[146]
[146]
6月の試験で1位を取ったら、生徒会の助っ人にして欲しい。とスプリセルが頼んできたから、クレストールに怒られながらも、セチロに頼んで許可を取ってもらってあげたというのに。いざ1位を取って、生徒会入りが確定した途端、人のことを色々と悪しざまに言ってきたスプリセルには腹が立ったが。それでも、約束は約束である。
放課後になり、いつものメンバーに、前日までは見学者でしかなかったスプリセルを同伴して、生徒会室へ向かう。。
そして、いつも通りにアルサルミンが代表して扉をノックし、「失礼します」と扉を開いて、みんなを引き連れ中に入って行く。
「こんにちは。クレストールとスプリセルは1位おめでとうございます。アルサルミンとネーヴェ、アタラックスは3位おめでとうございます」
「ありがとう。それで、早速で悪いんだけど――」
「あ、スプリセルの机なら、昼休みに、今まで座っていただいていた場所に、机を用意しておきました。そちらを使ってください。それ以外の細かなことはアルサルミンから説明を受けてくださいね」
「よろしくお願いします。今日から改めてお世話になります」
アルサルミンがスプリセルの件を切り出そうとしたところ、すぐに察してくれたセチロが笑みを零しながら、状況を説明してくれる。
それに対し、スプリセルが改めて挨拶をしていた。
――礼儀は正しいんだけどねぇ。
ちくしょう。と、アルサルミンは思ってしまう。
正体を知っていたなら、スプリセルからお願いされたところで、きいてなどあげなかったのに。と思いはするが、実際はきっと、不満に思いつつもセチロにお願いに来たことだろう。
自分の甘さが情けない。と、アルサルミンは悔しく思う。
そんなアルサルミンの異変を察知するよう、ネーヴェがアルサルミンを抱き締めてくれる。
「アルサルミン、あまり考えすぎないようにしてください」
「ありがとう、ネーヴェ」
ネーヴェも柔らかな感触を楽しみつつ、アルサルミンはお礼を言う。
一番後ろの席に座っているネーヴェには、2人の会話は聞こえなくても、アルサルミンの行動をしっかり見守ってくれているのだ。そのため、アルサルミンがスプリセルとなにかひと悶着やらかしたことを、アルサルミンがスプリセルの頬を摘まんで引っ張っていた姿から、察してくれているようである。
体で覚えてしまったネーヴェの感触を堪能していると、後ろからハルシオンとマイスリーが入って来た。
「また女とイチャついているのかよ。お前、本当に女か?」
入る早々、挨拶より早く、ハルシオンがアルサルミンに呆れた口調で語り掛けてくる。
「ネーヴェに抱かれる心地の最高さを、ハルシオンは知らないからそんなことが言えるんだよ」
「いや、知りたくねぇし。つーか、男の俺がお前みたいに、喜んで浮かれて感想なんて口にしようものなら、変態扱いされるだろ」
「うん。するね! 私だったら、『うわー、変態がいる!』って引くよ」
「だったら、推奨するんじゃねぇよ」
「誰もネーヴェを貸してあげるなんて言ってないでしょ。ネーヴェは私専用なの。ちなみに、イオンもラミクタールも私専用だから、手を出しちゃダメだからね」
「出さねぇよ! つーか、俺を犯罪者にする気か?」
先に売り言葉を放り込んできたのはハルシオンなのだが、それを忘れているようだ。
アルサルミンはそのことを指摘しようと思ったのだが、それより先に、レクサブロとアタラックスが「失礼します」とノックと共に入って来た。
そして、生徒会室の入り口前に人だかりができている状況から、アルサルミンとハルシオンが漫才をしていることに気が付いたようであった。
「今日の演目はなんですか?」
「見世物になっていますね。邪魔になりますし、そろそろ席に着きませんか? ラミクタールのお茶の時間ですよ、アルサルミン」
揶揄うように告げてくるアタラックスに、クレストールは苦笑を混ぜつつ、この場を一時お開きにするよう、促してくる。それを機に、ネーヴェがアルサルミンから離れていった。
――うっ。終わっちゃった。
