40 従者の語り
Side 第一王子
分かっているよ、僕だって。
僕が王に向いてないってこと位。
僕とユテアでそれぞれ欠点がある、その欠点の大きさで派閥が争っている。
僕の欠点に比べたらユテア何て些細なことさ。ユテアが女であること。ただそれだけ。
僕は見た目だ。父と母に全く似ていないこの色。歴代の王族にも居なかった色だ。
見た目が違えば噂も出てくる。
拾い子だ、王妃の浮気だ、侍女が孕んだ子だ、別の家の子だ、女だ……
滅茶苦茶だ。
別に僕のことを悪く言うのは構わないさ。けど父と母の浮気だとか言うとかさ、絶対後先考えずに言い放ったよね……
考えてみてよ。父と母は王様と王妃様ですよ?中々に民からの人望がありますよ?もしそれ外で言ってたら民に殺されますよ?王達を信じていないってことになるんだから。
城の中だから良かっ……良くはないね。ユテアが聞いたらそいつ殴るわ。
なんか手紙では修行仲間に「暴力性が増してきています。ユテアさんはどこを目指しているのでしょう。」って書かれていたし。
父と母に見せたら落ち込んでいた。
………閑話休題。
最近父の側に新しいのが付いた。
名はまだ教えてもらっていない。でも、こんな見た目の僕でも普通に接してきてくれる。
まぁ従者の距離は保ってきてるけど。
そんな従者…?護衛…?が僕に話しかけてきた。今までは父が話を振ってきていたから、そっちから話しかけてくることは無かった。だからちゃんと耳を傾けた。
すると、こう言った。
「王子、いつまでも自分の心に蓋をしていないで、早く周りに心を開きなさい。貴方が思っているよりも多く、貴方を心配している人は居ますよ。」
何も知らずにのうのうと「心を開け」と言ってきた。
僕だって開けるなら開きたいさ。でも──
「周りが怖くて仕方ない、と?」
そうだよ。
僕の見た目じゃあ、僕が何を言っても──
「人生経験から教えて差し上げましょう。周りを気にしたって、周りが何を言ったって、自分には関係ありません。堂々としていればいいではありませんか。
見た目を悪く言われるのなら、それを有効活用なさい。出自を言われるのなら、それは戯言です。貴方は王家の人間だ。胸を張りなさい。
貴方にはその頭脳があり、一年で積み上げた知識があります。本は裏切らないのでしょう?見返しなさい。今までの自分を。そして、馬鹿にした貴族を。」
─────────。
「どうしても自分を信じることが出来ないのなら私を信じてください。私でなくてもいい。貴方の父でも、母でもいい。貴方に唯一付いている執事でもいい。誰でもいいから、貴方が信じれる人を信じればいいのです。」
「──っでも!っゲホッゲホッ……ゴホッ」
「ああ、やっと声を聞けた。やはり似ている……」
「コホッ エホッ………え…?」
「何でもありませんよ。……声を出す。それが心を開く第一歩です。不安、喜び、怒り、様々な感情を声に出すのです。そうすれば、誰かは耳を傾けてくれる。今、貴方が耳を傾けた様に。」
「あ……」
でもそれは話が気になったからで……
「ええ、普段話しかけない私が話しかけてきた。気になったから聞いてみる。「気になる」という事だけで人間はその話に耳を傾けます。」
「でも、」
どうせ僕の話には誰も……
「では話術を身に付けるのです。はっきり言いますが、貴方はただでさえ気になる容姿をしているのです。その貴方が気になる話を始めたら誰でも気になります。」
「話術……」
でも僕にはそんなもの…
「貴方にはきちんと「見る」執事がいるでしょう?あの目付きの鋭い。あれは色んな技術を身につけています。教えを乞うたらすぐにでも行動してくれるでしょう。今もその影に居ますよ。気配は消していますがね。」
「でも彼は……」
「私からしたらどちらも小さな子供です。それに貴方が思っているよりも……いえ、黙っておきましょう……」
そう言ってニコニコ笑っていた顔を、いつもの無の表情に戻してからまた口を開いた。
「もしも貴方が物理的に傷つけられる事があるのでしたら、私達王家に与する人間はその者を全力で殺しにかかります。貴方にはそれだけの価値があるということ、覚えておいて下さい。」
その顔が本気でやるのだということを伝えてきた。
僕は自分のせいで人が死ぬのが嫌で、怖くて、それでも目の前の圧に耐えきれなくて……頭を縦に振ることしか出来なかった。
圧が消え、頭を撫でられた。
「そこまで背負い込むことはありません。圧をかけた私が言うのも何ですが、これだけは忘れないで下さい。」
頭に手を置いたままかがんで僕に目線を合わせながらこう言った。
「妹は、儚いものです。接し方次第で善人にも悪人にもなりうる。そして、貴方を狙うものが彼女を人質に取ることもある。彼女は強く、いざとなれば王家の為に命を捨てる覚悟をしている。……貴方が守るのです。」
…………妹が、死ぬ?
太陽のような、あの子が?
まだ何も知らないあの子が?
「嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ!絶対にあの子は死なせない!!ユテアは、僕が守るんだ!!」
「ええ、分かっています。きちんと、守ってください。王家には関係無く、妹や弟は守るものです。決して、死なせないで。」
……いつもの無表情の顔なのに、何故か今は、少し悲しそうだった。
当たり前のようにに心を読む従者。
従者が言うには、
「読んではおりません。察しているのです。」だって。
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