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第10話 『超』 遠距離通話は恋を育てる

甘い恋愛にならないジレンマ


「ん~何も映っていない?おかしいな、梨里杏の事で感が外れたことは無いんだけどね」


梨里杏の所へ出向いた翌日、章時は梨里杏の家に仕掛けられている防犯カメラや外部カメラ、警備の人間への聞き取りと様々な角度から検証を行ったがあのキャンバスに描かれた男の存在を示す証拠は皆無だった。梨里杏に関することで感が外れた事が信じられずに何度も映像を見直したが特に変わったところはなかった。ただ、アトリエに使った形跡のない薬箱が置かれた映像が章時の目には異質に映っていた。


やはり納得のいかない章時は自分の所から腕利き数人を梨里杏の屋敷に送り込む事に決めた。兄の子飼いの目黒はそのままでまぁいいか。兄さんに一応連絡しとくか、後でうるさいからね。愛しい梨里杏には新作頑張ってて話せば全ていいように解釈してくれる良い子だから大丈夫だね。




そんな兄の思惑通りの反応を示し納得した梨里杏はそんな些細なことよりも、今は1日でも早くルディの絵を完成させたくてうずうずしていた。物語の主人公のように誰かを好きになるって素敵。凄く心の底から幸せな力が湧き出てくるみたいだと梨里杏はその日から昼夜を問わずキャンバスに向かい続けていた。



そんな梨里杏の姿を複雑な表情で盗み見るのは章時だ。監視カメラの映像を昼夜問わずリアルタイムで見続ける姿は鬼気迫るものが感じられる。梨里杏を見つめる目は甘さを漂わせているが、時折キャンバス内に向かう視線は氷のように冷たく残虐な印象を周りに与える。


ん~やはり僕の感が外れましたか?あれから10日程経ちますが変わった事はなにも有りませんでしたね。今日はこれからどうしてもイタリアに向かわなければいけないのですが、この様子なら心配ありませんね。後は配下に任せましょう。


梨里杏の屋敷にいる二人の配下に後を任せ章時は後ろ髪引かれつつイタリアへ向かった。本宅から派遣されている目黒は長く梨里杏の屋敷で働いていたが、何故か最近は邪魔な人扱いをされていた。章時の配下はメイドとは名ばかりの傭兵ではないかと目黒はにらんでいた。綺麗な女性たちではあるが目つきや動作が訓練されたものに感じる。


目黒は最近嫌な予感がして、長年世話になったこの仕事を今日で辞める事になった。章時配下の動向も影響しているが、何故か漠然とした不安が付いて回り、寂しがる梨里杏に挨拶し早々に屋敷を後にした。ごめんなさい梨里杏様、本当は色々お話しして、勘違いしていることも教えて差し上げたかった。貴女のお兄さま方はまともじゃありませんよと。命が幾つあっても無駄ですね。梨里杏様お元気で・・・




目黒が屋敷を去った日は皮肉にも梨里杏が待ちに待った満月の日だった。まだ午後の早い時間だが、太陽の明るさで見えないだけで満月の月が空には見えていることだろう。梨里杏は完成に近づいたルディの絵画を見つめながらその隣に鏡を立て掛けたキャンバスを置き、あの日ルディに言われた言葉通り鏡の前で待っていた。


キャンバスに鏡を立て掛けた事をメイドに聞かれ、今度は自画像でも書こうかと思ってと言葉を濁す。

しばらくキャンバスを見つめているとメイドがお茶を片づけながら、素敵な方ですねと声を掛けられ我知らず笑顔がこぼれる。そんな時、鏡を中心にいつか見た空間の歪みと同じ現象が現れるがそれと同時に信じられない事が起こる。時がまたしても止まっていて、絵画を素敵だと言ってくれたメイドがティーカップを持ち上げたそのままの態勢で動かなくなっていた。


