5. 部屋と三角関係と私
20%ほど汚部屋と化したハルミと和樹の新居の汚布団の中で、©*@«はº*≅¿に解説した。
「まずはだな、ハルミをなんとかせねばならん。で、ハルミの思念を読んだところ……どうやら」
ここで、わざとらしく声を潜め期待感を煽る©*@«《ピンハネ》である。
「どうやら、今回の不調の陰には、ひとりの女が絡んでいるらしい」
「おおっ!」 º*≅¿は、見事に喰い付いた。
当然である。何しろ、見たかった地球の昼ドラ的どろどろ展開なのだから。しかも、事実はドラマよりも興味深い。
「旦那の浮気! 三角関係! それはおもしろ……」
はしゃいでつい宙返りしそうになるのを、上司の沈鬱な思念を感じとって、抑える。
「それはけしからんですな!」
「そうだ…… 和樹のやつ…… けしからん……! 2人目だぞ、2人目!」
「そうですよ!©*@«さまなど、未だに気高い身であられるというのに……!」
「ハーレム持ちリア充男など総攻撃で失血死させるべし!」
「同意!」
「……と言いたいところだが、ハルミが今より塞ぎ込んでは話にならんからな」
どろどろ昼ドラ展開が観られるなら、正直どっちでもかまわない、と思うº*≅¿である。
「では、和樹がハルミの元に帰ってくるよう…… その女に総攻撃をかけ、失血死させましょう」
「うむ……だが、アイツは浮気相手が死んだからと言って、スッキリきれいに忘れられるヤツではない……!
むしろ、引きずりまくってハルミにより悲しい思いをさせるやも……」
「ふたりに対する深い理解ですね」
「ふっ……º*≅¿とて、わかるだろう?」
「いえ、私には昼ドラ 『家政婦は床』 のドM家政婦の心情の方がよく理解できますが」
「いやいや……」 「いえいえ……」
と、ひとしきりじゃれ合った後。
「まずは情報収集だな」 「ですね」
こう結論づけた、miniの中でも1、2の優秀な頭脳を誇る彼らは、早速、指令を出したのだった。
「全miniに告ぐ! 我らが 『地球の母』 ことハルミの危機である! 至急 『茅波 麗』 についての情報を集めよ……!」
..º*¿¤*§º*ゝ..
その日の旧湖家の夕飯は、カップ麺だった。
「うう……ゴメンね……今日もちゃんと作れなくて」
謝るハルミに、和樹は朗らかに 「大丈夫だよ!」 と応じる。
「俺、カップ麺好きだし! この合法麻薬 『天然合わせダシ』 をキメればさらに美味しくなるって、ハルミも教えてくれたじゃないか……!」
「うう、ごめん……」
「だから、謝るなって! そうだ、ちょっと待ってな!」
身軽に立ち上がり、キッチンで何やらゴソゴソとする和樹。
しばらくして、両手にプレートを持って現れた。
「ほら、卵焼きとリンゴ。 これで栄養もバッチリだろ!」
「……ごめんね……和樹ちゃん……疲れてるのに……」
「こんなの大したことない、って!」
和樹は親切な男である。
が、昔から、人の感情の機微には疎いところがあり……
今も、ウツ思考に陥ってるハルミが (あああ…… 大したことない…… だよね…… こんな簡単なことさえできない私なんて…… もうクズ以下なんだ……) と、いじけていることには全く気づいていなかった。
もちろん、ハルミのウツ思考の最大原因が、自分と茅波 麗とのやりとりである、などとは全く理解しておらず。
「ハルミは、お腹に赤ちゃんが居るんだから、のんびりしていればいいんだよ!」
明るく笑う彼は、思いやりに満ちていた。
そんなふたりを、なりかけ汚布団から鑑賞して、「いいヤツなんだが……」 「ですね……」 と、跳ねる©*@«とº*≅¿。
問題は、その思いやりが、他人に対しても、しばしば度を過ぎることである。今も。
「あ、俺、明日、茅波さん家に行くから! 彼氏が1週間ずっと帰ってきてない、って……悩み過ぎてて、見ていられないんだよね」
そんなオマエが見ていられんわ、とツッコミを入れるminiたち。
「なんでハルミの悲痛な表情や 『不親切な女だと思われたくないけどイヤぁぁぁ』 という心の叫びに気づかないんだ!?」 「皿を洗っている途中だからではないでしょうか」 「だな」 「ですね」
テレパシーで納得しあいつつ、同時に、高く宙返りしたのだった。
「「この、リア充ハーレム男め……!!」」