20 ノアが来た!
「イィヤァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
蒼い月が地を照らす中、女性の叫び声が響き渡った。
叫んでいるのはこの国の王女、ユテア·アインス·ロッサである。叫ぶのはアヤノの腕の中でだ。
もう一人の男児はアヤノにおんぶされている。
二人を抱えているアヤノは耳を塞げない。
もろに頭に響いているハズなのだが、それを感じさせない余裕の表情。
後ろの男児は顔をしかめているのに。
「んー………………こっちだったかなーユテアユテア、いい加減慣れてー?そして方向教えてー?」
「ハッ?!アヤノさん!何故私たちは空を飛んでいるのでしょう。そんな魔法は開発されていないですよ」
「もしかしたら開発されているかもしれないじゃん。うちの教え子は優秀だし?─────おや?」
「どうかしましたか?アヤノさん。」
ホッとしたのが顔に出ている子供が聞いた。
「んー?懐かしい気配がねぇ……ノアかなー?」
「ノア?どなたです?」
「私の教え子の一人だよ。あ、いた。」
え、と驚きながらも下を見ると確かに手を振っている女性がいた。
「お久し振りですねー!姉さーん!その子供らはどうしたんですー!?」
暗い赤色の髪を揺らしながら大声で叫んでいる。
その周りには魔物と呼ばれるモノの残骸が転がっていた。
血を踏まないように降り立ったアヤノはそっとユテアと子供を降ろした。
「ねぇノア?此処ってデューアの直轄地だよね?何で居るの?」
「え?姉さん何を言っているのです?弟の物は姉の物って言うじゃないですか。」
「「「……………」」」
当たり前かに言うノアにアヤノは苦笑し、子供二人は呆然としていた。
「冗談ですよ。スタンピードが起きそうだったから殲滅してただけです。」
カラカラと笑いながら言うノア。
Sランクの魔物の大軍を殲滅したとは思えないラフな服装を見て子供二人は言葉を失っている。
「よし、ノア。よくやった。エライエライ。」
「そうでしょ?私は弟の国を守ったんですから。もっと褒めてくれたって良いんですよ?」
「じゃあデューア達の命を守ったらもっと褒めたげる。」
「了解でぇす。あ、でも今日は泊めて下さいな。」
軽く会話する二人の後ろで子供達は会話する。
「ユテアさん、スタンピードってなんですか?」
「魔物達が住居で増えすぎて新たな場所を求めるため大軍を率いて行動することよ。諸説あるけどね。その大軍、しかもSランクを殲滅するなんて………アヤノさんの教え子の方々はどれほど強いの……?」
「いつかぼくらもあれくらいつよくなりたいな。ユテアさん、がんばりましょう!」
「ハイ!もちろんです!」
二人が意気込んでいるとは知らず、のんびりと雑談をしている。
「あー!懐かしい!ノーマさん今ギルド長なんですか?今度会いに行ってみようかなぁ。あ、シュカちゃんどうでした?」
「シュカはねぇツンツンしてた。フフ、相変わらず可愛いよ?──あ、ノア、尻尾出ちゃってる。」
「あれ?ホントだ。あ!?しまえたら次は耳!?
………………姉さぁん……。」
「ハイハイ。可愛い可愛い。ホラ、どうぞ?」
「ムゥ……………早くベッドを出してください。こう見えて結構疲れているんです。寝たい。」
「ハイハイ。ストレス?魔力切れかな?どっちでも良いか、二人とも、こっちおいで。」
アヤノは洞窟から手招きをし、子供達を呼び寄せた。
二人は洞窟の中に入ると膜のようなモノが身体を通過した気がして振り向いた。
「おー、気づいたか。流石だねぇ結界術の素質もあるのかな。姉さん、今度この二人に教えても良い?」
「ん?いいよ。結界術の素質が有るんだったら他にもありそうだし。今度色々試してみるか。」
アヤノとノアの二人は顔を見合わせてニヤリと笑い、
猛烈に嫌な予感がした子供の二人は揃って腕を擦ったのだった。
お読み頂きありがとうございます。




