表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
化物だらけの電脳世界  作者: たいやき
2/7

実装とチート

眠い目を擦りながら、俺こと四谷空は朝のニュースを、ぽけーという擬音が聞こえてきそうなほど食い入るように眺めていた。さっきまでの天気予報のコーナーとは打って変わって、その目にはジュールを弾き出せそうなほどの熱量が、満遍なく込められていた。

ゴールデンウィークということも相まり、『降水量102%』とか『晴れ後、晴れ』とか言われても、全く心に響かないことも理由の一つではあるが、勿論それだけでは無い。


新『NEO』、今日よりサービス開始!!


眼前に踊るそのテロップの、新『NEO』という語呂の悪さに苦笑しながら、ベットに転がるVRヘッドギアへ視線を向ける。

朝の地上波のニュース番組で流す内容かは甚だ疑問だが、それだけ大勢の人が固唾を飲んで見守ってる証拠だな。


「待たせ過ぎなんだよなぁー」

独りごちたその言葉は、しかし、3割の国民の言葉を代弁した物だった。


『Never End Online』略して『NEO』。数十年前、PC用ゲームとして開発されたそのゲームタイトルは、綺麗すぎるグラフィックと練り込まれたシナリオ、一線を画すゲーム性に瞬く間に支持を得、爆発的な人気を博した。その熱狂ぶりは、後にパクリや下位互換と呼ばれるゲーム達がゴロゴロと出回るほどだった。

だが、それはどこまで行っても一過性の物。ゲーム開発という商売は需要があって初めて成り立つ物だ。時が経つに連れ需要が減少するのは、もはや世の理と言うべきだろう。手を変え品を変え、様々なイベントを配信しプレイヤーを釣ってきたが、万策も尽きたのだろう。ついに、プレイヤーの減少を止める術は、誰の手の中にも無かった。

そして、サービス開始してから28年。大勢のプレイヤーに惜しまれながら、人々に愛され続けた化け物タイトルは呆気ない終わりを迎えたのだった。


だが、その翌年。『NEO』はタイトルをそのまま、家庭用ゲーム機のゲームとして転身を果たしていた。しかも驚くことに、再びゲーム界に物議を醸したのだ。

コントローラーを用いない、思念によるキャラクター操作。そんな御伽噺みたいな妄想を、試みたのだ。


そして特殊な装置を開発し、想像した動きを完璧に再現させることに成功したそのゲームタイトルは、またもや家庭用ゲーム機とは異例と言える大ヒットを叩き出したのだった。


NEVER ENDの名の通り、媒体を変えては『NEO』というゲームタイトルで、革新的で革命的な発想で際限なく売れ続けた。

果てには、あの任○堂のポケ○ンやカ○コンのモン○ンなど、目が無いほどのギガヒットで、『世界一売れたゲームタイトル』として、ギネスに掲載されたほどだった。


一度発売されれば他が霞むほどに注目を浴び、例え潰えても何度でも蘇るその悪辣な性質から、ネット民から『魔王』とさえ揶揄された『NEO』は、70年と続く超ロングタイトルとして、今尚トップを走り続けている。


そして前作の、旧VR対応の『NEO』から3年。デザインも性能も一新した、言うなれば新VR対応の6代目『NEO』のサービスが、満を持して開始されるのだ。


「クラスでも、その話題で持ちきりみたいだしな」

既にクラスラインでは、自分がどの種族になるか、職業はどれにするかで白熱している。見た感じ、クラスの2割程はソフトを持っているようで、後の6割はそいつらに質問攻め、残りの2割は興味無しって所か。

そう考えると、現段階で個人ラインを繋いでいる奴は、全員漏れなくソフトを保有しているので、間違いなく類縁というやつなのだろう。

楽しみにしているのは重々承知だが、そんなに通知を飛ばさないで欲しい。おかげで寝不足だ、と呪いを込めたメールを全員に送り返す。


「そろそろか」

ヘッドギアを手に取り、頭に装着する。


「この瞬間は、何事にも変え難いな……」


意識は薄明へと溶けていった。



「アニョハセヨー。皆んなお馴染み、社畜ナビゲーターのナビーだや」

光の無い空間に、二頭身の猫耳を生やした少女の影が鮮明に映りだす。

昔から同じようなデザインでゲームのナビゲーター役を務めていたくせに、決まった名前を貰えなかった悲しい奴だ。哀れ過ぎて一般のプレイヤーから、ナビーと言う愛称をつけられたのだ。

