47 昔は……
「…………さんっ………アヤノさん!」
………ユテアかな?
そんなに必死になっちゃってどうしたの?
私、寝てただけだよ?
「あ、あの、周りに、兵隊さんがっ」
弟君?
そんな冗談なんか言っちゃってぇ。
笑えないんだけど?ふふ。
「あいっ、たたた………」
あー、体が固くなっちゃった。まぁ子供二人抱いたまま木に寄りかかって寝たらそうなるか。
寒いの?保温魔法掛けといた筈なんだけどなぁ。
………現実逃避はやめるか。
「んで、君ら何?」
お揃いの服着た兵隊さん。あの制服は…………帝国かな?
「ふあぁぁ………私今最高に気分悪いんだけど。…………何の御用でこの辺鄙な場所までお出でになられたのでしょうか?」
ユテアにつねられたぁ。痛くないけど痛い。分かったよ。丁寧に話せばいいんでしょう?
「決まっている!!爆発が起こり駆けつけてみれば貴様らのような怪しい者が居た!!捕らえようとしてみれば訳のわからんモノで弾かれる!!だからこうして囲っているのだ!!!」
うるさい。寝起きの頭に響くからやめて欲しい。
私の可愛い弟君達も耳塞いでいるじゃんか。
「ええと?私達が怪しい者だと。えー………どこにあったかな…………あ、此方をご覧下さい。私のギルドカードです。」
あったあった。首に掛けといたんだった。
「なっSランクだと!?大陸に数名しかいないSランクが何故此処に!!」
ざわざわー ざわざわー
…………あれ?ヴァイヤさんの遺体どこいった?
「あ、アヤノさん。さっき、あの方々がヴァイヤさんを袋に、いれてました。」
は?
「おい。此処にあった男性の遺体、何処にやった?」
「あ?そんなもの森に捨てやったわ。それよりもそのギルドカード、偽物だろう?ギルドカードのフェイクは違法だぞ?!縄に付け!!」
そうかそうか。帝国はまだ人間至上主義なんだなぁ?
「くふっ。まだ魔族を馬鹿にするものが居たとは驚いた。なぁルナ、起きているだろう?子供を連れてさっさと下がれ。」
起き上がったルナがむすっとしてる。
「……ほどほどにするんじゃぞ。焼け野原にはするなよ。」
「あははっ分かってるよ♡お仕置きするだけだ。」
どんな方法がいいかなぁ。あ、前に隊員達がやってたのが良いかなぁ♡
色々鬱憤貯まってるんだよね。ストレス発散の時間
だぁ。
「此処まで来てくれて魔族を差別してくれてありがとう♡なんの憂いもなくお前らを殺せるよ♡私はカード見せたからね?その上で罵倒してくるんだから覚悟してね♡」
まずは隊長格を潰そ。
取りあえずー……手ぇちぎるか。
「ぎゃあああああああぁああぁ!!!!!」
「あははっこんなんでくたばんの!!帝国兵って脆いねぇ!!昔はもっと凛々しかったのに!!」
弱い。弱い弱い弱い!!
………ああ、昔の帝国兵は強かった。
職務に忠実で、真実を見つけて、然るべき処分を下す。
今の私の腕を持っていける位強かった。
魔族が他の国と戦争してたって、差別をしなかった。
いつからだっけ?
ああ、王が差別を始めたんだ。
当初は認められなかった。魔族には優しいヒトが多いからって。
でも、少しずつ浸透していった。
魔族が金を払わず逃げた。
魔族が魔法で物を奪った。
魔族が突然民間人を殺した。
段々と醜い噂が増えていった。
全部冤罪だった。貴族がやった事が魔族に押し付けられた。
近くの村に住んでいた父は、守っていた人達からの突然の攻撃に、逃げるしかなかった。
父を攻撃した村は、後に滅んだ。父が村を魔物から守っていたのに、その重要性に気づかずに魔物に襲われて無くなった。
その村を滅ぼそうとした私を、父は諭した。
「彼らはね、私を追い出すしかなかったんだ。何年も、何十年もかけて刷り込まれた認識が、只、間違っていただけ。彼らは悪くないんだよ。」
………差別が始まってから、帝国兵は、極端に弱くなった。不要な動きをし、無意味な訓練を行い、協調性なんてこれっぽっちも無くなった。
次第に良い指導者は国から離れ、無能が帝国中枢にのさばるようになった。
「弱いなぁ………すぐに死んじゃった。」
帝国は実力主義の筈なのに………あー、賄賂か。
…………………つまらない。
「ねえ父さん。帝国、滅ぼしても良いかな?」
聞こえる訳がない独り言を、血が彩る死体の山の頂上で、ポツリと呟いた。
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