その後1
ルディはこの難問に頭を痛めていた。小舅が五月蠅すぎてデートもままならないのだ。
あの悪魔事件から既に3か月余りが過ぎて、ルディはエルオレラ王国と日本を往復する日々が続いていた。
エルオレラ王国に新たに屋敷を建てる準備も着々と進み、日本での住まいは港近くのあの倉庫を改装して暮らし始めているが、本来は梨里杏の希望で日本では二人で梨里杏の屋敷で暮らし、いずれはエルオレラ王国に建設中のルディの屋敷と梨里杏の屋敷を空間魔法で繋げる予定だったが、あの小舅達からの抵抗に頓挫していた。
これにはすっかり過去の記憶を思い出しルディを夫だと認識した梨里杏にとっても、兄達の過剰な愛に困惑はしていたが、そこはやはり元聖女である、兄達に感謝の心はあれど迷惑だと思う心は一切なかったりする。
ルディにとっては御邪魔虫でしかないのだが、梨里杏の手前手荒なことも出来ず頭を悩ませる結果になる。
もっとも過剰な愛は元からなのだが、大きな切っ掛けはルディが小舅達に何も告げずに梨里杏を異世界のエルオレラ王国に連れて行った事が原因なのだから自業自得、因果応報だと言えなくもない。
「ふう、まったくどうしたらいいのでしょうね。いっその事、久城一族が持つ梨里杏の記憶を消してしまいましょうか。」
「がはは!おいおい、ルディ何物騒なことほざいてるんだ?梨里杏譲ちゃん取られてご立腹だな。」
「カイト、笑い事じゃありませんよ。私がこの世界に来てから2か月、デートをしたのがエルオレラ王国に行った事を含めても3回なのですよ?まったくこの世界のシスコンは異常ですね。悪魔や魔人の方がマシです。」
「いやいや、そこまで ……だな。確かに異常だな。まだ、精神汚染が抜け切れていないのか?」
「何を言っているのです、私が魔法で治して、聖女の梨里杏が回復魔法まで掛けているのですよ?この世界の病気まで治しているのですから久城一族は長寿一族になりますよ。」
「ははははは、それはそれは。。。凄いなおいっ!」
「まあ、私の屋敷が出来れば隙を見て向こうに連れて行きますけどね。魔法陣を展開しないで私が転移魔法で梨里杏を連れ出すと二十年分年齢が逆行するのがネックです。私の前世の力を持ってしても次元調整は難しいですからね。でもこの世界から連れて行った『トラ猫』さんは美猫になってそれは愛らしくしていますよ。」
◇◇◇◇◇
あの騒動が落ち着いた時、梨里杏の屋敷にふらりと戻ってきた『トラ猫』さんは、フクロウの『ポポ』に挨拶でもするようにひと鳴きし、梨里杏の足元に身体をすりすりした後に、何故かルディの目を見つめ、眠るようにルディの膝に丸まってしまった。
それを見ていた梨里杏は、ほんの少し唇を尖らせて、わたしの方が『トラ猫』さんと付き合いが長いのにと羨ましがっていたが、どうやら状況はそんな楽観的な事ではなかった。梨里杏も直ぐに気が付き、回復魔法を掛けたが効かずかなり動揺していた。
そんな梨里杏に『トラ猫』さんを預け、梨里杏ごと、何も言わずにカイトや章時の目の前でエルオレラ王国に転移し、老齢で寿命が尽きかけていた『トラ猫』さんを二十年分逆行する次元エラーを利用して延命に成功していた。
もっとも『トラ猫』さんが既に20歳を超えていたから出来た荒業でエルオレラ王国に着いた『トラ猫』さんは20年分若返って美しい毛並みは更に美しく、体つきもしなやかなうら若き美猫になり復活していた。
現在はルディの屋敷が出来るまで師匠のマーロンに預け王宮暮らしになっているのだが、そのエキゾチックな美しさで王家一族を魅了して王宮内を自由に徘徊しているのはご愛敬だろう。
ちなみに梨里杏も次元の影響を受けて16歳の美少女になっていたが、本人は全然気が付かないままにエルオレラ王国をルディと共に観光し二人だけの時間を新婚気分で過ごしゆっくり日本へ帰還したが、ルディの能力も上がっていて、魔道具を起動させず時間を止めなかった事が災いして、梨里杏が連れ去られたと思った小舅達に帰還後散々文句を言われた事が今回の悩みの種に繋がっていたのだ。
「でもまあ、これも平和な悩みでしょうね。」
何世代も転生を繰り返し、この異世界でやっと見つけた愛しい妻とその家族で五月蠅い小舅達、そして二度と会えないと思っていた友人に囲まれた生活は自然にルディを笑顔にしていた。
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