1 呪われている
「君、呪われているよね」
ケタケタ笑いながら言われました。
「いやぁ久しぶりに見たよ。こんなに黒い子は。」
まだ、笑っています。
黒い子?呪われている?
それを言うのなら、貴女こそ黒髪黒目ではないですか。
そうも思いましたが、僕は何も言えずポカンとしていました。
「呪われている」と、
こんなにもはっきりと言われたのは、久しぶりな気がするのです。
僕はまだ4歳なのに。ずっと家に引きこもっていたのに。
━━━━━
僕は1歳の頃から言葉を話せました。
なんとなく分かっていました。
ドンドンと外国語を覚えました。
魔法陣だって細部まで覚えました。
……そんな僕を周りは「てんさい」と呼び──
───恐れました。
何故か、僕の周りは血を流すのです。
捻挫は当たり前で骨折、欠損、時には死んでしまうのです。
貶められ、貶され、罵倒されました。両親からは「生まなければよかった」とまで言われました。
もう誰も怪我をさせたくない、殺したくない。
そう思って僕は引きこもりました。
僕がいるから物が壊される。
僕がいるから両親は傷つけられる。
僕がいるから皆が傷付く。
……僕は生きてていいのかとすら思いました。
━━━━━
僕が生まれてから一度も「呪われている」なんて言われたことは無いのです。
だから、「ひさしぶり」などと思うはずがないのです。
怖かったけど、聞きました。
「僕は……呪われているのですか?」
「うん」
淡白です。
でもこれではっきりしました。
体質じゃない、呪いなんです。
「解けることはないけど、呪いを制御する方法を、教えてあげようか?解くことは出来ないのだけどね。」
いいのでしょうか。
……でも、この人を呪ってしまうかもしれない。
そう考えた僕はゆっくりと首を振りました。
「あれ?いいの?私を呪ってしまうかも、とは考えなくていいよ?今の君に私は呪えない。私が君を呪うことも無い。」
本当に、いいのでしょうか。でも、この人なら本当に大丈夫な気がしました。
「おいで、少年。私が救ってあげよう。」
……手を、差しのべてくれました。初めてでした。
この人なら、ついていっても良いかもしれないと感じました。
「………お願いします」
そう言って僕は手を取りました。
僕は旅に出ようと思います。
お読みいただきありがとうございます。