7. 愛とベイビーと私
不意に、スマートフォンの着信音が鳴り響いた。
「あっ、信矢からだ!」 麗が、嬉しそうな声を上げる。
「えっ……!」 「なんて?」 「ほら、これ!」
3人は先ほどまでのやりとりを忘れたかのように、仲良くスマートフォンの画面を覗き込んだ。
『スタイ見たよ! 一生懸命さが伝わってきて、感動した。いろいろ忙しくて、ずっと放っておいてごめんな! 早く帰るから♡』
「………………」 涙ぐみ、スマートフォンの画面を撫でる、麗。
「……良かった、ね」 真っ先にハルミがいい、 「やったな!」 と和樹が手の中のヨレヨレ作りかけスタイを握りしめる。
……彼らの顔には、自然に笑顔が戻っていた。
「ありがとう……っ! 和樹くんとハルミちゃんのおかげだよ!」
「よかったよぉぉ、麗ちゃん!」 「本当に良かったな!」 「うん……! うん……! ほんと…… ありがと…… ぐすっ……」
お互いに肩を叩き、健闘を称え合いながら……
(ずっと放っといて 『♡』 1個で許されようっての? この男……) と、つい、思ってしまうハルミである。
……もちろん、口に出すことは絶対にないが。
と、その時。
「うっ」 ハルミが急に、お腹を押さえてしゃがみこんだ。
「陣痛……はじまった、かも……?」
「「「「えええええっ……!!」」」」
――― マンションに、人間たちの声と、miniたちの声にならない思念が、響き渡った。 ―――
..º*¿¤*§º*ゝ..
数日後、産婦人科の個室では、お見舞いにきた麗と、部屋着姿のハルミが並んでタンポポ珈琲を飲んでいた。
「それでねー、信矢ったら、もう新居の候補を決めてて、結婚式の準備と新居選びと赤ちゃんの準備で…… もう大変」
結局のところ、彼がほとんど麗の元に帰ってこなかったのは…… 的外れな気遣いもさることながら、ひとりテンパって新居探しや結婚式のプランニングを進めていたから、だそうで。
サプライズで麗を喜ばせようと、仕事の合間に現地に行ったり打ち合わせしたり、で、麗にはメッセージする時間もないほど忙しく、かつ疲れてしまっていたらしい。
「心が通じてるはずだと思ってた、だなんて……バカだよねぇ……」
麗の幸せそうな報告をうなずいて聞きながら、 (信矢さんって……誰かさんと行動パターンが似ているな) と思わずにはいられない、ハルミである。
その愛しい誰かさんとの赤ちゃん、生まれたばかりの女の子は、今、ハルミの傍らの保育器で、両手を握りしめてスヤスヤと眠っている……。そして。
ハルミ達には見えていなかったが、その枕元では、©*@«《ピンハネ》とº*≅¿ がテレパシーを利用しベイビーに睡眠学習を施していた。
――― なんと、赤ちゃんの脳は未発達で幅広い可能性を持っているがゆえに、mini達のテレパシーをも受信できたのだ!
そんなチャンスを、miniたちの1、2を争う優秀な頭脳の持ち主たちが見逃すはずが、なかった。
彼らが教材として選んだのは、地球文化をふんだんに取り入れたミュージカルである。
曲は、モーツァルトの 『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』 より抜粋・編曲。情操教育にもバッチリ最適だ。
出演はもちろん、©*@«《ピンハネ》とº*≅¿本人たちである。
「「♪ら~ら~ら~♪」」 歌いながら手をつないで登場。
「miniは♪」 「miniは♪」 左に跳躍。
「ノミじゃない♪」 「ノミじゃない♪」 宙返り。
「miniは♪」 「miniは♪」 右に跳躍。
「こわくない♪」 「かゆくもない♪」 バク転5連続。
「miniは~♪」 「いいヤツ~♪」 バンザイして両手を振る。フレンドリーな笑顔を心がけよう。
ここからしばらくは、心を込めて自由に跳ねる。細やかなステップで技術を魅せることも忘れずに。
「「だーかーらー♪」」
「いつか♪」 「一緒に♪」
「アニメを♪」 「ゲームを♪」 「漫画を♪」 「昼・ド・ラを~♪」
「「一緒に見~よ~お~♪」」 最後は5回転ジャンプ+高速スピンでフィニッシュ!
