51 変化と過去
「……………アヤノが居なくなる前に、彼女に変化はあったか?」
「特には……無かったと思うのですが……」
考え込む三人。
「あ………」
「どうしました?ツムギ。」
「うんちょっと待って。少年、教会とかに名前の届け出出した?出さないと国民と認識されないよ?他国から来た冒険者は出さなくても良いんだけどね。出しときなよ、はい。どうぞ。」
「後で出しておきます。それで、ツムギ。どうしたの?」
「えっと、アヤノさん、最近お腹いっぱいになるの、早くなってて、あと、首もとを隠すように、なってた?」
あ、とユテアが思い出したように手を叩く。
「確かにそうですわ!前までは食事を二人分出していても満腹とは言わなくて、でも最近は同じ量でもお腹いっぱい、ありがとう。って言ってましたわ!」
ツムギがそうそう、と相槌を打ち、ノーマは考え込んだ。
「それに加え、アヤノさん、タートルネックと言うのでしたか?それをパーカーの中に着ていて。何か気に入ったのかしら?と気にはしていませんでした。でも…………。」
「自分の身に何かあって首を隠すしかなくなっていたかも、と。」
再び室内に沈黙が訪れた。
「ノーマさんは、何か、知らないのですか?」
ツムギが下を向きながら唸るように出した問にノーマは俯いた。
「僕が知る限り、首に書いてあって消えない物は、奴隷紋しか思い付かない。だが、奴隷紋を刻むのは時間が掛かるし、痛みも伴う。アヤノが奴隷紋を刻まれるのに抵抗しないとは思わないし、自ら受け入れたとしたら隠す意味が無い。」
「アヤノさんの魔力ですと、消したいものはすぐに消せますしね………」
「そうだね……奴隷紋も、他にあるかもしれない紋も、掛けられた方より掛ける方の魔力が多くないと成立しないから………アヤノに紋を刻む場合、アヤノと同等か、それ以上の魔導師でないと………そんな人物に心当たりはないし………」
「あれ?」
ツムギが声をあげた。
その手にあるのは先程の炙り出し紙と火を灯した指である。
「どうした?しょうね……ツムギ。何かあったか?」
「これ……他に何か、無いかと思って……そしたら…」
「広範囲を炙ってみると出てきたわけですか……この文字………知っていますが………」
紙をツムギから受け取り、現れた字を解読するノーマ。
「クックッ。アヤノは心配性な様だ。」
「「?」」
「これをご覧?これはエルフにしか分からない言語だ。よほど他に見られるのが不味い事なんだ、と思うだろう?でもね、書いてある事は「特待生枠でツムギを学園へ」なのだよ。あー面白い。」
「特待生枠?そのような物、ありましたか?」
「あったあった。建設以来存在はしていたけど使う者がいなかっただけなんだよ。まぁアヤノが知っていたのは当然か。初代学園長だったしね。色んな制度を決めたのもアヤノさ。初代の素晴らしい態度のおかげで学園の制度に付け足しも削除も行われていないのさ。すごいよねぇ。」
「ちょっと、待って下さい。アヤノさん、学園長?」
「ああ。これは僕から話していいのか……?」
うーん、と頬杖付いて悩むノーマ。
「まぁいいか。仕事さえ話さなければ。」
そう言ってまだ机の前に立つ少年少女にソファを進め、自分はその前に座った。
「さて、アヤノの秘密。その中では軽い、初代の話をしてあげようか。」
始めた話は誰もが驚く、ロッサ王国初代国王とアヤノの、家族の様な関係だった。
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