残念に思いながらも、生徒会室にて永遠と抱き合っているわけにもいかないので、アルサルミンはそこで諦め、ラミクタールがお茶を入れる準備を開始したのを受け、自分の席へ向かって行く。
そして、ハルシオンとマイスリーとレクサブロとアタラックスが、3つ目の机が運び込まれているのを目にして、セチロの方へ視線を向ける。
「これって……」
「本当は、定員オーバーなのでお断りしていたんですが。6月の試験の結果が1位だったら生徒会に助っ人として入れて欲しいという強い要望をいただきまして、その条件が達成された場合は、生徒会に入ることを認めることにさせていただいてました。事後承諾になってしまってすみません」
セチロが謝ると、4人はそういうことかと、すぐに納得したようであった。
「まぁ、婚約者のいないフリーな王族をそのまま放置ってわけにもいかないでしょうし。監視下に置くという意味では、生徒会に入れるのが一番手っ取り早いですからね」
他国のではあるが、自身が王族であることから、セチロが承諾した理由の半分をすぐに察するよう、アタラックスが口を開く。
「そうですね。この年でフリーの王族は貴重でしょうから」
レクサブロも、アタラックスの言葉を受け、すぐに納得する。
それを受け、アルサルミンは隣のサイレースに小声で問いかける。
「ねぇ、そんなにフリーの王族って少ないの?」
「あ? そりゃそうだろ。特に王族の男は10歳くらいになると婚約者探しを始めるからな。基本、国民や国の管理を任されている者たちから、若い内の結婚を望まれているし」
「そうなんだ……」
アルサルミンは思い付きでクレストールに訊ねたのだが、婚約者のいない同年代の王族が存在していたことは、ある意味ラッキーだったということなのか。
婚約が成立していないので、微妙なところではあるけれど。
――でも、スプリセルがやっぱり王族の一員だってことが分かったから、ラミクタールがお付き合いを断ってくれていた助かったかも。
交際後に、あの腹黒毒吐きが判明したら、ラミクタールに謝っても謝りきれないところであった。
そんなことを考えていると、ラミクタールが声を掛けてきた。
「はい、アルサルミン。今日は私が昨日作ったクッキーです。お口に合うといいのですが」
「わー、ありがとう! ラミクタールが作ってくれたものだもん、美味しいに決まっているでしょ」
生徒会長のセチロから始まり、ネーヴェが座る机を回り、助っ人の机組を回り、レクサブロとイオンを経由して、最後にアルサルミンの机に辿り着く。しかも、クレストールから渡していくので、アルサルミンはお茶を受け取るのは最後から2番目となっていた。
そして、アルサルミンにひと言声を掛けてくれると、ラミクタールは自分用のお茶とお菓子を持って、席に着くのである。
ちなみに、男子と女子では添えられるお菓子の量が変わるのだが、アルサルミンだけ男子と同じ量が貰えていた。別に希望したわけではなく、ラミクタールの判断で、そうしてくれたのである。有り難いことに。
「わーい。今日もとても美味しいよ。お茶も、お菓子も、最高だよ」
「ありがとうございます。アルサルミンがいつもそう言ってくださるので、お菓子の作りがいも、お茶のいれがいもあります」
嫌なことなど棚の上に置き、目の前の幸せを噛みしめるアルサルミンが、素直に喜んでいると、ラミクタールが嬉しそうに応じてくれた。
――絶対、いいお嫁さんになるよね。
悪役ライバルとして、ラミクタールを必ず幸せに導いてあげるから、待っていて! と、アルサルミンはお菓子を頬張り、お茶を飲みながら、ラミクタールに向けて心の中で叫んでおく。
そして、お菓子を食べ終わり、お茶を飲み干すと、アルサルミンはひと心地つく。同時に気持ちを切り替え、席を立つと、後ろの棚と向き合った。
その間に、ラミクタールがお菓子の皿とティーカップとソーサーを回収していく。
お茶の時間が定着するころになると、数名が貰いものだというお皿やカップを提供してくれ、棚の中には綺麗で高価そうなお皿やティーカップやソーサーが所狭しと詰め込まれていた。そのおかげで、目の保養もできるようになり、お茶やお菓子の美味しさが倍増した感じである。
