46 ありがとう
「………?!グ……ッ…………」
「─────!!」
体に黒い爪が刺さり引き抜こうとするテュファン。しかしその力は爪が横に動く為の力となった。
「どう、やって……そんなスピードを、出せた?」
「はは、教える訳がない。」
爪がテュファンの体を引き裂き、血が吹き出た。
ヴァイヤが膝を付く。
「ゲホッ……魔族サンはさ、魔王からどんな祝福をもらったの?」
「……娘の、自由。」
苦笑して答えたヴァイヤの前にテュファンが立つ。
「…………そっか。娘さん、ハーフか。」
苦々しげに言ったテュファンはしゃがんだ。血が流れ落ち、地面を彩った。
ヴァイヤの赤い目を見て尋ねた。
「ねぇ魔族サン。私ならね、このまま死んで行く貴方を助けれるんだ。上司が優しいから。だからさ、死にたくないって言ってよ。僕このまま同胞を見捨てたくないよ。」
ヴァイヤはきょとんとしてテュファンを見る。
そして考え込むような素振りをして─────
────笑った。
「ふふふ、あははっ」
「何を笑っているんだい?俺は真剣なんだけど?」
「ああ、すまないね。私の答えは「断る」だ。魔族としては長い七百年を過ごした老いぼれを、まさか生かそうとする魔族がいるとは、驚きだ。ははっ」
「……………」
「いいかい、テュファン?これは説教のような物だ。いくら同胞だからといって敵対した者を簡単に赦してはいけないよ。許すのは表面上だけだ。「アナタの下に付く」「アナタと同盟を結ぶ」そんな甘い言葉に惑わされてはいけない。いずれ力が弱まった際に寝首をかかれる。」
ヴァイヤは首を掻ききるような動きをした。
「ふふ、君はどこか娘に似ている。ハーフだからかもしれないね。」
ああ、とヴァイヤは曇った空を見上げる。
「そろそろ撤退したらどうだい?君よりも強い者が来る。あぁ、それと……」
無言で撤退しようとしていたテュファンは苛立たしげにヴァイヤの方を向く。
「最後の足掻きだ。………悲しみに満ちたこの世で一番楽しかった戦いかもしれないね。」
ジッとヴァイヤの行動を見ていたテュファンは殺気を感じ、上に跳んだ。
「うぐっ……!」
避けきれなかったのか、その腹には、氷の塊が刺さっていた。
「私が魔法を使えないと考えた君に、プレゼントだ。ははっ、バイバイ………。」
地面に倒れ込むヴァイヤ。それと同時にテュファンは去っていった。
◆◆
「「ヴァイヤさん!!!」」
静かにうつ伏せで倒れているヴァイヤの元に少女と女性を背負う少年が走ってきた。
「ねえヴァイヤさん!起きてください!」
「やだっ、ヴァイヤさん!もうアヤノさん、来たから!お願いっ」
少年の言った通りアヤノの姿が二人に見えていた。
アヤノは困惑の顔をして、その後すぐに悲しそうな顔をした。
「………そう。ヴァイヤさん、あの技使ったんだ。」
「……アヤノかい?ああ、アヤノ、此方に来ておくれ。その顔を見せて。」
「はいはい……ほら、来たよ。………満足?」
しゃがみこんで呆れたように問うアヤノにヴァイヤは笑う。
「ああ、満足だ…………。」
「…さっさと自分だけ逝くなんて。傲慢だねぇ、ヴァイヤさん。………………仲良くね。」
アヤノが笑いながら立って、悲しそうな顔をして首を横に振る。
子供二人の瞳から大粒の涙が溢れた。
二人の叫び声を聞きながらアヤノはふと、地面に落ちている紙に気がついた。ヴァイヤが少年に渡した紙だ。
それを拾い、中身を読む。
数秒後、アヤノはゆっくりと地に座った。
紙を手放し、溢れてくる涙を堪え、俯いた。
その紙には一言『ありがとう』と、書かれていた。
お読み頂きありがとうございます。
アヤノが泣くところ表現変えましたー




