50 炙り出し
僕は何故此処に居るんだろう。
隣の席のヒトがじっと見てくる。何も言わずに見てくる。
何の御用ですか?
そう聞きたいけど今は授業中……!関係無いことは話せない……!話したら減点される!
よし。そぉーっと見てみよう。
名前は……リンカさんか。
『ユウナさん、リンカっていうヒトの机を見てもらえる?他のヒトと違う所があったら教えてほしい。』
『りょりょ~☆あ~あったよ☆んとね、ノートが全然進んでないのと、ペンのインクが無いってとこかな☆』
『ん、ありがとう。』
ペンのインクが無い……それでノートを書けないのか……インクは確か……
『ワカサさん、確か黒収納にインクあったよ─』
『はい。あと、リンカ・レイドウだよ。』
…………はや。あと情報をありがとう。
「レイドウ様。こちらのインクをどうぞ。後、僕のノートの写しです。」
あ、ちょっと口角上がってる。ノート大丈夫かな?字汚いよね。
『ツムギの字は綺麗だよ~☆他に比べて、とってもね☆』
『そう。贔屓でもないしお世辞でもない。誇るべき、良いところ。』
「どうもありがとう」
レイドウ様、速いな。
『おおっ。そこの童、記憶系スキルを持っておるのじゃな。結構便利なんじゃが、人族の欲に利用される。しかしそこのはバレない程度に使っておるようじゃの。有能有能。』
ルナさん、急に出てこないで。貴女の声大きいんです。
『ツムギ、前。』
へ?
「ツムギ・□□□□。私の授業で呆けるとは、良い度胸だな。その度胸に免じて、課題を増やしてやろう。なに、今日一日努力すれば終わる。ふふ。」
「ひぇ………すいません……」
笑顔から冷気が………!怖……というよりも課題が増えた………今日の睡眠時間がぁ………
◆◆◆
フィーユ・ルミスク──
公爵家令嬢。
ルミスク公爵家は王国の盾と呼ばれ、民の意見を積極的に取り入れ、奴隷などの闇には全く触れず、裏組織の存在を知る度に、摘発に動く。
民達の人気が高く、その中でもフィーユは聖女と呼称される。
リンカ・レイドウ──
伯爵家令嬢。
代々記憶力が良く、その系統のスキルを保持している。
生まれるのは女児が多く、王家への嫁入りはあるが、他の貴族へは絶対にしない。
領内の者を婿に取り、その血を絶やすことなく、建国以来、ずっと存在している。
現当主は切れ者。
ファノ・ヴァデナス──
ハドジューン学園の教師で、王宮から派遣された。
中性的な外見で、女子生徒からの人気がある。
性別は他の教師でも知らず、王宮での地位も知らされていないが、授業の質が良いのであまり問題視されていない。
◆◆◆
時は遡る───
「アヤノが居なくなった!??」
「「はい……」」
「えっ?君達を残して?」
「「はい……」」
「一緒に暮らしてたんでしょ?」
「「そうなんですが………」」
「うん、取りあえずハモるの止めようか。ちょっとウザい。」
「「はい……すいません………」」
「うん。だからね………。」
ロッサ王国王都ギルド長室で椅子に座って話を聞いたノーマが驚きのあまり机を凍らせた。
あ………、と呟いて氷を溶かしながら質問をするノーマに、対する少年少女達はハモって答えている。
「えっと……いつ頃居なくなった?どっちかが答えてね。」
「はい。ええと……朝、私達はいつも一緒に寝ているのですが、起きた頃にはアヤノさんは居なくて………朝に居ない事は結構あったので、朝食を用意して。ツムギと朝食を食べて、アヤノさんを待ちました。それで……」
ユテアが思い出す様な動作をしながら話し、隣の少年は相槌を打ちながらノーマをじっと見ていた。
「あーちょっと待ってね?それっていつの事?」
「「昨日です。」」
「……………。昨日の朝から異変があったのかな?」
「「はい」」
「アヤノさんは「仕事」と言って半日程開ける事はあったのですが、いつもは手紙を残してくれているのです。それが今日は無かったのでおかしいな、とは思いましたが紙を切らして居るのだろう、と考えまして昼食の準備に……」
「ふんふん、それで?」
「昼食を済ませていつもの鍛練を終えて、アヤノさんが仕入れてくださる本を読んでいました。気づいたら夜で、流石に私達も異変を感じて、部屋中をなにか無いか探し回ったのです。すると………」
ユテアは懐から紙を取り出して机に置いた。
「こちらがタンスにありました。白紙で、夜中議論をかわし、よく分からなかったのでこちらに来た次第です。」
「あ、これ炙り出しだね。少し炙れば何か見えるだろうから、炙ってみて。」
「あ、はい。」
ユテアの隣に居る少年───ツムギは指に火を灯し、紙に近づけた。
すると紙に浮かび上がったのは────
『問題事を片付けます。探さないで、大丈夫。何年掛かるか分かりませんが、また会いましょう。』
部屋にいる三人は息を飲み、その紙を見つめるしか出来なかった。
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