そして、ラミクタールが洗い物を始めるころに、アルサルミンが棚の中から現在使っている資料やノートを取り出して、それぞれ組みを作っていき、みんなに配布していくのである。
今日は、新たなひとセットを作り、それをスプリセルの前に置く。
「説明は、後でするからちょっと待ってて。先に全員に配っちゃうから」
アルサルミンはそれだけ告げると、抱えている資料とノートを、他の席へ置いて行く。それが終わると、改めてスプリセルの席へ向かう。
「スプリセルには、この資料のまとめをしてもらうことにしたから」
「わかった。それで、どうまとめればいいんだ」
「それなんだけど――」
スプリセルの頭の良さを認めた上で、ちょっとややこしいお願いをすることにしたため、アルサルミンはそのあたりを中心に説明をしていく。
「できそう?」
「できると思ったから持ってきたんだろ。なら、やるだけだろ」
「ありがとう。期待しているよ」
文句を言うことなく、頼まれたことをそのまま実行してくれる気でいるらしいスプリセルへ、アルサルミンは素直にお礼を言う。
「それじゃあ、よろしくね」
それだけ告げると、アルサルミンは自分の席へ戻り、自分の仕事を開始する。
そのころになると、みんなはすでに作業に没頭し始めていて、アルサルミンが集中することには、ノートにペンを走らせる音や、資料を捲る音くらいしか生徒会室に響かなくなっていた。
それから1時間は経ったころ、途中の休憩を入れることにしたらしいセチロが、みんなに向けて声を掛けてきた。
「それで、順位の発表も終わって、試験に一区切りついて、みんなも落ち着けたと思うので、約3週間後に控えている夏休みに入る前日に行われる、今期最初のイベントに関してなのですが、そろそろ話し合いを本格的に始めたいと思います」
試験が終了したら話し合おうと言ってはいたのだが、試験の区切りがつくまでと先延ばしとなっていた、夏休み前日の生徒会主催のイベント。ようやくその区切りがついたことで、本日の本題を切り出してきたセチロへ、みんなの視線が集まっていく。
「生徒会宛に、希望が数通届いています。3通ですが、すべて職員室前の『ご意見箱』に投函されたものです」
「希望かぁ。去年はそんなもの無かったのに。すごいね」
「魔力合戦のおかげですよ。あれは好評でしたから。夏休みを使って、みんなで苦労して考えたおかげですよね。本当にみんなには感謝しています」
「魔力合戦かぁ。今期も優勝して、賞品に同じものをねだるって言うのも芸がないよねぇ」
「そっちの方も、おいおい考えていかなければと思っています。今期はつまらなかったと言われないためにも。生徒会役員になるために立候補し、演説を行った際に約束したことを実行していうためにも」
「そうだよね。今期はつまらなかった、とは言われたくないよね」
「そうならないためにも、先ずは夏休み前日のイベントのことを考えましょう」
「あ、ごめんなさい。先を続けて」
謝罪をするアルサルミンへ、セチロは笑みを返してくれると、再びみんなに向けて話しかけていく。
「それで、手紙の内容なのですが。新入生と2年生の平民の有志の名前が連なった、ダンスパーティを望むものが1通。毎年ダンスパーティなので、他のものをやって欲しいというものが2通。こちらは両方とも名前は無記入の、個人からのお願いですね」
「手紙の数で言うと、違うものをやって欲しいっていう方が多いけど。希望人数的にはダンスパーティの方が多いってことでいいのかな?」
「そうなりますね」
セチロの説明に、確認を取るようアルサルミンが問いかけると、セチロは頷く。
「内容は、以前ネーヴェが言っていた通りです。新入生と2年生にとっては、4月2日の学園年齢加算の食事会しか、ドレスを着る機会がありませんからね。折角手にしたドレスを着る機会が欲しいみたいです。それと、新入生は、ダンスパーティというものを体験したいみたいですね。2年生も、夏休み前日に行われる生徒会主催のイベントでダンスパーティが行われないと、3年になるまで体験できませんし」
