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第04話 運命の人見つけた

「はい、分かりました。ルディさんを信じます」


 その一言を聞いた瞬間、身体に雷魔法を放たれたような錯覚を覚えてしまうルディだった。生まれて初めて心が震える程、綺麗だと美しいと思った事が今までなかった。それが今回異世界に飛ばされて初めての経験である。さらに美しい人が自分に見せた従順そうな笑みを湛えた言葉にルディははっきりとこの人に惹かれている。いや、そんな生易しい感情ではない、既に心を鷲掴みにされていると言って構わない状態だった。


 最早この人と離れる事なんて出来ない、もし、この思いを拒絶されても絶対離れないだろうなと、人に聞かれたらかなり怖いと思われる思考にまでなっていった。それに思い違いで無いならば、彼女も私を見つめる瞳には仄かな暖かな感情が見え隠れするが、自身の願望がそう思わせているかもと、らしくもなく少し自信が揺らぐ。


「梨里杏様、信じて頂きありがとうございます。ひどく不躾ですが、梨里杏様はここで一人でお暮しなのですか? 」


「えっ、ええ、そうです。ポポはおりますけれどね。クスッ、普段は家の事を頼んでいる通いの人がいますが、夕方には一旦兄がいる本宅に帰りますの」


「そうですか、女性の、貴女のように美しい人が一人でいるのは物騒ではありませんか?」


「えっ、大丈夫です。離れた場所に警備の者はいますし、おばさんとフクロウしかいませんからね、ふふふ、それよりもルディさんは、元の場所に戻れますか?まだお若いようですからご友人たちや賢者のお師匠様が心配なされているのではありませんか? 」


 梨里杏は美しい人と言われたことが本当はかなり嬉しく、今にも舞い上がりそうな気持ちを無理やり抑え込んで、大人の仮面を必死で被って対応していた。見た目高校生位にしか見えない相手に頬を染めるのは流石に痛いと自嘲してしまう。


「ん?若いですか?確かに36歳の年齢より若く見えると言われる事はありますが、子供じゃ有りませんから皆がそれほど心配しているとは思いませんが… 」


「…… それは、異世界年齢ということなのでしょうか?わたしにはどう見ても10代半ばにしか見えないのですが」


「10代半ば…… 」


 ルディは梨里杏に言われた言葉を反芻しながらおもむろに目の前に鏡を具現させて唖然としている梨里杏に笑みを見せつつ鏡に映る自身の姿に絶句してしまう。確かにこれは10代頃の私の姿ですね。こんな姿で梨里杏様に美しいなんてセリフを言っていたのですね。どう見ても子供が背伸びしている微笑ましい姿ですね。フフフッ久しぶりですね、こんな恥ずかしい思いをしたのは。


「梨里杏様、何度も驚かせてすみませんが、この姿は次元に飛ばされた影響で若返ったみたいです。元の次元に戻れば見た目も元通り36歳になります」


「まぁ、そうなのですね。てっきり学生さんかと思いましたの、まさかわたしと同じ歳なんて奇遇ですわ」


「梨里杏様、御冗談でしょう?貴女が私と同い年なんてそれこそ信じられません。どう見ても二十歳前後です」


「ふふ、まぁ、ありがとうございます、ルディさん。女性として若く見えると言って頂けるのはお世辞でも嬉しいものです。それからわたしには様は付けないで下さいね。梨里杏と呼んで下さい」


「それでは梨里杏さんとお呼びします」


「はい、あらためまして、ルディさん、よろしくお願いいたしますわ」


 彼女の年齢を聞いてビックリしていたが、そんなことも所詮詮無きことで今の彼女が自分にとって一番になってしまったルディは今後の事を思案していた。先ほどの梨里杏の言葉を裏付けるように自分たち以外と言うかこの屋敷外の時間が止まっている事を落ち着いたルディは感じていた。


 その原因が自分が落ちて来た次元の裂け目の影響だと分析、目の前の景色は先ほど自分が落ちた裂け目が暗い闇となって大きく口を開けたままになっているのが見える。


 これは裂け目を閉じなければ外の時間が動き出すことがないだろうと思えた、止まった時から何故かこの屋敷内、梨里杏とフクロウや猫が切り離された状況なのは、何かこの屋敷がある土地が関係しているのかもしれないと考察していた。


 そして、冷静に分析するならば、このまま時間を止め続けることは無理だと言うこと、漠然とだが、自分を引き戻す力が次元の裂け目から感じられていた。このままだと梨里杏さんと離れ離れになってしまう。何か方法は無いかと考えた時、先ほど具現化した鏡が目に入る。


「梨里杏さん、こちらの世界の鏡があれば貸して頂きたい」


「鏡ですね、それなら、これでどうでしょうか? 」


 アトリエの奥に掛けてあるアンティークな小型の鏡を示し、それを見たルディが満足そうに頷く。その鏡の前に立ったルディは、梨里杏が示した鏡と瓜二つの鏡を魔法で創り出し、二つの鏡に創生魔法を施し、一つを何もない空間に消し去った。そしてルディは緊張した面持ちで話しかける。


「梨里杏さん、生まれて初めての一目惚れです。本当は、これからそばで貴女のことをたくさん見ていたいし、守っていきたいと思っています。しかし、現状ではそれが許されていない。まもなく次元の裂け目が私を飲み込む。もし貴女が私の言葉を信じて待ってくれるのなら、賢者として、貴女を愛する男として何としても戻って来ます。どうか私の願いを聞き届けては頂けませんか? 」


「はい、わたしもルディさんと同じ気持ちでした。わたしが生まれたのは貴方に出会う為だったのだと今なら、今だからこそ理解出来ました。わたしはこれから貴方を信じ、待ち続けます」


 ルディは、生まれて初めて運命の人に異世界で出会い、ほんのわずかな時間で互いにかけがえのない存在だと、これが運命の人だと理解しあえた幸運を神に祈った。そして、先ほど魔法をかけた鏡を梨里杏に示して告げる。


「梨里杏さん、この鏡は私の世界とこの世界を繋げる鏡です。残念ながら今の私の魔力では常時こちらの世界を繋げ続ける事が出来なのです。しかし月が満月の間は二つの世界を鏡越しに繋げる事が出来ます。鏡越しでしか会えませんが、必ず迎えに来ます。待っていて下さい」


 梨里杏は煌めく瞳に涙を滲ませ、綺麗な微笑で何度も頷いていた。ルディが次元の裂け目に再び飲み込まれるまで、二人は寄り添い、固く手を握り合い、しばしの別れの時まで見つめあっていた。





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