「梨里杏さん!梨里杏さん!いますか?いたら鏡の前に来てください」


「っルディさんっ、」


梨里杏ははじかれたように鏡の前に立つ、その瞬間鏡の向こうに映った愛しい人の姿に思わず涙が溢れてしまう。あの時は少年のような姿だったルディの姿は教えられたように自分と同じくらいの年代に見えるが、もっと素敵な姿に梨里杏には映っていた。ただでさえ恋しい人を会えない時間がさらに恋するスパイスを加え恋ベールを瞳に映し出していたのかもしれない。鏡越しに二人の視線が絡み合い、互いの瞳から相手への愛しさ恋しさがあふれ出る。


「「・・・・・・・」」


「ルディおいおい!時間が勿体ないだろうが、胸がいっぱいなのは分かるが先に要件を言わないと後から後悔するぞ」


「はっ、そうでした。梨里杏さん、その鏡をそちらの世界で使っても違和感のない魔法道具に創り替えます。少しだけ離れていて下さい」


ルディは二つの世界に繋がる鏡を通し自身の魔力と鏡が取り込んだ月の魔力とを使いカイトの話を参考に師匠と三人で創り上げた()()()()を梨里杏の鏡に具現化させた。成功しましたか?これが失敗だとカイトを直ぐに日本へ帰還させなければいけませんが。


「梨里杏さん、私の声が聞こえますか?」


梨里杏は目の前にあった鏡がこの世界でもメジャーな淡いピンク色の携帯電話に変わりそこからルディの声が聞こえた事に嬉しい驚きとちょっぴりのがっかりと両方の気分を味わっていた。


「はい、聞こえます。不思議ですね、なにも押さないで繋がりましたわ。でも・・・先ほど迄は鏡に映るルディさんの姿が見えていましたので少し寂しく残念ですわ」


「クス、可愛い人だ。大丈夫です、携帯電話の画面を触って見てください。」


「あっ、ルディさんがいます。うふ、本当に携帯電話ですわね。お顔を見ながら話せるなんて凄く嬉しい。そうですわ、ルディさんに見て頂きたい絵がございますの、勝手に描いてしまいましたけれど」


梨里杏が携帯電話の画面をルディが描かれたキャンバスに向けると、携帯から息を飲む声が聞こえた。そこには今にもキャンバスから飛び出しそうな10代のルディが生き生きと描かれていた。自分自身に見惚れる程ナルシストでは無いつもりだったが、梨里杏の描く自身に嫉妬してしまいそうだった。


「凄いですね、それは初めてあった時の私の姿でしょうか、梨里杏さんに描いて頂けるとは嬉しいですね」


「良かった、勝手に描いてしまいましたから、怒られるかと心配しましたの」


「とんでもない、怒るなんて事はありません、逆に光栄ですが、こちらに無いのが悔しいですね、でも梨里杏さんを迎えに行ってこちらで描いてもらえばいいですからそれも楽しみですね」


二人は会えなかった時間を埋めるように些細な出来事や周りから見たらくだらないことを世の恋人と変わらぬ様子で会話を楽しんでいた。しかし、そんな二人にまたもやカイトが口を挟んでくる。


「魔法道具の使用方法や注意事項、魔力の充電方法なんか教えてやれよ、このまま切れたら大変だぞ」


そうでした、つい嬉しくて夢中になってしまいました。カイトの忠告を聞きつつ、魔法道具の使い方や夜は月あかりで充電、日中は太陽で自動充電出来る旨を知らせ、特に梨里杏が何かをする必要はないが、常に持っていて欲しいと付け加える。


また、次元に干渉するので梨里杏の世界が時間が止まること、ルディと話している間は梨里杏は時間軸から外れる存在になり周りの時間が止まっていても自由に動く事が出来る事を教えられる。


ただ、地球の魔力量では毎日話すとなると1日10分程度1週間に一度だと1時間位の時間しかまだ通信が出来ないとのことだった。それでも満月の時は魔力量が多いので三時間くらいは大丈夫と言われ嬉しさに笑みを浮かべ、その笑顔を見たルディがノックアウトされたのは言うまでもない。二人はそれから黄色の点滅が鳴るまで二人の世界を楽しんだのであった。




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