「唯一の皆勤賞なのに、ちっとも待遇が改善しないナビーだや」

「いや、知りませんよ」

俺に愚痴るな。


「まずは名前を決めるだや」

順序は大事と活字で書かれたTシャツを着たナビーが、そう促してくる。

前作と同じように『フォーレ』にする。名前の由来は単純で本名の四谷から、英語読みをして『フォー』と『バレー』。それを適当に組み合わせただけだ。谷要素が希薄だが、そこはどうでもいいだろう。


「次は見た目を弄るだや」

現実の自分とそっくりな姿が、目の前に浮かび上がってくる。変えられるのは髪型や髪色、それに身長や体重だ。身長や体重と言っても、ガタイや体型は変えられない。変更できるのはあくまで大きさだけで、比率は変えられないし、筋肉もつけられない。容姿の方は言わずもがなだ。

それに不満を持ってる人は少なからずいるが、文句があるなら違うゲームをやればいいだけ。どこまでもリアルが『NEO』のキャッチコピーである。

髪型や体は弄らず、髪色は薄い水色にする


「次は、種族を決めるだや」


このゲームは職業選びがとても大事だ。これによってゲームが始まる場所も変わってくるのだから。

選べるのは、六種族の中で五つ。万能なヒューマン、力があって俊敏なビースト、器用で便利なエルフ、硬くて丈夫なドワーフ、賢明で魔力の多いエビル。


俺は迷いなくヒューマンを選んだ。


「次は職業を決めるだや」

こっちは恐ろしく自由度が高い。派生する基本的な職業だけで、軽く二百を超えているのだ。


ここは、野武士のぶしを選ぶ。


「後、ステータスとかとか適当に選ぶんだやー」


ステータス

●STR 50 ●INT 0 ●DEF 15

●MGR15 ●AGI 50 ●DIX 35

●MND 15 ●LUK 20


こうなった。


「これで、決めれる内容は全部……やや? 君は『スライムの占星館』を初攻略してるだや。そんな華々しい成績を挙げた君には……プレゼントがあるがや!」


そう言うと、地面からルーレットが出てきた。


『何が出るかな? 何が出るかな?』


それパクリじゃないか?

不安になりながらボタンを押してルーレットを止める。


『やったね! 新スキル〈生者喰らい〉を手に入れたよ!』


何だこれ? 枠が虹色で囲まれている…これ、ユニークか!

こんなスキルが序盤に? とにかく詳細を見よう。


〈生者喰らい〉

一時間の間プレイヤーを倒せば倒す程、LUK以外のステータスが上がっていき、どんどん強くなる。更に、いくらプレイヤーを傷つけてもカーソルが変わることは無く自由に行動できる。ただし、死んでしまったら倒した人数と比例するようにデスペナルティが長くなる。現実の時間で一日に三回しか使えない。


発動中、常時STRとAGI1.2倍 DEFとMGR0.8倍


えっ…… もしかしてこれって… まさか?

チート?


ー*ー*ー


●STR(筋力) 武器や武技の威力に関わる。

●INT (知力) 魔法の効力に関わる。

●DEF(防御力) 攻撃による被ダメージを抑える。

●MGR(抵抗力)  魔法による被ダメージを抑える。

●AGI(敏捷力) 攻撃の回避や素早さに関わる。

●DIX(器用力) 武器補正やクリティカルに関わる。

●MND(精神力)  状態異常や“怯え”に掛からなくなる。

●LUK(幸運力) ドロップ率やクリティカル率が上がる。


スキルは基本的にゲームプレイ中に条件を達成することで取得できます。


(例) 刀を扱う→刀術(初級)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