(ふっ……決まった) (羽生○弦や高橋大○もビックリですよ……!)
ドヤりながらポーズを取る彼らの0.1mm程度の大きさの脳裏には、ミワちゃんの機嫌の良い笑い声が響いていた……。
「あ」 麗が気づいて声をあげる。
「天使の微笑み!」
「その顔、かわいいよねぇ」 と、相好を崩すハルミ。
「わが子ながらめちゃくちゃ、かわいい……!」
「うん、わかるよ! かわいいよ……!」
ふたりはいつまでも飽くことなく、眠るベイビーの微笑を眺める。
「いま、どんな夢見てるのかなぁ……」 「ねぇ……」
もしかしたらそれは、大人たちには計り知れない夢、なのかもしれない。
..º*¿¤*§º*ゝ..
それから数ヶ月後のことである。
「「くぉらーーっ!!」」
旧湖家に生息する、miniたち全員の脳内に、©*@«とº*≅¿の罵声が響き渡った。
「ミワちゃんの血を吸ってはイカン、と言っただろ!」
「そうですよ、人間の赤子の肌はデリケェトっ!
いくら我々が 『絶対に痒くさせない』 特殊体質になったとしても、赤子はその限りではないかもしれないのです……!」
「えーでもぉ……」 1匹がこわごわと跳ねる。
「大丈夫……でしたよ?」
「だなー」 「俺も……」 「実は……あたしも……」
次々と跳ねる、miniたち。
「「「じゃあ、毎日1匹ずつ、とかでは……?」」」
「ならぬ!」 「ダメです……!」
目を見合わせて宙返りを決める、©*@«とº*≅¿。
(ミワちゃんの安全は、我らが守る……!)
たった1つの想いを胸に、彼らは指令を出した。
「「全 軍 撤 退 …… !」」
..º*¿¤*§º*ゝ..
ぽぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…………
のどかに汽笛が鳴る。
ここは、薄暗く湿った船底。
ペット用動物たちの毛皮にぬくぬくと埋もれながら、ちっちゃなヤツらが、相談していた。
「次は、どこに向かいましょう」
「そうだなぁ……熱帯の森などどうだろう」
「過ごしやすそうですね!」
ぽーん、と跳ねるº*≅¿に、「そうだろう」 とドヤる©*@«。
「そこで3年ほど過ごしてまた戻れば……」
「ミワちゃんは3歳ですね!」
「そう、もう、多少は血を吸っても大丈夫だろう……それに」
「それに……」
可愛くなっているだろうなぁ、とホワホワ妄想を育む、miniの中でも1、2の頭脳の持ち主たち。
「「We'll be back !」」
なぜか英語で宣言し、「「だぁーっはっはっはっはっ!」」 と船倉中に悪役笑いの思念を響かせながら、彼らの旅は続くのであった……。
The end ? or to be continued…?
製作:秋の桜子さま
読んでくださり、どうもありがとうございます!
こちらのお話は、
『部屋と宇宙ノミと私』 の続編として描かれました。
ことの経緯は…… つまり、前編が終わって数日も経たないある日、しいたけ先生が零に 「また一緒にちっちゃいヤツらをぶっとばしたい、って……言ってくれたよね?」(イケボ) と、秘伝の書を授けてくださったことから始まりました。
しいたけ先生はやはり、太っ腹だったのです……!
そうして楽しく、しいたけ先生と○○○した零でしたが、なんとなんと!
しいたけ先生は 「また○○○しようね♡」 と優しく囁き、次なる秘伝の書を伝授してくださったのでした…… (くらっ)
そんなわけで。いずれまた……♡
だぁーっはっはっはっはっはっ♡
でーはー!
感想・ブクマ・応援まことに感謝ですー!!
また一緒に、ちっちゃいヤツらをぶっとばしましょうねー!
★☆★☆
5/4 秋の桜子さまよりFAいただきました!
どうもありがとうございます!
キャラクターは、こちらのキャラメーカーを使われたそうです。
『Picrewの「たまごむしメーカー」でつくったよ! https://picrew.me/share?cd=YVAGJzI384 #Picrew #たまごむしメーカー』
かわいいですね!!
秋の桜子さまのマイページはこちら♪
https://mypage.syosetu.com/1329229/




