44 ヴァイヤvs………
爆発したある家を背景に二人が向き合っていた。
一人は仮面をつけ、刀を差すヒト。その頭には鬼族のような深紅の角が存在していた。
もう一人は目を赤く光らせ、口元に牙がある魔族。黒いコートを身に纏い、白い長い髪が揺らめいている。
魔族の背後には子供が二人、子供に抱えられているのが一人。
「君たち、離れていなさい。」
魔族──ヴァイヤはそう言い、子供はそれに従った。巻き込まれる、と確信があったのだ。
「さて、一応聞きますが、貴女はこの辺鄙な場所へ何をしにいらっしゃったのでしょうか?」
「……………」
「…………………………」
何も答えない面の女と、ニコニコと答えを待つヴァイヤ。沈黙が続き、面の女が折れた。
「………………………………………殺害依頼。」
「………そうですか。ちなみに依頼人を教えてもらえると此方としては嬉しいのですがねぇ。」
「………………………教える訳がない。」
「そうですか。では標的を教えて欲しいですねぇ。」
「標的?標的は、─────魔族である、貴方ッ」
そう言って面の女は一瞬でヴァイヤの後ろに回り込み、刀を振った。
ヴァイヤも予測はしていたのか、首に振られる刃を受け止めた。
「………さすが魔族。ソレも魔王からの祝福か?」
面の女の刃を受けたのは漆黒の爪だった。
「これは自前だよ。牙みたいに伸ばせないかと思ったら伸びたんだ。笑えるね。」
「………敵対するものからしたら、笑えんな。」
「そりゃそうか。」
笑いながら刀を受け流すその爪は固く、面の女も驚きを隠せていなかった。
互いの間合いを離れ、また話した。
「おい、魔族。その爪、金属に例えるとどのくらいの固さだ?」
「うむ………ミスリル以上、オリハルコン以下、といったところでしょうかね……色々改造しましたから、牙よりも固いですね。」
考えながら爪を器用に使い、髪を結ぶヴァイヤ。敵の前でそんなことをするのは命取りに成りかねないのだが、ヴァイヤは目の前の女を試していた。
「ふむ、貴女は手早く依頼をこなす方だと思っていましたが………ただの戦闘狂ですね。」
「何を言う。私はさっさと終わらせて、家族の元へ、戻りたいッ」
一直線に走り、突きを繰り出す。それはじっと見ていた子供達には見えなかったが、ヴァイヤは笑ってそれを躱す。
しかし、少しかすったのか頬にうっすらと傷が出来ていた。
「む。避けきったハズなのだが……」
白い肌を滑り落ちる真っ赤な血。面の女も子供達もそれに目が行ってしまう。
ヴァイヤは垂れてくる血を舐め、
「血を無駄にしてはいけないよ。血は私達にとって大切だからねぇ」
ヴァイヤの目の色が深く紅くなった。
「それでは、此方の番だ。」
面の女の背後に回り込み、首に爪を突き立てる──
───
「魔族ってこんなにも弱いんだな。俺驚いちゃった。」
しかしそこには別の者が居た。
黒髪で前髪にオレンジ色のメッシュが入っている、困り顔の仮面を被った者。
「ねぇ魔族さん、君は僕に何分持ちこたえられるかなぁ♡」
「………子供には手を出さないと約束するのでしたら少しは相手になって差し上げますよ。」
「フハッ♡いいよぉ、てぇ出さないからさぁ。──本気でやってよ。」
ソレは殺気を振り撒き、
「鎌鼬」
風の刃を繰り出した。
「………チッ」
ソレを避けるが、刃は方向転換し、ヴァイヤを切り裂いた。あちこちから血が吹き出て、地面を濡らす。
「痛い?痛いよねぇ、俺はその気持ちが分かんないんだよ。だからさぁ、誰かが教えてくれないかなー、って思ってんだぁ♡魔族さんが教えてくれるのかなぁ?」
「ギャーギャーギャーギャー、童がうるさいな。少しは年上を敬って欲しいもんだ。馬鹿が。」
ヴァイヤは下ろしていた前髪を後ろに流した。
額には、黒い、瞳のような丸い穴があった。
「知ってるぅ?馬鹿って言った方が馬鹿なんだよぉ?」
「ああ、知っているさ。だがしかし、その理論で行くのなら童は皆馬鹿ということになるな、童。」
「……………ジジイムカつく。」
挑発に乗っかった者は、次の攻撃への準備をしていた。面の女に目を向け、怒鳴り散らすように言った。
「君さぁ、せっかく俺の実験の成果になったんだからこんなんで疲弊したら困るんだけどぉ。」
「も、申し訳ありません。」
「次の実験はどうしようかなぁ。あ、ちょうどいいのがそこに居るじゃん♡早く殺して実験しよぉ♡」
すぐに機嫌が直った者。
「ああ、そういえば、君の名前を聞いていなかった。」
「んん?僕の名前ぇ?んー……テュファンでいっか。」
「そうかい。では、テュファン。君はそこの面の童のように無理に従っているわけではないのだね。」
「え~?当たり前じゃん♡私は自分の意思で命令を受けているんだよ?フフッ♡」
テュファンの手にはいつの間にかナイフがあった。それはクルクルと回りながら二本、三本と増え、構えた頃、その手は六本のナイフを持っていた。
「じゃあ行くよ?魔族サン♡」
テュファンからナイフが投げられ、ヴァイヤは爪でそれを弾いた。
「グ…フッ…………」
血がボタボタと落ちる。コートは赤く染まり、顔が歪み、口からも血が溢れ出る。
ナイフは確実に地に落ちた。
ヴァイヤの意識から離れた直後に動き出し、その体を貫いた。
「フフッ♡魔族サン、今どんな気分?少しはやる、ってだけ思ってた相手によく分かんないナイフで貫かれんのどんな気分?」
「ッ……………君の………ユニークスキル、ですか……」
「おおっせいかーい!僕のスキルはねぇ小物操作系なんだぁ♡どこかの方向にしか飛ばせないから不便だけど、こういう時便利だよねぇ♡」
嬉しそうに語るテュファン。
地に四つん這いになって血を溢すヴァイヤの目からは、光が消えかけていた。
「………グ、ハッ……………」
「おやおやぁ?魔族サン、まだ僕に傷一つ付けてないよぉ?もうへばっちゃうの?つまんない。」
「ヴァイヤ、さん!」
力が抜けていくその時、言葉が拙い子供が自分目掛けて走って来る様子が、ヴァイヤの閉じかけていた瞳に見えた。
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出来れば評価お願いします。
……どうです?出来るだけ長く、気になりそうな所で止めたんですが。




