出会ったら、いい人
「は?えっ、ここ、どこ?」
いきなりのことに動揺を隠しきれなくて、落ち着け、落ち着け、と自分に言い聞かせる。
周りを見渡してみると、木々の間から右側に道のようなものが見えた。
「他には、木しかないし...」
とりあえず、道まで出よう。
歩いてみると、地面がデコボコしていて、歩きづらい。
「こっちは、いつもコンクリートの上歩いてるような現代人なんですよ!」
歩いてると、落ち着いてきて、つい愚痴がこぼれる。
「でも、まあ誰にも聞かれないんだし、いいか。」
今まで本当はずっと望んでた。自分のことを誰一人知らないような場所で自由に生きたいって、
しばらく歩いて、道に出た。
「見えるような、見えないような...」
遠くの方に村のようなものが見える気がするのだが、視力には限界があるため、はっきりとはわからない。
「少し歩いてみるか」
腕時計をみると10分くらいたっていた。両側には、まだ森が続いている。
ガサガサ、
「何かいる?」
身を隠しながら音の聞こえる方へと近づいて行くと、人がいるのが見えた。
「嘘...金髪と赤髪」
赤も自然に出るとは思えないほど燃えるような赤色だ。
それに、何あの服、着物と...刀!?
次の瞬間、赤髪の男の人が向こう側にいる人に火の玉のようなものをとばす。そして、金髪の男の人が刀を持って斬りかかった。斬りかかられた人は黒いもやになって消えてしまった。
色々ありすぎて、もう何も驚かない。
どうしよう、話しかけたら斬られるかな、
「おい、璃央、見られてんぞ。」
「ん?」
バレてた。もう、死ぬんだ。短い自由だったなぁ、
「おーい、出てきてくれよ。」
私は、木の影から出て、姿を現した。
「女!?なんでこんな村はずれの森にいるんだ?まずいもん見せちまったな、璃央。」
「あー、大丈夫か?悪かった、嫌なもの見せちゃって」
謝られた、心配までされてるし、悪い人ではないのかな?
「大丈夫です。別に血も見てませんし、なんか気を使わせてしまってすいません。」
「えっ、平気なのか?」
金髪の人がもう一度聞いてくる。
「肝座ってんなぁ、お前。ん?お前今血を見てねぇって言ったか?」
「はい。なんか黒いもやもやになって...」
そのまま消えてしまったから、血なんて見えなかった。
「おぉ!なんだ、見えてるなら言ってくれよ。人斬りと思われたかと思っただろ。」
いや、あなたが斬りつけてたのにかわりはないから、人斬りでしょう。
「だから、あんまり怯えてなかったんだな。」
それは諦めてたからですよ。
「あ、名前言ってなかったな!俺は璃央だ。髪が赤いこいつは朱紅だ。妖怪だぞ。お前は?」
やっと名前を聞けた。これで髪の色で呼ばなくてすむ。って、妖怪⁉見えるって、なんか勘違いが起こってる
「えっと、柚です。妖怪ってどういう事ですか?」
璃央さんが驚いた表情をする。
「えっ?知らないのか?」
「言葉の意味は知ってますけど、実在はしないでしょう?」
昔は妖怪が実在したとか言うけど...
璃央さんに確認すると、さっきまで静かだった朱紅さんが口を開いた。
「見える奴の教育を受けてないんじゃないのか?」
「ああ、場所によってはあるかもな。柚、お前どこの村の出身だ?」
璃央さんは納得して、質問してきた。
「えっ,」
どうしよう。異世界から来ました。なんて絶対信じてもらえないし、あっ、最近読んだ本にあった設定を使おう‼
「私の村は、村といえる程の人はいなくて、全員会わせても20人くらいで、特定の場所にはとどまらずに移動しながら暮らしてます。」
これで、場所の特定は無理なはず
「お前はその村からはぐれたのか?」
「あ、えっと、村は火事で燃えました。家は布などを木の枠組みに被せるようなもので、起こったのが夜だったので、なんで私が生きてるのかはわかりません。」
「そっか、なら知らないのかもな。よし、じゃあ俺が教えてやろう。妖怪と人間について」
悲しいことを吹き飛ばすような笑みで璃央さんは言った。