第21話 愛されていたのですよ
短めです。今回で終わりの予定でしたが長くなりそうなので2回に分けます。
久城ビル内に閉じ込めていた魔族を一掃したルディとカイトは、ルディの魔法で梨里杏の兄である長兄、久城家の血の記憶を遡っていた。やはり悪魔と古の血の契約を行使していたがそれは300年前を最後に拒絶し、久城一族は相次いで不慮の事故に見舞われ全ての血族が途絶えてしまったかに思われたが、一族の傍系にあたる兄妹二人が生き残り今の久城家の礎を築いていた。
本来ならそこで契約は終わりを迎えたかと思われたが生き残った兄妹の兄には既に千年前の戦いで傷つき深い眠りについていたデーモンアシエルの核が存在していた。いつ爆発するか分からない核弾頭をその身に抱える一族が誕生した時代でもあったのだろう。血の契約よりも悪魔に取って確実なものが息づいている久城家は今度は契約とは関係なく現世で利用できる美味しい人間一族になる。
さらに年代を重ね、現代の久城の後継ぎが双子だったことから力の分散を嫌った魔族が選んだのが三男の章時だった。未だ眠りにつくアシエルの復活を待っていた悪魔族は今から16年前に、梨里杏の中に魔族の天敵聖女の片鱗を見つけ、アシエルが異世界から連れて来たと知らなかった悪魔族たちは梨里杏を排除しようと梨里杏の両親の身体を乗っ取り実行しようとしたが両親の激しい抵抗で操れずその騒ぎで少し覚醒したアシエルに両親の身体に入り込んだ状態で消されてしまっていた。
梨里杏の命を救った一端が皮肉にもアシエルだったことに憮然となるルディだったが、それ以前に梨里杏の現世での両親が命を掛けて娘を守るために悪魔の支配を必死で贖ったことが正直凄いと思っていた。普通の人間が悪魔に身体を奪われて抵抗出来るとは、梨里杏への限りない愛を感じていた。
それでもアシエルを完全に滅することが出来た事で久城家に降りかかっていた災難はこれで全て消えるだろう。300年前に切れた契約、切れた後の悪魔のヤドリギにされた生き残り。明らかな契約違反は今後久城一族へ関わった悪魔達の破滅を意味していた。
「でも契約が切れていて良かったな。切れて無かったら血族を消さない限り次から次へと悪魔が久城の血に降臨するところだぜ。」
「そうですね、手間がかからず良かったです。まぁ、一度魂を隔離して生き返らせる荒業も考えてましたけど、ふふ。」
「う~ん、悪魔以上に厳しいお言葉っすよ。 ルディらしいけど、梨里杏譲に嫌われるぞ。」
「おっと、それは困ります。」
ルディはカイトに告げると亜空間に創ったドアを開き梨里杏を呼び寄せた。
「海渡様 !お久しぶりでございます。まさか海渡様がルディロフ様とご一緒にいるなんて不思議なめぐり合わせですわね。」
「本当だな、最後に会ったのが中学生の頃か ?まさか前世でルディの奥さんだったとはな、世界は狭いと言うか、 次元は狭い か ?でも本当に無事でよかったな。章時は … 残念だった。」
「— 章時お兄さまですか ?」
梨里杏はルディロフの顔を不思議そうに見つめていた。その肩に乗る『ポポ』に微笑み、その姿を見たルディは苦笑いしながら前世で創った素粒子の結合魔法で人体を構成し『ポポ』に避難していた魂を蘇生魔法で結合させる。
「章時お兄さま、体調に違和感はございませんか ?」
「梨里杏、大丈夫だよ。君は大丈夫かい ?随分怖い思いをしただろう、可愛そうに。」
「お兄さま、ご自分の方が大変だったのに、わたしの事を気に掛けてくれるなんて相変わらずお優しいですわね。」
「何を言っているんだい。兄が妹の心配をしないで誰がするというのかな ?」
「…… いい加減にして下さい。『ポポ』の姿で全て見聞きしていたでしょうに、妹離れして下さいね。お兄さま !」
「ふー、君に兄と呼ばれる筋合いは無いが、今回は助けられているからね、仕方ないね。」
「おおおおおっ 章時っ !お前生きてたのかっ、死んだと思ったぜ。」
「お宅はどちら様で ?」
「なんだよ!つれないこと言うなよな!」
「ああ、海渡ですか、しばらくぶりですね。それこそ生きていましたか。ロリコン過ぎて若い嫁に生気を吸い取られて既にこの世にいないと思いましたよ。」
「お前なー、確かに嫁は若いけどロリじゃねぇよ!ほっとけ。」
「でもお互い生きて再会できるとは思いませんでした。貴方も今回は助けてくれたのですね、ありがとうございます。ルディさんも梨里杏だけじゃなく、兄達や親戚まで助けて頂いて本当に感謝しきれません。ありがとうございます。でも… 梨里杏の件は別ですが。」
「フフッ、これは後程ゆっくりと語り合うといたしましょうか。」
「ふふっ、それはこちらも望む所です。」
「「…………」」
ルディと章時のやり取りにあきれ気味の海渡と二人の様子に変わらず天使の微笑みで見つめる梨里杏であった。
次回は最終話になります。