「はい。平民寮へお邪魔するたびに、下級生の新入生と2年生から、ダンスパーティの希望を受けています。だけでなく、平民はドレスなんて普通は買いませんし、着ませんから。新入生や2年生だけでなく、寮生のほぼ全員が、この学園にいる間しかドレスを着ることはないと思っています。そのため、少しでもドレスを着る機会が欲しいと思っているようです。もちろん、そうじゃない方もいるみたいですが、そういうのは本当にごく一部の方で、大半はドレスを着たがっています」
補足するようにして、平民用の女子寮の意見を代弁するネーヴェは、彼女たちの願いを叶えてあげたいと思っているようである。口調はいつもより熱がこめられ、みんなに訴えるように語り掛けていた。
アルサルミンも、平民用の女子寮にはお世話になった身である。今も、ネーヴェより回数は少ないが、ネーヴェと共にたまに平民用の女子寮へ遊びに行ったりしているのだ。
ただ、残念なのは、遠慮しているのだろう。アルサルミンには、そういった訴えをしてくる者はいなかった。
そんな感傷に浸っていたアルサルミンであったが、セチロが続けて手にした2通の手紙を見て、思考を一旦クリアにする。
「それでこっちのダンスパーティ以外を希望する2通は、共に、魔力合戦がこれまでと違ってとても楽しかったので、イベントも楽しいものにして欲しいということでした。平民と違い、パーティ用とは異なって質素ではありますが、貴族にとってはドレスは日常着ですし、ダンスパーティも身近なものです。それに、成人前にさほど経験していなくても、成人してからは、最初は出会いの場として。その後は、仕事の付き合いや貴族同士の付き合いで、身近な存在となっていきますからね。ダンスパーティより、楽しいイベントがあれば、そっちの方を体験したいようです」
「そっちは貴族からか」
セチロの解説はもっともなもので、希望する内容の違いは、平民と貴族の違いによるものとなるのだろう。
「ここで、平民の希望を採用すると、去年の宣言もあるし、立候補の時の演説でも主張しておいたから、貴族の中で文句を言う人が出てきそうだね」
「かといって、貴族の希望を採用すると、去年の宣言。もしくは、立候補演説で主張したことは形だけだったのかと、平民に責められそうですよ」
深い意味はなく、感じた意見をそのまま口にすると、クレストールが有り得そうなことを言ってくる。そして、結論を添え足した。
「つまり、そういうことです。そこを悩みどころにするのは無意味ですよ」
「うん。そうだよね……」
クレストールの言っていることはよく分かる。ただ、折角イベントを行うなら、生徒会の主張に基づいたイベントにしたいと思ってしまう。けれども、悩む時間と準備時間は放課後だけで、実行日まで3週間という現在で、出来ることが限られているのも事実である。
「でも、ダンスパーティじゃないものって言っても、オリエンテーリングとか、ありきたりなのはつまらないから却下なんだよね」
「特殊な趣向を凝らせば、問題ないのでしょうが。時間的にそれは難しいかと」
悩みながら述べた台詞へ、ネーヴェがアルサルミンが頭の中で考えていたことと同じことを告げてくる。
そんなやり取りを聞いていたサイレースが、軽く手を上げて意見を言う。
「俺としては、平民側へ一票だな。匿名の貴族からの2通は、要するに、生徒会で変わった遊びを考え出して『俺たちを楽しませろ』って言っているだけで、どういうことをして欲しいとはなにも書いてないわけだろ。完全にこっちへ丸投げして、我が儘を言っているだけじゃねぇか。そんなもん、意見の1つとしては聞いておく程度でいいと思うぞ」
「確かに、そうかもしれませんね。はっきり希望を述べている平民からのリクエストの方が、好感はもてるかな。貴族からの手紙は、お客様気分で、難しい部分は他人任せで美味しい汁だけを吸いたい的な部分が、見えてしまいますから」
サイレースの意見に、アタラックスも同意する。けれども、レクサブロは意見が違うようだった。
