第09話 魔法の世界で携帯電話を創ります
本格的に進みにくい。早く二人を合わせたいのに・・・
梨里杏が日本で兄とのお茶会ミーティングをしている頃、ルディたち魔王討伐パーティーメンバーはエルオレラ王国、国王ロミラス・ハンス・エルオレラ三世に魔王討伐の報告をする為に謁見していた。もっとも公の場所での謁見は形式に通りで終わり、国王は早々に謁見の間を後にしていた。別室ではルディの幼馴染でもあるエルオレラ王国第1王子ユルゲン王子と賢者マーロンと討伐メンバーの四人で内輪の話をしていた。
内容は魔王討伐に関することからはほど遠く、もっぱらルディの初恋についてで、これには賢者マーロンもも驚きを隠せなかった。師匠であり、その前に親代わりでもあるマーロンはルディに人並みに恋する感情が芽生えたのかと内心喜んでもいた。幼い時から実の親にすらその持って生まれた力のせいで腫物でも扱うように身構えられ、心無い村人からは化け物扱いされていた。
それ故に、長年かけて心を許した相手以外は羽虫の如く扱うか視界にすら入らないと言った具合だったのだから天界だろうが地獄だろうが異世界だろうがルディに好きな相手が出来た事がマーロンはとても嬉しかったのだ。
「ほほほ、ルディが好きになった相手とな、是非ともお会いしたいものじゃ」
「そうですね、私も是非お会いしたいし、我が妃とも仲良くして頂きたいな」
「ええ、直ぐにでも皆さんにご紹介したいところですが、少しばかり遠いところに住んでいますので少々お時間が欲しいですね。」
「ほほほ、そうじゃの、次元が違うようじゃからの、わしも一つ協力しようかの」
「ええ、勿論そのつもりでした、今回の件は師匠の協力が不可欠です! 」
いつもはどんな事でも人を頼ったりしないルディの変わりように王子やパーティ仲間、マーロンでさえも驚愕し、本当に今回の出会いがルディには特別なことなのだと皆何も言わずとも伝わっていた。
「私たちも協力を惜しみませんわ」「そうそう、なんでも言いな」
「お二人ともありがとうございます。それでお二人はいつまで王国に?心配なされている方がいるでしょう。早く顔を見せて安心させてあげて下さい。カイトの帰還はまだ少し先になりますのでその前に一旦国へ戻られた方がいいですね。」
「ああ、まさかルディからそんな言葉が出てくるとわね、考え深いもんだね」
「ええ、その通りですわね。ちょっと鳥肌が立ちましたわ」
「・・・君たち随分失礼な言いぐさですね。まぁ今回は大目に見ましょう」
「あたしは、この後国に戻るよ。ルディに貰った転移石があるから呼ばれれば直ぐに駆けつけられるからね」
「同じく、私もですわ。猊下にお顔を見せに一旦戻りますが、カイト様の帰還の折には呼んでくださいませ。それ以外でも何かあれば直ぐに駆けつけますわ」
「おお、ありがとな!帰るときは必ず声を掛けるからよろしくな」
「「はい、わかりました」」
10年間苦楽を共にした討伐メンバーが解散になった瞬間であった。そしてそれぞれがこれから自分たちの道を切り進んでいくのだが、やはり一番厄介なのがルディであろうことは皆の共通認識であった。
翌日早朝からルディとカイトはマーロンの研究室へ出向いていた。
「マーロン様、これを見て頂けますか? 」
取り出したのは梨里杏のアトリエにあった鏡を魔法で模して創り創生魔法をかけたあの鏡だった。それを見たアーロンは、その鏡が魔力を集める魔法道具で対になるものが存在していることに気が付く。
「それは対になる鏡を持つものと連絡を取り合える魔法道具かの? 」
「さすがお師匠様、その通りです。私が飛ばされた世界は魔法が無い世界で彼女との連絡手段を考えた時、ちょうど月が見えましたので鏡に月の魔力を集めることで起動する魔法道具を創って片方を置いてきました。ただ、あまり時間が無かった事と異世界の月がひと月に一度しか満月にならないと知って魔力不足で期待通りの動きをしない魔法道具になりました」
「ほほほ、成る程の。愛しい人に月一しか連絡が取れないのは困るじゃろう。しからばその魔法道具の性能を上げることが先決かの。ふむ、その世界の魔力補充は月だけだったのかの? 」
ルディは、カイトに聞きかじった内容を話、難しい話にたじたじになるカイトがなんとかマーロンへ異世界の説明をし、魔法道具の改良が可能だと結論が出てる。その原理を元に異世界から次元の干渉を受けずに梨里杏の元へ行き来出来る魔法の創生及び魔法道具の創生を考える事になった。
地球風に言えば『通信機』は簡単に改良が出来るが、異世界間転移はかなり厳しい展開になりそうだった。しかし世界のトップ1・2の頭脳が同時期に同じ場所に集まっているのも運命に導かれた結果だと後に気が付くことになる。さらに三人で話しているうちにカイトが日本、それも梨里杏と同じ時間軸にいる事が判明すれば、その事実が梨里杏とルディ二人の未来を運命づける。
その事実に気が付きルディは今にも歓喜の舞でも踊りそうになるが、それよりも早く通信機の改良をしなさいとマーロンに窘められるルディは子供のようだった。マーロンからのアドバイスとカイトの世界で使われている携帯電話と言う通信機を参考に創り出す事に成功する。最後の仕上げは梨里杏の世界が満月の日、こちらの世界と繋がった時にそれぞれの創り出した魔法道具に鏡を組み込めば完成である。
柄にもなく早く異世界との交信を今か今かと待ちわびるルディの姿は恋する少年そのものだった。
次こそは遠距離恋愛 行きます。たぶん、きっと。




