35 ヴァイヤさんは後悔する
二人の子供を預かって早二年。
預けた張本人であるアヤノは一向に姿を見せない。使い魔の話では王都で小規模の反乱が起こったようだ。
………秘密の部隊は大変だねぇ。
恐らくは騎士団の勘違いで反乱起こされてその近くに居た王を誰が守ったのかで議論されてどう出たらいいのか分からずに止まっているんだろう。
あの子達の事だから騎士を痛め付けすぎて騎士募集にも時間掛かっているんだろうね。
ついでにゴミを処分しているのかな。ちょうどいい機会だからね。
そうそう。預かった子達は本当にいい子だ。呑み込みが早いしそれなりに精神力もある。
ユテア君は本気で教えても困るだろう。王女だからそんなに戦う機会もない。
少年は取り敢えず体力を作らねば……アヤノに付いていけん。あの子は鬼だからね。
ん?私も鬼だって?決闘なら乗るよ?掛かっておいで?
ふふ………冗談だよ。
今日は精霊を探すという授業(でいいのかな?)をする。精霊を見るためには目に魔力を流して精霊に身体を合わせるんだ。(質という意味でね。)
魔力を一気に流すと負荷に耐えられなくなって目が弾ける。一度そんなバカを見たことがあるからね。
しっかりと注意したよ。
「ヴァイヤさん、ヴァイヤさん!ミニサイズの子供が!あちこちにいます!可愛いですわ!」
「うん。その小人が精霊だよ。」
うん。ユテア君はうまくいったみたいだね。
「ずっと流していると危険だから時々止めるようにね。」
「はい!分かりましたわ!……あぁ可愛らしい……!」
ふむ……少年の方は──
──パチンッ
!
あれはいけない!どの属性かは分からないが精霊が魔力を増強している!目の負担が大きすぎる!
「少年!魔力を流すな!今すぐ止めなさい!」
思わず怒鳴ってしまう。ユテア君が驚いているがそれに構っている暇はない!
「少年!!」
「僕は────悪い子じゃありませんよね?僕は──」
────っ!
止まってしまった。
少年のそれが何かに怯えているもので、どこかで見て後悔した記憶があったから。
意識を失って少年が倒れる。急いで駆け寄って抱えるが、揺すっても少年は起きない。
───ああ、無事でいてくれ──────
そう、願うしか無かった。
━━━━
少年が倒れてから一日が経過した。隣の部屋で寝ていると呻き声が聞こえた。少年の声に聞こえた。
ゆっくりと移動し、戸を開ける。
すると起き上がって目を見開き、震えながらブツブツと呟いている少年の姿があった。
その近くに────
危ないな。
「ぼくは………」 『私に任せて』
「ぼく」 『何も言わないで』
「………」 『そう。何もしないで私だけを
見て、私だけ考えて───』
ダメだ。
「いけないよ、少年。」
何も見せない様に少年の顔を手で覆う。
………冷たい。
少年が冷たい。氷の様に。
脈を確認して生きている事を確かめる。
うん。生きている。
魔力を増強していたのは氷か闇、もしくはそのどちらも、だな。
こう考えている間にも私と少年は話している。
正直、私が何を話したのか覚えていない。
「僕は、僕、ですか…………?」
「うん。大丈夫そうだね。」
少年は精霊に好かれるのか。
魔力の質か、身体の質か………
「ヴァ、ヴァイヤさん、手を……」
「ああ、すまないね。体温は下がったみたいで、良かったよ。」
ふむ……
「少年。魔力を塊にして出す事はできないかい?」
「? え、っと……どうぞ……。」
少年がおずおずと差し出した手の内には小さな魔力の塊があった。
その色は黒であり、紫であり、薄い水色もあった。
「これは………フフ、少年。君は面白い。一気に三種の精霊に好かれるなんて。」
「さ、三種類ですのー!?」
ふむ、ユテア君がようやく出てきたようだね。チラチラと蒼い髪が見えていたから分かっていたけど、少し声が大きいんじゃないかな?
「ハッ!?す、すみませんっ弟君は病人ですのにっ!」
「あ、えっと、だ、だいじょうぶ、です。」
………おかしいな。
「少年。」
「は、はいっ、なんで、しょうかっ」
「落ち着きたまえ。」
「え、?っと……あ、はっい、す、すみま、せん。」
「……………少年。今、誰が傍に居たら落ち着く?ああ、責めている訳ではなくてね。感情が多くて、混乱しているようだからね。君の落ち着く時間を与えてやりたいだけなのだよ。」
「っあ、えっと、う、んと……す、みません。」
………。
「一人の方が良いようだね。大丈夫だ。扉の近くに居るから何かあったら呼ぶといい。」
「は、い、すみ、ま、せん。」
「ああ。ユテア君、行くよ。」
「え、あ……分かりましたわ」
━━━━━
部屋から出て、私はユテア君に頼んだ。
「すまない、ユテア君。私はやらなければならないことがあるから離れる。戸の傍にいてくれ。」
「分かりましたわ………?」
さっきので確信した。
少年は時間をやっても落ち着かない。
あれはもう手遅れになってしまった。
闇の精霊が魅了をかけたのだ。
お読み頂きありがとうございます。
結構前、チョコチョコと色々編集していました。
編集後を読んでない方いらっしゃると思うので、初めから読んでみてください。
これからは編集控えます。