「丸投げされている気はするし、リクエストのひとつくらい添えてあってもいいとは思う。だが、今考えているのは、生徒会主催のイベントだろ。どんなことをするのか考えるのが、生徒会の役目じゃないのか? 面白いことをやってくれというのも、大事な意見の1つなのではないか? 意思表示をしてきただけでも、手紙を出した意味は大きいと思うぞ」
「僕もレクサブロの意見には同意です。なにも言ってこない人よりは、声を出して希望を述べてくれただけでも、1つの意見をいただけたと感謝すべきじゃないでしょうか。ただ、抽象的に『なにか楽しいことをして欲しい』という手紙よりも、『ダンスパーティをして欲しい』とはっきり希望が書かれている手紙の方を、優先してあげたいと思ってしまいますが」
レクサブロの意見を聞いて、それに同意するようにマイスリーが軽く手を上る。しかし、続けられた言葉は、サイレースやアタラックスに近いものがあった。
要するに、生徒会での貴族2人からの手紙の受け止め方を、重く受け止めるか、軽く受け止めるに留めるかの意見の違いはあるようだが、希望内容をはっきり明記している平民からの手紙の方が、イベントでなにをすればいいのか分かりやすいので、意見を取り上げやすいということらしい。
アルサルミンも、それは感じていた。
そもそも、楽しいことと言われても、こちらが色々考えて趣向を凝らしたところで、手紙をくれた2人が楽しいと感じてくれるかどうかは、やってみないと分からないのである。だから、頑張って策を弄してみたところで、返ってくる感想が『つまらなかった』『期待外れ』『こんなことなら、ダンスパーティの方がよかった』とかだったりしたら、だったら提案の1つでも添えておけと言いたくなることだろう。
そう考えたら、希望者もいることだし、前年度同様に、無難なダンスパーティを選択したくなってしまう。
セチロも悩みどころなようである。しばしみんなの意見を聞いていたセチロは、提案するように意見を述べた。
「そうですね。イベントまで3週間ですし、例年とは異なり、ダンスパーティ以外のイベントを行おうとするのでしたら、内容について話し合いできるのは1週間ですね。備品の準備もしなければならないでしょうから。それに、今話し合っている夏休み前の生徒会主催のイベントより、去年という前例があるので、魔力合戦の内容の方に期待している生徒の方が多いと思われます。周りの反応などから、俺の受けている印象ですけど」
セチロはちょっと厳しいことを言ってみせると、一旦口を閉じる。そして、セチロの話しに耳を傾けているみんなへ視線を向けた後、改めて口を開いた。
「同じ生徒会主催ですし、両方を全力で思案し準備するのは当然ですが、現実問題として費用の面もあります。凝り方の方向性もありますが、魔力合戦の内容もですが備品にも全力を投じたいのであれば、かかる費用はかなりものです。実際、去年の魔力合戦の備品や会場設置、その後の片付け、備品の処理にかかった費用は、夏休み前のイベントをダンスパーティに抑えておいたから、王族の方にひと声添えてもらったこともありますが、先生方から許可が下りたというところがあります。ですので、夏休み前の生徒会主催のイベントは、ダンスパーティにこだわる必要はありませんが、経費を抑えた内容にしておくというのも、1つの考え方だと思いますよ」
セチロはひとつ提案するように告げた後、続けるようにして話しを締めくくった。
「とにかく、今日話し合いを始めたばかりなのですから、考える時間が多少は必要でしょうから、今日中に結論を出す必要はないと思います。明日に一度多数決を取りましょう。それまで、手紙の件、費用の件、時間の件、それらを含めてそれぞれ考えてみてください」
生徒会長として司会を務めるセチロは、去年はひとりで抱えていたお金のことまできちんと説明し、そういうことを踏まえた上で、みんなにどうしていかを訊ねることにしたようである。みんなにお願いするように告げると、イベントについての話し合いは、一度閉じられた。
誤字脱字多発中。少しずつ直していきます。すみません。




