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大賢者様はなにもしらない  作者: レフ・エルザ
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第一歩は大切に。

ぽんたが仲間になったので、早速やりたいことは外の確認である。

ワンルームな我が家の周りには森が覆い茂っていたのはみたが、さらにその先に何があるかを確認したい。

稼ぐ手段を見つけなければ、餓死するか、そのうちあのじいさまが何かやらかして、この世界語と消滅するかもしれない。

とにかく、能力も色々と試さないと行けないし、現状把握もしなければならない。

やることは山積みだ。


「ぽんた。外に出たいんだけど。お前がフェンリルなら、俺ぐらい余裕で守れるはずだよな?」


ぽんたは背筋をピンと伸ばして、うれしそうに尻尾を振った。

なかなか力強い振り方で、ぶんぶん音が鳴っているようにすら思える。


「もちろんですだぁ、ご主人様。宝船に乗った気持ちでいてくださいだぁ~」


泥船じゃないのはいいけれど、大船でもなくて、なんかめでたい。

めでたいのがぽんたの頭じゃないことを祈ろう。


さて、未知の世界へと、記念すべき第一歩である。

さすがに出勤用の革靴はないなと思ったので、ジョギング用に衝動買いしたものの、3日も使わずに封印されていた運動靴で踏み出した。

くわえて、衣服もスーツからジャージに着替えた。

一番身軽に動けるならこれかなと思ったが、よくよく考えるとすごくファンタジー感を損なっている。

だが、かっこつけてもいざとなったら走れるような装備じゃないと、それで死んだら元も子もない。


さて、実はと言うと。

一歩を踏み出して早速のピンチである。

のんきに装備の解説をしている場合ではなかった。

今、俺の目の前には巨大な芋虫が首をかしげるようなかんじで、俺を見つめている。

芋虫はみためカブトムシの幼虫のような姿で、白くてふにふにな柔らかそうなボディーがつややかである。

今のところ、すぐに攻撃してくる様子はないが、この芋虫の大きさからして、余裕で俺を押しつぶせるだけの体積を持ち合わせている。

動きを予測して逃げないと行けないが、背後にはマイホーム。

万が一、マイホームが壊れた場合、生きていけない気がする。


「おい、ぽんた。出番だぞ」


俺にはフェンリルがついて・・・いたはずだが、横にも後ろにもぽんたがいなかった。

よく周りを見ると、ぽんたは西部劇にでてくる枯れ草が丸まったような物体を追いかけ回してじゃれていて、こっちのピンチには全く気づいていなかった。


「っっっっ!!!!」


早速、めでたさを発揮したぽんたに、怒りやら悲しさやらが混じり合って俺は言葉にならない声を発生していた。

ええい、こうなれば自分自身で戦うしかない。

大賢者はきっと伊達じゃないはず。


俺はスマフォを操作して火の元素をダブルタップした。

ゲーム通りなら火の元素を高めれば、火の精霊が現れて力を貸してくれる。

思惑通りだ。

目の前で赤い光が点滅して炎をまとった狐のような姿の火の精霊が現れた。

炎の狐は芋虫に向かってまっすぐと体当たりしていく。

芋虫は、かしげた首を反対に倒し、特に動かないまま炎に包まれた。

そして、そのままこんがりと焼き上がる。

動かないところをみると、そのまま絶命しているようだった。


「・・・倒したけど、もしかして無害だったとか言う?」


特に攻撃らしい攻撃もされないまま終わった初戦にすこしばかり罪悪感を抱く。

そしてすべてが終わった後でぽんたが追いかけていた枯れ草ボールをくわえて近寄ってきた。


「ご主人様。その芋虫はコロコロ虫といって、ほぼ無害な生き物だぁ。硬い頭をおとしせば白身の部分は食べられるから、焼いてしまうのはもったいなかっただぁ」

「主人のピンチに草と戯れていてよく言うじゃないか」


俺はぽんたをにらんで嫌みをぶつけた。

すると、ぽんたは首を横に振って、つぶらな瞳を輝かせて尻尾を振った。


「オラさは遊んでないだぁ。コロコロ虫よりもこっちのイービルモフのほうが危ないだぁ~。かみつかれると運が悪かったら毒にかかって死んでしまうだ」


ぽんたのいうイービルモフというのはどうやら戯れていたと思われる枯れ草ボールのようだ。

どうやら、遊んでいたように見えてちゃんと仕事をしていたらしい。

枯れ草ボールはぽんたの唾液でくたくたに湿気って、転がれないぐらいになっていた。

なんだか倒され方としては気の毒レベルである。


「あー!うちのコロコロちゃんが!」


ぽんたではない、女性と思われる高い声が響いた。

声の方をみると、そこにはすらり長い手足に燃えるように赤い髪をした見た目美しい女性がこちらを指さして立っていた。

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