三色。
「………っ確認、しました。後見人のお名前を。居なくても構いません。」
「……ノーマさん、です。ファミリーネームは、分かりません。」
懐から折りたたまれた紙を出した。ノーマから渡されたあの紙だ。ツムギはそれを渡し、女性は、拝見します。と受け取り、見た。
「………もう一つ、ギルド長様から頂いた物は御座いませんか?」
「えっ?ああ……これ、ですかね……」
白い封筒を見せ、本人に渡す様に言われた事を告げた。女性は席を立ち、少々お待ち下さいと言い、戸の外に消えた。
「君。」
ツムギを呼ぶ声がして、顔をあげた。
そこには帽子を被った白髪の少年が居た。
「うわぁっ!!?」
ツムギが叫び、白髪の少年はビクリと下がった。
「え、あ、すいません!少し考え事を……」
「いや、別に、気にしない。どんな事で悩んでるの?」
「……?お貴族様が、何故此処に?が、今の僕の、一番の、疑問です。」
「……ふふっ面白い解答だ。気に入った。此処に居るのはね、僕の日課なんだ。ほら、僕って白髪でしょ?」
少年は髪を手で弄ぶ。
「生まれつきで、いつもこっそり来てこっそりお祈りして、こっそり帰るの。でも今日は堂々と来てみた。案外皆、自分の事で精一杯なんだな、って思ったよ。……君の悩みは精霊様関係かな?上級……?いや、大精霊様か。……え?!」
自分で言った事に驚く少年。真っ赤な目を見開き、執事を呼んだ。
「参りました。」
「ねえ見てこの人!大精霊様がついてる!うっわ感激!今まで見た精霊使いの中でも最高!用事が終わったらうちに来ない?君の悩みもすぐに解決出来る程の本があるよ!」
「感激するのは分かりますがどうか気を静めて下さい。体調が悪化致します。部屋に招くとしましてもあの本棚のような部屋では御迎えすることが出来ません。」
「………アーテルひどい。」
むすっとした表情の少年だったが、それはすぐに変わり、戸の外を見つめる。
そこには……何か偉そうな太ってるおじさんがいた。
「こんにちは教皇殿。相変わらぬようで。……此処へ来ている事は誰にも言ってはいけないよ。」
カクカクと首を振る教皇と呼ばれた者。
「それで、そなたが精霊使い、と名乗る者かな?」
「はい。」
「よろしい。教皇として、そなたを精霊使いと認めよう。」
「あ……名前の方は……」
「ああ、認める。……して、ノーマから授かった物は?」
「こちらです。一日一錠、と言ってました。」
「おお、ありがとう。」
偉そうだったオーラはその時だけは消え、ツムギの目に見えたのは、胃薬を貰うただのおっさんだった。
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