第20話 過去からの招待状
カイトは異世界に飛ばされた時、勇者としての心構えから今まで存在していた勇者がどんな存在だったか勇者しか入れないとされる場所で千年前に現れた異質な勇者の事が書かれた本を思い出していた。
中立国家ラジエル教国は世界の中心に位置する神の信仰国家だ。その聖教国教会最院奥にある勇者結界の間と言われる場所はその名が示す通り勇者の称号を持つ者だけが入ることが許される特別な部屋だった。勇者が許されると言うより勇者意外は結界に弾かれ何人も入ることが出来ないが正しく、たとえそれが勇者と一緒に入ろうとした仲間も例外ではなかった。
そこには様々な勇者関連の書籍や遺物や過去の勇者が使ったと言われる武器や聖剣と勇者関連グッズの倉庫とでも呼べるような場所でそのさらに奥は空間を繋げて創った歴代勇者の墓石もある神秘的な所だった。カイトも無論勇者なので勇者の間には一年ほど入りびたり様々な過去の勇者関連の資料に目を通し、歴代の勇者が何故か日本人ばかりな事を不思議に思ったものだが、そこにたった一人だけ日本人ではあり得ない外見の勇者が存在していた記録は珍しさと共に覚えていた。
今まで歴史的な記録にある勇者は全て異世界人で尚且つ日本人だと思っていた時に、千年前の勇者一人だけは何故か銀髪にグレーの瞳を持った現世の勇者で魔王が生まれる百年前から存在していたと記録にあり、その勇者は魔王の復活をもくろむ暗黒魔王族の悪魔を倒したが、僅かな隙をつき悪魔に魅入られた人間に勇者の妻でもあった聖女リリエラが殺され、その高貴な魂と躯を悪魔が奪いさってしまい、その後勇者の行方も頑として知れないと記されていた。確かその勇者の名前はルディロフで、ルディと梨里杏に千年前から繋がりがあると思うのはむしろ自然な気がするカイトだった。
その話を聞いたルディは何故か心の奥底に灯る明かりと封印された奥底に眠る記憶が眠りから覚めたがっているような錯覚を覚えて戸惑うが、ルディの腕に抱かれ意識を失った梨里杏の姿を目にした時、今とは違う場所でルディに笑いかける梨里杏と同じ顔が脳裏に浮かび走馬灯のように何度も消えては現れを繰り返し、その時ルディは唐突に空間魔法で亜空間を創り出し眠っている梨里杏と共にその場から一瞬で消え去る。後に残されたカイトは面食らってしまうがあくまでも自分は勇者でこの国を守るのも俺だと一瞬で気持ちを切り替え悪魔と対峙するカイトだった。
◇◇◇◇◇
ルディが創り出した亜空間で目を覚ました梨里杏は自分が何者であるか思い出し、今目の前で自分を見つめる銀髪にグレーの瞳の愛する勇者の名を呼ぶ、〈ルディロフ〉様とそしてそれに応えるルディは梨里杏を〈リリエラ〉と愛しそうに名を紡ぐ。
「リリエラやっと見つけた。遅くなってゴメンね。」
「ルディロフ様、本当に貴方なのね ?ふふ、あれからどの位年月が過ぎたのかしら ?わたしこそ長い間貴方を待たせてしまったのね。私はこれが初めての転生みたいだけど、貴方はずっとわたしを探し続けてくれていたのね ?こちらこそごめんなさい。そして探し出してくれてありがとう、ずっと愛しているわ。」
「リリエラ、君には梨里杏としての記憶はあるのかい ? 私はさっき全ての転生の記憶を思い出したよ。そして何故か面白い事にあれから勇者はお役御免で今はずっと賢者になっているんだよ。きっと膨大な記憶を活用出来るように勇者から賢者になったのだろうね。さて、カイトが外の世界でビックリしているだろうから、さっさと戻って悪魔を今度こそ完全に滅してくるよ。リリエラ君はここで待っていてくれるかい。どうやらあの悪魔は千年も前から私の妻を付け狙う不届き悪魔だからね。君を亜空間にでも隠さないと安心して倒すことも出来ないからね。」
「ふふ、分かりましたわ。ストーカーと日本では言うらしいですわよ ?わたしの勇者、あら、今は賢者でしたわね。怪我などしないで早くわたしの元へ帰って来て下さいね。」
