48 ~エピローグ~ 残された者達
「姉さん!!何やって!………………!!」
「あー♡ノアじゃん。久しぶりぃ♡」
空から降りてきたノアに笑顔で手を振るアヤノ。場違いな子供の様な笑顔で、こう言った。
「ねえノア。帝国って、滅ぼしても良いと思う?まだ人間至上主義なんだけど。マジでムカつく。国は腐ってて、兵士は弱い。何で他の国は帝国を滅ぼさないんだろう?」
「…………姉さん降りてきて!ギルドに申告するから降りてきて!」
「あぁ?あーっギルドって手があったか!あははっ帝国滅ぼしていい?って聞いてくる!」
「姉さんっ待ってよ!!…………っノーマ兄!姉さんそっちに行っちゃった!トーヤさんの予測合ってた!私も姉さん追いかける!」
ノアは耳に手を当てて早口で話した。するとノアが指を当てていた黒い物から此処には居ない筈のノーマの声が聞こえた。
『駄目だノア!君はそっちに居るハズの子供達を守るんだ!ギルドにはトーヤさんが居る!大丈夫だからそっちに居ろ!!』
「え?ええと………」
『どうした?何かあったか!?怪我したのか!?』
「いや、そういうワケじゃないんやけど…………もう一人居るんだよ。」
『……………んん?子供二人の他にもう一人居るって事か?』
「……うん。黒いゴスロリメイドがいる。」
『…………………はぁ?』
ノアの視線の先には、黒い髪のゴスロリメイド服を着た女性─────ルナが居た。
「ん?妾がどうかしたか?」
子供二人を抱えた状態のルナはキョトンとした顔で問う。
「ええ?えええ?何々どういう状況??弟君は生きてる?」
青白い顔でルナに抱かれている少年。その指を指す方向には、アヤノが作った死体の山があった。
「あー…………弟君、初めてだったか。しょうがないよなぁ。………姉さんは黒いカード見せたんやろ?その上に魔族罵倒の言葉と来たらそりゃあぶちギレるわ。」
ルナとユテアがこくりと頷き、少年はそれをドン引いた顔で見ている。
「え、っと……黒いカードっ、て何ですか?」
「ギルドカードだけど………?あ、あー!なあるほど!これは報告案件!妾さん、精霊なんだ!姉さんは知ってるの?」
「ルナさんがいることは知っている筈ですの……………っあ!ヴァイヤさんを、探さなくては!!」
「ヴァイヤさん、?あのヒトなら一人でも大丈夫だと思うんやけど……」
「……ヴァイヤの小僧は死んだ。妾が気絶している間にな。」
「ッ?!」
ノアは驚きを顔に浮かべ、ルナの服を引っ張った。
「あのヒトが死ぬ筈がない!!あのヒトは強いんや!アタシでも敵わない位に!!そんなヒトが死ぬ訳がない!!昔の姉さんも敵わなかったヒトやぞ!!何故死んだ!!」
服を掴まれ、怒鳴られていてもルナは冷静に答えた。
「いくら魔族でも、寿命はある。小僧は延命されていたに過ぎん。あやつの生命力は残り僅かだった。それを守る事に使ったのじゃ。嘆き、悲しむよりもそれを褒める方が小僧は喜ぶ。」
「……………は……姉さんでもそりゃあ泣くわ。……あんなに親しかったヒトが…自分が助ける前に……自分がもっと速ければ助けれたかもしれないのに、助けられなかった。………いくら死に触れてきた姉さんでも……」
ルナから手を離し、踞る。
その頬には、涙が流れていた。
◆◆◆
「トーヤ………ヴァイヤさんが、死んだって………」
騒がしかったギルドがピタリと静かになり、視線がノーマの隣に居るトーヤに注がれる。
「…………そう、ですか……だからアヤノは……」
トーヤが目を伏せる。重い空気が漂い、沈黙がギルド内を支配した。
その時、ドアが吹き飛ばされ、
「トーヤぁ!久しぶりぃ!!ついでにノーマも!」
「…………!!?お、お久し振りですねアヤノ。お元気そうで何よりです。」
「うんうん、元気元気!ところでトーヤ!帝国って滅ぼしていい?」
無邪気な笑顔からは想像出来ない程の凶悪な言葉にギルド内の空気は固まり、誰も言葉を発しなくなった。
そんな時、急にトーヤの拳がアヤノに向かって放たれた。
アヤノもそれは予想していなかったのであろう。その拳は彼女の顔に直撃した。
「ったいなぁ。何するの?トーヤ。」
「まずは貴女の綺麗な顔を傷つけてしまった事は詫びましょう。しかし、貴女のその邪悪に染まった思考は、良くありません。何時もの貴女に戻って下さい。……………綾。」
悲痛そうな顔でアヤノを殴り、淡々と話す。しかしその後にはフワリとした表情で名前を呼んだ。
「………あれ……?トーヤじゃんか。久し振りぃ、元気してたぁ?私はねぇ、元気だったよ?でもねぇヴァイヤさんが死んじゃったの。あんなに優しかったヒトがね、死んじゃったの。私がもっと速く着いていればね、あのヒトは死ななかった筈なの。」
「…それはっ………」
悲しみの入り交じった顔でアヤノは喋り、途中の自虐に反論しようとしたノーマだが、言葉が見つからなかった。
「あんなに強くて、かっこよかったヒトが、死んじゃった。唯一私を怒ってくれたヒトだった。怒鳴ってくれたヒトだった。優しかった。暖かかった。
私がこの世界で初めて、生きてる方が良いと、思わせてくれたヒト。死んじゃったら、どうしようもならないのに、自爆のような魔法で死んじゃった。
どうしようもない、自爆。何で他のヒトの事を考えないんだろう。残された方は、とてつもなく悲しいのに。」
アヤノの頬には、一筋の涙が、流れていた。
「どうして死んじゃったんだろう、………さん。」
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