変わること
週に一話更新できるように頑張ります。
「...はい。」
日本で過ごしていた時、怪我をしたり、病気になっている人をかわいそうだと思うことはなかった。自分の言ったことで周りが傷ついてもなんとも思わなかった。
父と母が私の前から消え、たいして仲良くもない親戚にうっとおしがられ、人の綺麗な部分なんて思い出せなくて、ただ、どうでもいいという気持ちだけで流されて...
そんな世界とは違う場所にきて、はっきり分からないけれど自由を感じた。変われたと思ったのに。
自分がしてしまった質問の残酷さに遅れて気づく。
こんなことなら、もっと人と関わっておけば良かったかな。
「暗い顔するなよ。ほら、さっきみたいに分からないこと質問していいんだぞ。好奇心旺盛なのは、嫌いじゃないからな。」
「本当は好奇心旺盛なんかじゃないです。そんな可愛いものじゃなくて、ここに来るまでは何もかもどうでもよかったんです。そこから少し変われた気になって、変わりきれなくて残酷なことを言った。
変わらないんです。私はひどい。」
「変わろうと思ったんだろ。人間はいきなり変われないもんだ。そんな暗くなってたら、逆戻りだぞ。
次は頑張ればいい。」
「はい。」
声が震える。
「よし!なら切り替えだ。村に行く前に果物と水は確保した方がいいな。俺達は旅で慣れてるけどお前はそんな感じじゃないもんな。」
璃央さんが明るい調子で言った。
「そうだな、普通の人間には無理だろ。」
朱紅さんが寄りかかっていた木から立ち上がりながら言った。
「村までどのくらいかかるんですか?」
「大体一週間だな。」
日本で過ごしていて食事が用意されなかった時には面倒で食べなかった。
おかげで何もなくても一週間、水があれば何ヵ月かはいけるようになった。親戚の虐待を演出するためだったけど、まさかここで役立つとは。
「あ、それくらいなら大丈夫です。」
「いや。大丈夫じゃねえだろ。」
朱紅さんから食いぎみに言われる。
「大丈夫です。何もなくても一週間は行けます。延びても記録を更新します。」
「お前は何と戦ってんだよ⁉無理だろ。村まで歩かないといけねえんだから。」
「大丈夫です。食欲を抑えるのは得意です。朱紅さん、人間やれば出来るんです!」
「それはここで発揮しなくていい!」
朱紅さんなら「いい、いい、好きにしろ」とか言うと思ったのに。なかなか手強いな。
「柚木食べなくて大丈夫でも、体には良くないから。食料の調達もわりと簡単だから。朱紅がいれば。」
璃央さんはやっぱり言うよね。
「おい、結局俺任せじゃねえか。やっと一仕事終わったと思ったのによ。」