「はい、分かりました。行ってきます。」
二人とも前世の記憶も過去の苦しみ嘆きもそれ以上に愛しい気持ちも溢れんばかりの熱い思いも全て思い出し、この終わりのなかった迷宮へ落とし込んだ過の悪魔を今度こそ滅する為にルディは亜空間から飛び出す。
「お待たせいたしましたカイトと 悪魔ストーカーさん。」
「おっ、ルディ。急にいなくなったと思ったら直ぐに現れやがって、神出鬼没だな。」
「ええ、話は後程。まずは人の妻を自分の嫁だと喚く下種悪魔を退治しましょう。」
「おお !コイツ、とんだ変態悪魔だったんだな。」
【貴様ら我を愚弄するとは許さんっ !我のリリカを何処にやったああああ !許さんぞぞぞぞおおおー】
吠える悪魔が声に悪音波をのせ辺りに悪意と恐怖をまき散らす。しかし魔道携帯で時を止めていることで一般市民が悪意に染まり黒い靄に覆われても眠りから覚めることはなかった。幸いにも今目覚めて動けるのはここにいる3人だけである。
ルディは聖魔悪邪滅魔法を徐に発動するが、デーモンアシエルに簡単に弾かれるがそれは囮だった。超強化した聖魔結界にデーモンアシエルを閉じ込める。
【クククッ、まさかそのような攻撃で我を倒すつもりなのかな、フハハハハ笑止】
ふっ、バカですね。今の私は賢者ですよ ?心の中で悪魔を嘲りながらルディは聖魔拘束をアシエルの首と左足に巻き付ける。
「カイト、行きますよ ! 獄炎破壊」
ルディが放った獄炎破壊はアシエルの首と左足に巻き付いた聖魔拘束をまるで花火の導火線のように伝い青い炎を燃え上がらせる。
【グゥワッ、な、なんだと言うのだ、リングが外れないっ、】
「そのリングはお前が死ぬまで外れんぞ。そのリングは 獄炎破壊が発動することで延々燃え上がる仕組みに改良された魔法をこのルディ賢者様が開発した魔王もたじろぐ陰湿拷問器具になってるからなー、わはは、お気の毒。気の毒ついでに行くぞ !」
カイトは重力を自在に扱う聖剣で音速の斬撃を振り放つ、見事に斬撃はアシエルの身体を二つに引き裂き加重力を加えていた加減で肉の断面を押しつぶす。
ビシュン ! ブッシャー ズドドン。
【ギャァアアアアアアアアアアアアー お のれェー】
二つに分断され潰れていくアシエルの身体をルディは再び身体が元に戻らないようにそれぞれ聖魔結界で囲い再び聖魔拘束と獄炎破壊の合わせ技で痛めつけ、何度もカイトに切り刻んでもらい再び合わせ技を繰り返す。
ビシュン ! ブッシャー ズドドン。
【 ウギャアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァ …………………】
この状況を誰か他の者が見ていたらどちらが悪魔の所業か疑いを持ったことだろう。最後にルディは文字通りデーモンアシエルを二度と再生復活が出来ないように聖魔死滅で灰にして全てを浄化していた。
「終わったな。ルディ。」
「ええ、今度こそ変態ストーカーを死滅させました !」
「………… やっぱりルディは千年前の勇者なのか ?梨里杏譲も ?」
「そうです。先程のカイトの話で思い出しました。そもそも私が勇者で生まれた事がイレギュラーだったのでしょうね。だから敵が魔王ではなく、妻を狙う変態悪魔だったのでしょう。」
いかにも妻を狙われて憤慨している夫のセリフにカイトは自分だったらもっと手酷くしていたかも知れないとルディに共感していて、異世界でも二人はかなり絶妙なコンビになっていた。
「梨里杏譲の記憶はどうなってる ?一応兄貴が死んでるからな …………」
「そうですね、多分— 大丈夫でしょう。」
何処からともなく飛んできたポポを肩に乗せながらルディは軽く応えると、未だ時の止まった梨里杏の屋敷で不自然な姿で固まる二匹の使い魔を羽虫でも払うようにサッと右手を振りかざし聖魔悪邪滅魔法で消し去り、久城ビルに閉じ込めた下級中級悪魔を完全に排除する為に再びカイトと共に転移していた。




