第16話 半年ぶりの君の姿にうっとりです
すみません、ちょっと短めです。
カイトの案内でルディは自分たちの世界とはまるで違うこの世界を興味深く眺めていた。拠点にした倉庫からカイトの車で都内の繁華街を案内され無駄に煌いた明かりがまばゆい世界に唖然としたり、こんな夜分に人が大勢集まるから何事かと問えば、笑いながらここは眠らない街と言われているとの言葉に再び唖然とする。
次元が違う世界はルディが考えるよりも数多く存在しているだろうがこの世界程人や光が無駄に多いところは無いのではと、賢者らしからぬ思考に染められるルディだった。
「カイト、この世界は魔法が無いではなく、魔法がいらない世界な気がします。」
「そうかい?確かに魔法みたいな発展かもしれねぇな。」
「ええ、車や電車でしたか?あれも魔法並ですが空を飛ぶあの鉄の塊は魔法以上かもしれません。その物の存在よりそれを生み出せる知識力や成し遂げる技術力は素晴らしいですね」
ルディはカイトの世界が自身の国とは別の進化をあえてしているような気分になっていた。きっと自分たちでは計り知れない意図が働いた結果なのだろうとルディは思えた。いつか少しでも世界の次元の謎を解き明かしたいものだと賢者らしい知識欲が芽生えるルディだった。
しばらく車を走らせていたカイトがいつの間にか閑静な家が立ち並ぶ一角に車を止めていた。
「ルディ、見えるか?あの高台に見える屋敷」
「…ええ、梨里杏さんが住まう屋敷ですね」
「よく分かったな」
「フフフッそれは特別な女性ですから、先ほどから梨里杏さんのオーラを感じています。」
そしてルディはもう一つ気が付く、その愛するオーラの周りを絡めるように存在している黒いオーラを。
これは一体なんですか、禍々しい気配を梨里杏さんの側で感じますが、梨里杏さんに危害を加えるような感じは一切しない。なのに外部に対して発するのはまさしく邪気です。これがカイトが話す悪魔一族というものでしょうか。
「カイト、貴方はこの禍々しい気配を感じますか?」
「ああ、多分お前ほどではないが、感じるぜ。この気配は久城家三男章時で我が幼馴染殿の気配で間違いない。しばらく会わないうちに悪魔から魔王になったか?勘弁して欲しいもんだぜ。」
「ちょっと魔道携帯を起動させます。通話状態で車で待機して下さい。」
ルディはカイトへ向けて魔道携帯を起動させ、この世界の時間が停止したことを感じ取り自身に隠蔽魔法を掛けた状態で前回次元で飛ばされた梨里杏のアトリエが見える庭に転移した。
◇◇◇◇◇
身体魔法で視力を強化し、アトリエ内部を見渡す。そこにいるのは愛しい人、と悪魔が一人に使い魔が二匹に、怯えるように止まり木にいる幸福のフクロウポポくん。
ポポはルディの気配に気が付くと一目散に飛んでくる、その鬼気迫る飛翔は見た目の可愛さからかけ離れた必死さが伝わるものだった。ポポはルディの肩に止まると顔をこすりつけて親愛の情を表してくれる。
ポポくん、凄いですね、隠蔽魔法で姿が見えないはずですが私だと分かりましたか?フフフッとても賢いフクロウですね。でも次は何かあるといけませんから気配も遮断しましょう。
その飼い主である梨里杏は時間が止まっている事さえ気が付かない様子で真剣な表情でキャンバスに向かっていた。その集中しキャンバスに絵を描く姿は美の女神を彷彿とさせる程神々しくも美しかった。
その姿をうっとり見つめているとルディはドキドキが止まらなくなる、いっそのことこのまま彼女を連れ去ってしまおうか?連れ去った後のことはまた後日考えるでどうでしょうか?そんな欲に塗れた事を悶々と考えていた。
しばらくその姿を離れた場所から垣間見ていると梨里杏がふと何かの気配に気が付いたように隠蔽魔法で姿が見えないはずのルディの姿がまるで見えているようにルディ向かって微笑みかけた。二人の視線がまるで本当に絡み合うように一瞬交差したかに見えたが、梨里杏は再びキャンバスに向かってしまう。それを残念に感じながらも、今は梨里杏の側にいる兄と呼ばれる存在を観察するために来たのだと気持ちを落ち着ける。
さて、相変わらず梨里杏さんの存在は不思議ですね、魔道携帯は個人認識出来るように改良したから本当なら梨里杏さんの時間も止まるはずなのですが…。しかし、あの人が梨里杏さんのお兄さまですか?どう見ても魔物の類だと思いますね、それもかなり上位の存在ですよ。時間が止まっているのに微かな意識が感じられる。この分だと彼もまた停止した時間の中で自由に動けるようになる確率が高いでしょう。厄介ですね。
これは、梨里杏さんの他の家族にもお会いして確認した方がよろしいでしょうね。カイトや師匠と少し相談してみましょう。ルディは肩に未だにしがみつくポポをどうにか宥め透かし、梨里杏さんを傍で守って欲しいと頭をなでながら伝え、念のためポポに飛翔速度と防御が上がるように身体強化を施してやる。
「ポポ、梨里杏さんを頼んだよ、お前も迎えにくるからね。」
ルディはポポに話しかけ、梨里杏に切ない恋心が籠った視線を一瞬向けて意を決するように転移でカイトの元に戻り、厄介ごとについて相談を始めるのだった。




