第07話 親友は男気溢れる脳筋勇者
次元の裂け目に飲み込まれ、行方不明の五日間、カイトがいた世界へ偶然飛ばされそこで運命の女神に出会ったことをパーティーメンバーに熱く語って聞かせていたルディを前に女性陣二人は奇妙な人でも見る表情で微妙に距離を取った、そんな二人に気がついてルディは目を眇めた。
「ロビン、フローラ、先ほどから二人のその視線の意味はなんでしょうか?かなり失礼な気がしますが」
「「…… 」」「ええ、まぁ」「そりゃね」
「なんだと言うのです、言いたいことがあればはっきり言ってください」
「だってルディ、あんたさ、数日前まで女はたまに相手するもので常に傍に置くのは疲れるって!それがちょっといなくなって帰ってきたら運命の女神に出会ったと言われても、あんた本物のルディなのかと疑うだろう? 」
「そうですわ、貴方の女性に対する態度は一見すると丁寧に見えて実は本気で相手をしていないのが見え見えですもの、先ほどからのお話には正直引いてしまいますわ、その女神は貴方の本性をご存知なのかしら? 」
散々な言われようで並の男性なら凹むところだがそこは賢者ルディである。図太さも世界レベルなので誰に何を言われても気にすることもなかったが、フローラの一言でかなり動揺してしまう。まだ互いに相手を心底分かり合える段階には至っていないのも事実だからだ。
痛いところを突かれたルディだがふと思い直す、フローラに言われた内容は全てが梨里杏以外からの自分への評価であり、ルディ自身も梨里杏以外の相手に真剣になった覚えがなかった。それを考えれば本性云々というのも多少感じ方の違いというものだろう。
「フローラ、本性と言われますが、愛する相手に見せる姿が本性なのですから、彼方が思う私はそれこそ真実の姿ではありませんね」
「「………… 」」
フローラもロビンも絶句である。端から口では絶対に敵わない相手だったが、恋する男はさらにバージョンアップしていたようだ。
そんな光景を面白そうに見ていたカイトは日本から召喚され10年の付き合いになるルディにやっと愛せる相手が現れたことを素直に喜んでいた。日本に愛する嫁と娘がいて、召喚されてからというもの暇さえあればルディ相手に惚気やら帰りたいと言って困らせたりと一方的に世話になっていた感が大きかったが今は、少しはルディの役に立つことがあり、まして好きになった相手が自分の故郷の女性と聞けば嬉しさも倍増する。出来る限りの協力をしてやりたい、その為なら多少帰還が遅れても構わないとさえ思うカイトだった。
「さあ、お前らもその辺でいいだろう。無事にルディが帰って来て安心したんだろう?素直じゃない奴らだな。それにいくら賢者でもルディも人の子だそろそろ休ませてやろうぜ」
「分かりましたわ」「分かったよ」
「ルディ、明日は国王様への謁見の儀がありますわ、お忘れなく」
「ああそれと伝言、マーロン様が早めに顔を見せろってさ」
「はい、分かりました。それでは明日またお会い致しましょう。ああ、すみませんがカイトは残って下さい」
女性陣は言いたいことを言って部屋を出ていき、後に残ったカイトは興味深い顔でルディを眺める。やはり今までのルディとは少し違う、何処がと言われるとカイトのボキャブラリでは上手く言えないがしいて言えば人間らしくなったと言うところだろうか?それに表情に柔らかさを感じる。これは本気だなとカイトは改めて思う。見た目は26歳の若者だが日本へ戻れば年の離れた嫁にベタ惚れの単なるおっさんなのだ。ルディの心の機微を察するくらいの人生経験はあった。
「ルディ、俺への用事はなんだ?早く休まないと疲れがとれねえぞ」
「お気遣いありがとうございます。それよりも聞きたいことがあるのです。カイトの世界の月とこちらの世界の月との相違点を聞かせて下さい」
「おお、お前…俺は頭脳派じゃないからよ、難しい理屈は分からないぞ?こっちの世界は夜になればいつでも丸い月が出ているだろう?雨や雲で隠れない限りいつも出てる」
「ええ、そうですね」
「だがな、地球、俺の世界の正式名な?地球は球体でその周りを月が回ってるんだよ。だから地球では月は毎日微妙に形が違って見えるんだ、ああ、地球も回ってるんだがな。これに太陽もかかわって来るから専門的に説明するのが難しいんだ」
「ああ、成る程、公転と自転周期があると、その日数は分かりますか? 」
「おおっ?お前な、ええと、公転周期が27日位だったかな?後は満月から満月までが29日位で微妙に周期が違うから満月の出る日も毎月少しずれるがひと月に一度は満月だな」
これは参りました、カイトの話が事実なら梨里杏さんの姿を見ながら話せるのはひと月に一度ではありませんか。こちらの常識で考えて、毎夜、鏡越しで会えると勘違いしてしまいました。どうにかして梨里杏さんに魔力を届けることが出来ないか、ああ、あちらの世界は魔法が無いから魔力だけあってもダメですか。せめて声だけでも毎日聴ける魔法道具が必要ですね。
「カイト、参考になりましたありがとうございます」
「おお、お安い御用だぜ、他に何かあれば言ってくれ」
「はい、それでは後一つ、これは心苦しいのですが、地球への帰還を少し待って頂いてもよろしいでしょうか?そんなにお待たせしないように致しますので」
「なんだ、そんな事か。10年もここにいたんだぜ?後数年位かまわないぜ、がはは! 」
「フフ、そんなにお待たせしませんよ、私は待てませんからね」
「なんだかよく分からんが、全てルディに任せるぞ」
ルディは勇者召喚された人物がカイトで良かったと心から感謝していた。それからカイトに遅くまで地球の細かな情報をあれこれ聞き出し、魔法は無いがそれに代わるような便利な通信機器の存在やいつのまにかカイトによる嫁自慢が始まり負けませんとばかりに梨里杏自慢が繰り出され女子会ならぬ二人だけのちょっぴり痛い男子会が遅くまで催された。




