25 おーさまは大変だぁ
「姉さ………アヤノ殿。此度は助けてくださり感謝する。褒美といっては何だが、何か欲しいものはあるか?」
椅子が三つあり、左からティルナ、デューア、ユテアと見える順で座り、真ん中で話すその男。
毒を塗られたナイフでズブズブとやられたのにキリッとしている。
何故生きているのか。
ノアが普段使わない[式]をめちゃくちゃ使ったからである。
ちなみに[式]とは、呪いを暴走させずに扱える、アヤノとトーヤが開発したものである。
呪いを籠める者の技術が呪いの量に会っていないと暴走するが。
閑話休題。
ノアはその治癒の[式]でデューアを治したのだ。
[式]には色々な種類があり、扱えるのは技術と呪いとの相性がある。
ノアの治癒の[式]は稀で、アヤノ作ではない、オリジナルだ。
その才能はアヤノも認める程である。
閑話休題。
治したのはノアだが、運ん……届け………連れてきたのはアヤノで、ノアは報酬を貰っている。
だからなのだが、分からない奴もいる。
「陛下、お待ちください!どことも分からん奴に報酬を与えるなんて!」
「そうです!何故冒険者なんぞに頼るのです!?我がマークトス家には聖女と呼ばれる娘がおりますのに!!我が家に任せていただければ冒険者なんぞ使わずに済んだというのに!!」
「マークトス伯爵殿!そう言って御令嬢を王家に近づける気でしょう!!継承権問題を更に大きくするおつもりですか!?」
上から子爵に伯爵、でまともな伯爵である。
マークトスに反論したのは若い元騎士団長で、アヤノの強さが瞬時に分かった優れた人材である。
元騎士団長伯爵はターテ·マーニ伯爵。
少し別の話だが、この国の継承権問題について話そう。
この国には王子と王女、それぞれ一人ずつおり、王子は病弱で賢く、王女はまぁユテアなのだが、時折本を出していて、丈夫で民に人気があるのだ。
王子派と王女派がいて、互いの欠点を挙げ、推す方を王にしようとしている。
デューアが次期王を決めれば済む、と思う人もいるのだろうが、デューアは王として考え、まだ名指ししていない。
マーニ伯爵がどちらでもない、中立派であることを分かった上でアヤノは声をあげた。
「マーニ伯。継承権問題は大丈夫です。そして王よ。褒美は私がこれから言うヒトにあげてください。」
そしてアヤノはゆっくりと名前を言った。
「私が指名するのは二人。宰相のジーク殿と友人のトーヤです。ノアにも聞いて、報酬を渡して下さい。」
「す、少し待ってくれ。ジークはまぁ分かるのだが、トーヤは………?」
「私が預かっている子供達が居るのはわかってますよね?ジーク殿の知らせを受けなければ動くことは出来ませんでしたし、瞬時に動くことが出来たのはトーヤに子供達を預けることができたからです。」
副音声が聞こえた。
(こちとらお前らの子供預かってんだ。危うく子供が足手まといになってノア届けられなくなってたぞ。預けれたの誰のおかげだ?分かるんだったらさっさと褒美やれよ。)
「わ、分かりました。報酬はこちらから渡します。ですからその副音声をお止めください。」
ちょっと焦った声で言うのは褒美を貰う立場の宰相。
おかしい。
ジークは貰う立場なのに。
一番胃がキリキリしてる。
「う、うむ。私にも聞こえた。報酬は私が渡す。ジーク、お前は貰うのを待っていろ。何が良い?何でもやろう。」
「いや、え?今ですか?」
少し、いや、物凄く慌てて聞き返した宰相。
「え、えー…………休暇を頂ければ………騒動が終わった後に……。」
焦りながらも言う宰相ジークにデューアはきょとんとして聞き返す。
「そんなもので良いのか?」
「は、はい。騒動の分での疲れを癒しに孤児院へ行こうかと。」
「……?分かった。しかし私も連れていけ。」
「……………デューア。ジークの休暇じゃなくなる。」
「…………………………………………あ。すまん、ジーク。無かったことにしてくれ。」
デューアの何も考えない発言にアヤノがジト目でボソッと言った後、間をおいて無かったことにするデューア。
しかし忘れてはいけない。
ここには見知った者だけでなく、頭の固いジジイどもが居るということを。
「アヤノ殿?いけませんなぁ、王を呼び捨てとは。どういうご関係で?」
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